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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
1章 出会いと新たな人生
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第29話 雷神

 特急魔法師————現在レイリア王国内に十二人しか存在しない魔法師のことを指し、その実力は聖教会最強部隊の十三使徒と同等か、それ以上の力を持つ。


 十二人の特級魔法師はレイリア王国の貴重な戦力であるとともに、聖教会が暴走した際に止めるという役割も担っている。


 そして、現在セイヤの目の前にいるのが、特級魔法師の一人ライガー=アルーニャ、旧姓ライガー=スリラグ。


 かつてアクエリスタン特殊部隊所属の少将であり、雷神ライガーとしてその名を轟かせた魔法師だ。その名声はレイリア王国全土に広がっており、セイヤもライガーのことは知っている。


 セイヤは二重の意味で驚く。まずはユアが特級魔法師一族の、それも特級魔法師の娘だとは微塵も思っていなかったから。


 さらに、まさか特級魔法師の娘が油断していて非魔法師に捕まることなど、誰が考えられるだろうか。


 カナが自己紹介を終えると、ライガーがあまりの衝撃で思考が止まっているセイヤのことを見ながら言う。


 「俺は今からこいつと話したいことがある。悪いがメレナ以外は外してくれ」

 「わかったわ、あなた」

 「わかった……リリィ行こ……」

 「うん!」

 

 そう言い、カナたちはセイヤたち三人を残して部屋から退出した。


 カナたちが部屋から退出するのを確認したライガーはセイヤを見ながら口を開く。


 「お前がキリスナ=セイヤか?」

 「はい、そうです」


 ライガーが特級魔法師である以上、セイヤよりは立場は上である。


 ウィンディスタン地方に暮らしていた時の癖でついつい敬語を使ってしまうセイヤ。そんなセイヤの様子を見たライガーが「聞いてる話と違うぞ?」と言いたげなまなざしでセイヤのことを見ていた。


 「堅苦しい態度はやめろ。俺はお前の本質を見たい」

 「わかった。しかし特級魔法師を前にして、普通にしろ、っていうのは無理な話だと思うが?」


 ライガーにそういわれ、何とかいつもの口調へと戻るセイヤだったが、ライガーが纏っている雰囲気が強大すぎて、完全に緊張を解くことができない。


 「ふっ、それでいいんだよ。まずは今回うちの娘を助けてもらったことに感謝する」

 「成り行きでそうなっただけだ」


 ライガーはどこか過去を懐かしむように語り始める。


 「それでもだ。あいつは昔、姉のように信用していた付き人に裏切られて、人質にされたことがあってな、それ以来人を信用できなくなってしまったんだ。

  だが今回のことを通してお前のことを信用しているようだから、親としてはうれしい限りだ。だからこそお前に礼を言いたい」

 「そうだったのか」


 この時、セイヤの疑問が一つ、解消された。


 ダリス大峡谷でユアの言っていた「セイヤも裏切った」の「も」は、このことだったのかと。同時にユアがなぜダリス大峡谷を通ることを選択したかもわかった気がした。


 「ところでお前の横にいた青髪の少女。あれは妖精の類だろ?」

 「あぁ、ウンディーネだ」


 リリィがウンディーネだということを知られていても、別段おかしくはない。


 ライガーは特級魔法師であるため、おそらくセイヤの何倍も修羅場を通ってきている。そのなかで精霊や妖精と対峙したことがあれば、リリィが妖精だとわかることは容易だ。


 「完全契約したのか?」

 「一応な。それにしても流石だな、一瞬見ただけでわかるとは」

 「これでも特級魔法師だぜ。一瞬見たと言ったらお前もカナのことを見てたな。おおかたカナが聖教会の女神じゃないのかと思ったんだろ?」

 「まあな」


 確かに一瞬だがセイヤはカナのことを見た。


 理由はもちろんユアの母親であり、もしかしたらかつての聖教会の女神かもしれないからだ。


 セイヤは聖教会の女神の容姿などを知らないため、結局カナが聖教会の女神かはわからなかったが、ほんの一瞬見ただけだというのに、それに気づくライガーに驚いた。


 「残念ながらカナは女神じゃねーよ。女神に会ったことがある俺が言うんだ。本当だぜ」

 「そうか。だが、やっぱり聖教会と繋がっていたのか。道理で闇属性魔法を知っているわけだ」


 ライガーが特級魔法師であることがわかったため、ユアが闇属性の存在を知っていてもおかしくはない。


 そしてユアの母親であるカナが聖教会の女神ではないということも、事実だろうとセイヤは確信する。


 「今は繋がってないから安心しろ。それにお前を教会に突き出すこともない」

 「それを聞いて安心した」


 特級魔法師はレイリア王国の貴重な戦力であるが、聖教会の傘下にいるわけではない。


 だからライガーがセイヤを聖教会に報告する義務もなければ、義理もない。そのことを聞き、セイヤは心の底から安心する。しかしその安心は束の間であった。


 「ところでユアとはどこまで行った?」

 「ぶほぉーーーー」


 ライガーの質問にセイヤは飲んでいた紅茶を吹き出してしまう。


 「どこまでって?」

 「だからユアとはどこまでしたんだということだ」


 この特級魔法師はいきなり何を聞いているんだ、と思うと同時に、セイヤの中で思い出されるダリス大峡谷でのユアとのキス。

 

 「えっと、キスまでだ」

 「そうか……帰ってきたユアが女らしくなっているわけだ」


 そこでライガーの纏うオーラが一瞬で豹変した。


 ドンッ、という音とともにセイヤにのしかかるライガーのオーラ。その圧力から、ライガーがどれほどの実力者かということが分かる。


 「ちっ」

 「ほう」


 ライガーに対抗するように、セイヤも自身が纏う雰囲気を豹変させ、自分にのしかかる圧力を振り払う。


 そんなセイヤの様子を見たライガーが、楽しそうな表情を浮かべた。そして次の瞬間、セイヤに向かっていきなり魔法を行使する。


 「『避雷針』」


 突然展開された緑色の魔法陣、その魔方陣の向く先にはセイヤの姿があった。


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