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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
6章 ダクリア動乱編
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第274話 サーりんですよ!

 「やあセイヤくん。無事で何よりだよ」


 セイヤの無事を嬉しそうに喜ぶサールナリンはいつもと変わらない様子だ。セイヤが彼女に最後にあったのはダクリア四区を出発する時なので、それ以来の再会である。しかしサールナリンはまるで毎日会っているかのようなフラットな様子だ。


 一方のセイヤはサールナリンの登場に驚きつつも、内心は加勢が増えて安心していた。サールナリンの実力はセイヤもよく知るところで、夜属性習得前とはいえ一度敗北を認めている相手だ。そんな彼女が助けに来たといってくれたのだから心強いに決まっている。


 といっても、なぜサールナリンがここにいるのかセイヤは疑問に思う。


 「どうしてサーりんがこんなところに?」

 「それはもちろん助けに来たからだよ」

 「どういうことだ?」

 「そのままだよ。セイヤくんが連れ去られるのを見つけたから後をつけて来たんだ」


 どうやらサールナリンは噴水広場でセイヤが脱魔王派たちに掴まってた一部始終を見ていたらしいく、あとをつけて来たらしい。その場で助けなかったのはセイヤが無抵抗で連れていかれることから何かしらの考えがあるのだと確信したためだそうだ。


 「いやー驚いたよ。帝国に呼ばれて来たらセイヤくんが連れ去られていくんだもん。しかも相手があの脱魔王派だから一体どういうことか理解するのが大変だったよ」


 確かに来たばかりでそんな光景に遭遇すれば驚くのも無理はない。しかしサールナリンのとっさの機転でセイヤは無事に脱魔王派の拠点を知ることができたので、サールナリンには感謝しかない。


 二人が再会を喜んでいるのをは他から見ていた脱魔王派の男がサールナリンに向かって言う。


 「貴様もその男の仲間か。なら早めの投降をお勧めしよう」

 「んー、それは嫌かな」


 まだ余裕を残している男に対して、サールナリンは笑顔で拒絶する。その態度が気に食わなかったのか、男の額には欠陥が浮き出る。


 「揃いも揃って馬鹿ばかりか。この人数差で何ができるという」

 「それは愚問てやつだよ。君たちと私たちでは戦力としての格が違うから。ね、セイヤくん」

 「ん? まあ、そうだな」


 サールナリンの言うことは本当である。セイヤたちと彼らの間にはどうにもならない差があるのは事実であり、そのことを理解しているサールナリンには十分な余裕がある。しかし彼女はセイヤの真の目的を知らないようなので、セイヤが補足するように説明する。


 「それと中には洗脳された冒険者がいる」

 「洗脳?」


 聞き慣れない単語にサールナリンは首をかしげるが、ダクリアに精神干渉系の魔法は存在しないことを考えればその反応も致し方ない。


 「こいつらの仲間にレイリアの魔法師がいたんだ。そいつが精神干渉系の魔法で」

 「ああ、なるほど。それでセイヤくんはまとめて処理をしないんだ」


 セイヤが本気を出せば一瞬で片が付くとわかっていたサールナリンはなぜセイヤがそうしなかったのかを納得するとともに、セイヤの心意気に感心した。


 「じゃあセイヤくんは洗脳された人は傷つけずに救いたいと」

 「そういうことだ。だがこの人数差を考えると……」

 「うーん、それは大丈夫じゃない? あいつらの中で身なりが悪い集団は前方、向かって右側に集まっているみたいだから他のところはまとめてやっちゃえば」


 言われてみれば洗脳された被害者はその服装や体つきからある程度分かり、彼らのほとんどは一か所にまとまっている。つまり他の場所の魔法師たちは自分の意思で脱魔王制を掲げている魔法師ということである。それなら容赦はいらないだろう。


 「黙って聞いていれば随分と余裕そうだな、おい」

 「舐めるのもいい加減にしろよ餓鬼が!」

 「てめぇもだぞ、女!」

 「その身ぐるみ剥いで泣かすぞ」


 口々にセイヤたちに怒りの言葉をぶつける冒険者たち。そして冒険者たちを率いる男の言葉で戦いの幕は切って落とされた。


 「やれ」


 その言葉と共に空中に展開される無数の魔法陣。圧倒的な数で二人の敵に突っ込んで混戦となるよりは、三千の魔法師たちの魔法で攻撃したほうが相打ちのリスクを回避できる。彼らは踏んで魔法を選択したのだろうが、この二人を前にしての魔法は無意味だった。


