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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
6章 ダクリア動乱編
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【番外編】 ダルタのプレゼント

ふざけすぎました......

 「う、う~ん」


 窓につけたカーテンの隙間から入ってきた光が顔にあたり、私は目を覚ました。布団から出ている顔には冷たい冷気がぶつかり、冬の訪れを体でヒシヒシと感じる。


 「ふぁ~」


 私は大きく体を伸ばすと、そっとベッドから体を出した。その際、ベッドの下に漂っていた冷気が私の身を凍えさせるが、そんな冷却もスリッパを履けばどうってことない。今日はクリスマスイブから一夜明けたクリスマス。窓の外からは子供たちの元気な声が聞こえてきた。


 「わぁ!」


 カーテンを開けると私の視界に飛び込んできたのは一面に広がる銀世界。それは昨日までの景色とはかけ離れた、まるで突然異世界に飛び込んでしまったかのような感覚だが、私の心はワクワクしていた。やはりいくつになっても雪が降るとテンションが上がってしまうものだ。


 それに枕元に置いてあるプレゼントを見つけると、よりいっそうテンションが上がっ……あれ、今、何時だろ? というか、ここどこ?


 あれ、えっと、え!? 


 私は困惑した。それはきっとみんなもだろう。だって私は昨日までダクリアにいて、それでセイヤへのクリスマスプレゼントを買って深夜に枕元に届けるはずだったのに。


 いったん落ち着こう。まずは状況整理だ。私は冷静になって考えた。だが答えは出なかった。


 「これっていったいどういうことぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


 百歩譲って私が寝坊して夜が明けてしまったことは理解できる。本当は理解してはいけないのだろうが、私が寝坊することは可能性としてはあるだろう。だが問題はそれじゃない。寝坊より重大なことは今私がいるのは聖教会時代に使っていた部屋だということ。


 ここは私がセイヤの使用人となると同時にほかの職員の部屋になったはず。でも部屋は私がいた頃のままで、他の人が使った形跡はない。


 もしかしたらロナさんの世界を使ってレイリアに戻ってきたのかもしれないが、それは本編であって番外編ではダクリアの街にいたはずだ。いや、もしかしたら番外編だからあの街はダクリアではないかもしれない。


 「困ったなぁ」


 もし番外編から本編に戻ったなら今は六章じゃなくて七章だ。おそらく今頃は七賢人様たちが大慌てで会議しているだろう。


 しかしそんなことはあり得るのだろうか。いくら六章の書くネタが無いからといってこんな強引なやり方で七章までもっていくだろうか? 確かに一年半近く更新をサボった上に六章のプロットは「セイヤが魔王たちと対面して終わる!」という雑なものだったが、それを言うなら七章なんて「七賢人たちが驚く!」しか決まっていない。


 それにとりあえずノアというラスボスみたいな名前を出したものの、実はいまだにノアでいいのかと迷ったり、はたまた「あの方」という強そうなキャラを出しつつも、名前さえ決まっていないあやふやな設定で先に進むだろうか。いや、普通なら六章で時間を稼いで後の設定を固めるはず。


 なら、やはりこの番外編は六章のまま。そしてこの番外編は六章における時間稼ぎ用の話だ。


 「そうと決まれば、まずはプレゼントを開けるしかない」


 私はそう覚悟しつつ、枕元に置いてあったプレゼントに手を伸ばします。それは私がセイヤに用意していたプレゼントとは違うもので、おそらく私宛のものです。でも誰が私にくれたんだろう。ここ数年プレゼントなんてなかったのに。


