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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
6章 ダクリア動乱編
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第272話 支部長

 支部長の展開した黄色い魔方陣を見て、セイヤは少なからず驚いた。そして同時に黙って連行された甲斐があったと確信した。


 「精神干渉系魔法と言っているが、その実体は特定の光信号を送ることで対象者に幻覚を見せる光属性の上級魔法に分類される魔法」

 「なに!?」


 セイヤの言葉に支部長が驚愕の声を上げた。それは他の男たちも同じようで、セイヤの反応を見て「信じられない」と言う声を発するが、その意味は支部長の魔法が効いてない事実に対しての驚きであって、真の意味で驚いていたのはセイヤと支部長だけだ。


 支部長の行使した魔法はレイリア王国内でも一部の上級魔法師一族しか使うことのできない精神干渉系の魔法であり、その多くが固有魔法として認知されている。まさかレイリアの固有魔法をダクリアで見ることになるとは思ってもみなかったセイヤが驚いたのもまた事実なのだ。


 「まさか脱魔王派の活動にレイリアの人間が関わっていたとはな」


 予想外の真実であったが、冷静に考えればその活動は理にかなっている。レイリアの人間が脱魔王派を援助することでダクリアを混乱の渦に陥れることができれば、その隙を狙ってこちらから仕掛けることだって可能だ。


 しかし暗黒領の先にあるダクリアの存在はレイリア王国内では七賢人たち率いる聖教会によって情報統制されているため、一般の魔法師がその存在を知ることは不可能だ。ダクリアの存在をしるレイリアの魔法師となると十三使徒をはじめとした聖教会の人間、または王国内に十三しかいない特級魔法師のどちらか。


 「保守的な七賢人たちのことを考えれば、そのパトロンは特級魔法師一族のどこかだろう。といっても、その中で精神干渉系の魔法に秀でた一族となれば一つしか存在しないが」

 「くっ……貴様は一体……」


 支部長はセイヤの言葉に何も言い返せなかった。そしてその反応がセイヤの推理が正しいと裏付けるのにに十分すぎた。


 「名乗り遅れたな。俺はキリスナ=セイヤ、つい最近特級魔法師になった新米特級魔法師だ」

 「キリスナ=セイヤだと!?」


 どうやら支部長はセイヤの名前を知っているようだ。といっても特級魔法師一族にとって、新たな特級魔法師の誕生を知らないわけもないので当然といえば当然のことなのだろうが。逆に支部長を除いた他の男たちはセイヤの正体にいまいちピンと来ていない様子。


 「どうやら支部長とやらは正体を隠しているようだな」

 「ふん、いくら特級魔法師と言えど、魔封石をはめられた状態ならただの人間だ。お前ら、こいつの息の根を止めろ! こいつは魔王に仕える悪人だ!」


 支部長に命令され、男たちが一斉に武器を手にしてセイヤに襲い掛かる。例えセイヤが特級魔法師だとしても、魔封石をはめられていれば魔法は使えない。そして魔法が使えない魔法師など、ただの人だ。だから彼らは魔法を使わず、武器でセイヤに襲い掛かった。


 しかし支部長は気づくべきだった。セイヤに対して行使した魔法が効果を発揮しなかったことを。彼はセイヤの正体が特級魔法師だということに驚き、その事実を見逃していたが、彼の魔法はしっかり無効化されていたのだ。


 次の瞬間、セイヤの身を拘束していた諸々の拘束具が一瞬にして消滅する。それは比喩ではなく、本当に元からそこに何もなかったかのように消えたのだ。もちろんブロードが開発した闇属性をも封じる魔封石も


 セイヤに襲い掛かろうとした男たちはその光景を見てから慌てて距離を取った。彼らは本能的にセイヤが魔法を使える状態だと理解し、距離を取ったのだ。魔法師相手に武器のみで近づくのは自殺行為といっても過言ではなく、とっさにその判断ができる辺り彼らもそれなりに経験を積んできてい入るのだろう。


 だが経験値の話をするのならセイヤの方が格段に上だった。


 次の瞬間、男たちの手にしていた武器が一瞬にして跡形もなく姿を消す。もちろんそれがセイヤによる闇属性の攻撃だということをわかっている男たちは迂闊に魔法を行使しようとはしない。


 闇属性を使う魔法師相手に魔法を使う際は二つの条件のいずれかを満たす必要があった。一つは相手の闇属性に対して自らの闇属性をぶつけて相殺する方法。もう一つは魔力の質で相手の闇属性を上回ることで魔法を行使する方法。どちらかの条件を満たさない限り、闇属性相手に魔法を行使しても意味はなかった。


 そして闇属性を使うことのできない男たちが取れる手段は後者の方法なのだが、彼らはすでに自らの魔力の質がセイヤよりも劣ると確信している。それはセイヤが魔封石をはめられているにも関わらず魔法を行使できたから、と男たちは判断した。


 彼らは対闇属性の魔封石の機能のすべてを知らない。だからその限界を魔力が上回れば魔法は行使されるのだろうと考えていた。


 けれども彼らの予想に反し、ブロードの遺作を発展させたその魔封石に限界はなかった。その魔封石は闇属性を含む五つの基本属性とそれらから派生するすべての属性を封じることができる代物なのだ。だからいくらセイヤでも魔力をぶつけることで破壊することは不可能だった。


 ではどうしたいかというと、もちろん夜属性を使ったのだ。セイヤは夜属性を使うことで「魔封石の魔力の錬成を妨げる」という原則を消失させることで、ただの石の手錠にしたのだ。その上で闇属性を使って、あたかも闇属性で魔封石を消滅させたのである。


 しかしそんなことを知らない男たちにとってみれば、セイヤが闇属性で魔封石を消滅させたと考えてしまうだろう。同時に彼らはセイヤとの実力差を理解してしまったのだ。


 「お、お前は一体何者なんだ!?」

 「Dランク冒険者じゃないのか!?」

 「ふ、ふざけるな」

 「どうしてお前みたいなのがDランクなんだ」

 「あ、ありえない」


 口々にセイヤの存在を否定する男たちだが、次の瞬間には意識を失って倒れこんでしまう。それはもちろんセイヤの殺気を込めた威圧感によって気絶したのだ。例によって彼らのような低ランク冒険者を相手にするのに闘気を使うまでもない。


 そして残された支部長は足をガタガタ震えさせながら倒れこむ。


 「き、貴様は一体……」

 「言っただろ、特級魔法師だ」

 「ふ、ふざけるな! どうしてレイリアの魔法師が闇属性を使える!」


 どうやら支部長の耳に届いているのはセイヤが特級魔法師になったという事実だけで、そこに付随する諸々の事情は伝わっていないのだろう。だがセイヤに事情を説明する義理もないので、端的に用件を伝える。


 「俺はお前たちのような弱者を虐げる存在を許さない」

 「殺すつもりか? 俺の一族が黙っていないぞ」

 「もしお前の一族が敵対するなら、俺は戦おう」

 「狂ってやがる」


 慈悲なきセイヤを前にして冷静になってしまった支部長。彼は自分がレイリアにある特級魔法師一族の人間だから安全だと思ってきた。しかしセイヤを前にして、そんなのは幻想だと理解する。


 目の前にいるのは悪魔だ、魔王だ、もしかしたら真の意味での大魔王なのかもしれない。支部長の意識はそんなことを考えながら闇に落ちた。


 「さて、もう一仕事するか」


 セイヤはそう言い残すと、部屋の外に出るのだった。

そういえば最近ロナを見ていない気がします。なので次は違う女性キャラを出したいと思います。

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