 「なっ……」

 「魔法陣が消えた!?」

 「いったいどうやって!」

 「闇属性を使ったのか!?」

 「だがトリガーになるようなものは何もなかったぞ!」


 その場にいた脱魔王派の誰も目の前の光景に言葉を失う。無数に展開された膨大の数の魔法陣が一瞬にして消えたのだから当然といえば当然。だが彼らはレイリアの魔法師とは違い、闇属性の存在を知っているために魔法陣が消えたことに驚いたのではない。その結果を引き起こした闇属性がどちらから発せられたのかもわからないほど、二人に変化がなかったことに言葉を失ったのだ。


 「闇属性を使える魔法師が前に出て奴らの魔法を封じろ!」


 慌てて男が冒険者たちに指示をして闇属性にて規制のある魔法師たちが前に出てくる。そして後方に下がったほかの属性の魔法師たちが再び魔法陣を展開する。


 「無駄ってわからないのかな」

 「まあそんなもんだろ」


 無意味な行為を続ける脱魔王派に呆れた二人が先ほどと同じように闇属性を使ってそれらの魔法陣を消滅させる。その際、脱魔王派の魔法師たちも闇属性を使ってセイヤたちの攻撃を防ごうと試みたのだが、そのあまりの実力差に意味をなさなかった。


 闇属性と闇属性のぶつかり合いにおいて、魔力の質がより高い方が勝利するのはダクリアにおいて常識。ここにきて彼らはやっと自分たちが相手にする存在が普通の存在でないことを確信する。


 「さて、私は左側をやるからセイヤくんは右側をお願い」

 「わかった」


 サールナリンは緑色の魔法陣を展開すると圧縮した空気弾を次々と脱魔王派の冒険者たちに向けて撃ち出す。その魔法を防ごうとした冒険者たちもいたが、サールナリンの空気弾の威力の前に何もできず被弾してしまい、意識を失う。


 一方のセイヤは固まっている洗脳された被害者たちに向かって広範囲の夜属性魔法を行使して一斉にその洗脳の痕跡を消すと、直後に聖属性を使って魔力量を回復させてやる。先ほどまでの光属性ではなく聖属性を使った理由は、彼らが攻撃の際に無理やり魔法を行使させられたことで衰弱してしまったからだ。


 「くそ、なら突進だ!」

 「武器を取れ!」


 二人の攻撃を見て、冒険者たちの中には魔法攻撃をやめて物理攻撃を試みようとする輩も現れる。だが例外なく彼らはセイヤたちのもとに到達する前に、二人の闘気によって意識を刈り取られて地面に倒れこんでしまう。


 「信じられない……」


 目の前の光景に言葉を失うリーダー格の男。どうやらまだ意識がある者たちも同じ感想のようで、目の間で次々と仲間や奴隷が処理されていく光景に言葉を失うしかなかった。


 そしてあっという間に半分ほどの数が減ってしまい、男が上ずった声で尋ねる。


 「お、お前らは一体……」

 「そっか、まだ名乗ってなかったね」


 サールナリンそう言うと、ポケットから自らの冒険者タグを取り出して首にかける。


 「私も冒険者だよ」


 首からかけられたサールナリンの冒険者タグは白く輝いている。その輝きを見た男が信じられないと言った口調で言う。


 「まさかそれは白金の冒険者タグ……」

 「白金って……嘘だろ……」

 「白金タグって伝説じゃないのか……」


 彼らは知ってしまったのだ、サールナリンの正体を。男がサールナリンのことを指さしながらガタガタと震えつつ、その名を口にした。


 「まさか貴様はダクリア四区の魔王サールナリン=レヴィアタンなのか……」


 サールナリン=レヴィアタン。それはダクリア四区を統治する嫉妬の魔王の名前であった。

もしかして次のマモンはサーりんでは?と思わせてからのレヴィアタンだったオチに1人でも驚いてくれたら嬉しいです。


そして次のマモンは誰にしようかなと考える高巻でした。

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