 そんなことを考えながらプレゼントを開けると、中に入っていたのは意外なものでした。


 「わぁ、かわいい」


 袋の中に入っていたものは可愛いトナカイの群れが描かれたマフラーと雪ダルマが描かれた手袋。どちらも手編みのようで、とっても温かそうです。


 「あれ、まだ何か入っている」


 プレゼントの他に一枚のカードが入っています。そこに掛かれていたメッセージは




 「これからもよろしくな。聖夜のサンタより」




 私はすぐにそのプレゼントがセイヤからのものだと確信します。そして同時に心の中が温かくなるのを感じました。こんな感覚になるのはいつ以来だろう。プレゼントを貰うってこんなにも嬉しいとは思いませんでした。


 「えへへ」


 さっそく貰ったマフラーと手袋を身につけると、私はとても幸せな気持ちになりました。ありがとう、セイヤ。私はそのマフラーと手袋を見てニヤニヤが止まりません。もし他の人に見られたら気持ちがられるでしょうが、そんなことはどうでもいいです。


 「こんなにうれしいなら、セイヤにもプレゼント渡さなきゃ!」


 私は意を決してセイヤのために用意していたプレゼントを探すと、それはすぐに見つかりました。机の上にあったそのプレゼントを手にすると、私は心の中で呼びかけます。これがまだ六章なら六章のメインヒロインが助けてくれるはずです。


 (ロナさん)


 私の呼びかけは案外簡単に届きました。部屋の真ん中に突然ひずみが生まれると、そこに木製の扉が現れ、ゆっくりと開いていく。中にいるのはもちろんロナさんだ。


 「ロナさん!」

 「どうしたのじゃ?」

 「あの、これって」


 私はまずどうしてこうなったのかをロナさんに尋ねました。おそらくロナさんは六章のメインヒロインだから事情を知っているはずです。


 「ああ、これは番外編じゃ。それも六章の」

 「やっぱり。ならこれはセイヤの?」

 「そうじゃ。セイヤの『イブ・マジック』じゃ」

 「『イブ・マジック』?」


 聞き覚えのない魔法に私は首をかしげましたが、すぐにロナさんが説明してくれました。


 「それはセイヤが五章番外編で使った魔法じゃ。効果は既存のヒロインにクリスマスプレゼントを届けるという魔法。一章で名前だけ登場していたものの、本格的な登場前だった故に妾には影響しなかったようじゃ」


 なるほど、つまりこれは二年前のクリスマスの番外編と繋がってしまったようです。なら今頃セイヤは家で朝チュンを迎えているはず。愛してくれるなら浮気はオッケーな私でも流石に朝チュン現場に突撃はできません。


 でもこのままプレゼントを渡さないという選択肢はないので、ロナさんに頼み込みます。


 「ロナさん、これをセイヤの枕元に置くことって出来ますか?」

 「それは可能じゃが、妾が置いてきていいのか?」

 「はい。多分今頃セイヤは朝チュンなので、私が邪魔をするわけにはいきません」

 「お主、それは負けヒロインの言葉ではないのか?」

 「いえ、私は何番目でもいいので」

 「お主は強いのう」


 私はプレゼントを託したロナさんがセイヤの下に向かうのを見送ると、着ていたパジャマを脱いでいつものメイド服に着替えます。それは私の仕事着であるとともに、尽くす相手を誇示する証です。今はまだ四章以前のヒロインたちと会うことはできませんが、この先会えるようになったら仲良くしたいです。


 だから今日のところは我慢します。ロナさんをぱしってしまったのは申し訳ないので、今度お礼とロナさん宛のちょっと遅いクリスマスプレゼントを準備したいと思います。


 さて、私は七章に備えてもう少し寝ようかな。多分来年まで出番ないですし、いくら六章が二十話程度で終わるかもしれないといっても、すぐには出番は来ないでしょう。


 これが今年最後の出番。


 だからつい、イタズラをしちゃいました。セイヤのプレゼントにカードをつけました。そこには「あなたの愛するダルタより」と書いてあります。これで来年分のクリスマス番外編に繋げられそうです。来年が更新があるのなら……


 さて、番外編も終わってそろそろ本編に戻りましょう。






 こうして私のクリスマスは幕を閉じるのでした。

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