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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
1章 出会いと新たな人生
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第28話 ユアの家

 「まじかよ……」

 「大きい! すごい!」


 そんな声を上げるのは、セイヤとリリィ。


 二人の目の前に建っていたものは、控えめに言って城だった。


 セイヤはあまりの大きさに唖然とし、リリィは初めて見る建物に目を輝かせる。


 城の大きさは、見えている範囲で、軽くサッカー場が十個ぐらいはあると思われる。


 そしてユアが、その城に何のためらいもなく入っていく。


 ユアに続き、セイヤとリリィもその城の門を潜り抜け、城の敷地内へと入っていく。


 門を潜り抜けると、そこにあったのはお花畑だった。色とりどりの花が咲いており、よく手入れされていることが分かる。


 そんな中、花壇にいた使用人らしき人たちが、門を潜り抜けたユアたちに気づき、一斉にユアの方に向かって駆けだしてきた。


 「お嬢様!」

 「お嬢様!」

 「お嬢様! おかえりなさいませ」

 「よくぞご無事で!」


 一斉に駆け寄ってきた使用人らしき人たちは軽く十人を超えている。使用人たちの表情から、ユアがどれほど愛されているのかがわかった。


 そしてそのなかの一人の若い使用人が、ユアの前に現れるとユアに向かって言う。


 「お嬢様、よくぞ御無事で。旦那様が心配しておられます。どうぞ旦那様のところへ」

 「わかった……」


 ユアがそのまま城の中へと向かおうとするが、その前に使用人の一人がセイヤたちのことを見て、ユアに聞く。


 「ところでお嬢様、そちらの方々は?」

 「二人は仲間……」

 「なるほど、でしたら客間にお連れします」

 「うん……」


 その後、ユアは他の使用人たちに連れられて、父親のもとに向かい、セイヤたちはきれいな緑の髪をした若い使用人らしき女性に連れられて客間へと向かった。


 客間に案内されたセイヤたちは、ここで待つようにと言われ、緑の髪の使用人は部屋の外へと出ていく。


 セイヤとリリィはソファに座りながら、テーブルの上に置かれていたお菓子をつまみ始めた。


 「すごい!」


 どうやらお菓子が初めてだったリリィ。ものすごい勢いでお菓子を平らげてしまい、あっという間にお菓子がなくなってしまう。


 結局セイヤが食べることができたお菓子は、小さなチョコレート一つだけだ。


 少しすると、先ほどの緑の髪使用人が再び客間へと入ってくる。


 彼女の手にはお盆が握られており、その上においしそうな香りを放つ紅茶と、おいしそうなオレンジジュースが置いてあった。


 使用人は飲み物を二人の前に置くと、自己紹介を始める。


 「申し遅れました。私の名前はメレナ。何か困ったことがありましたら何なりとお申し付け下さい」

 「これが欲しい!」


 そう言って、リリィは先ほどまでお菓子が入っていた器を持ち上げる。


 即答するリリィに、セイヤは苦笑いしながら、目の前に置かれた紅茶を飲む。


 ほんのり香る甘さと体にしみる温かさ、そのおいしさにセイヤは涙が出そうになった。


 「この紅茶、おいしいですね」

 「ありがとうございます。それと私には敬語を使わなくて結構ですよ」


 ちょうど客間の棚からリリィのためにお菓子を取り出していたメレナに、セイヤは紅茶の感想を言うと、メレナはどこか無関心な感じでそういった。


 セイヤは改めてメレナのことを見る。きれいな緑色をした髪に表情こそ乏しいが美しい顔。年はセイヤよりも少し上のような感じがする。


 そして何より目立っているのは、首に巻かれた黒い首輪だ。


 その首輪はおそらく彼女が売られたということだろう。しかし他人の事情に踏み込むことはタブーなため、セイヤは他の会話をする。


 「そうか。なら俺も敬語はやめてくれ。年上に敬語を使われるのは慣れないからな」

 「そういうわけには……わかりました。いえ、わかったよ」

 「ありがとな。それで俺らはいつ解放されるんだ?」


 セイヤが纏わせる雰囲気を一瞬だけ変化させると、メレナもまた、纏う雰囲気を一瞬だけ変えて答える。


 セイヤはその一瞬で、メレナが相当の実力を持つ魔法師だと理解した。


 「今お嬢様が旦那様たちとお話をしているので、それが終わるのをまってほしい」

 「わかった」


 その後、二人が客間で待っていると、客間のドアが開きユアが入ってきた。


 その後ろには深緑の髪をオールバックにした筋肉質の大男と、きれいな銀髪をした赤眼の優しそうな女性も一緒だ。


 どうやら二人がユアの両親らしい。


 セイヤは一瞬だけユアの母親を見たが、すぐに父親に視線を戻す。


 ユアの父親も一瞬、リリィを見たが、すぐにセイヤのほうへと視線を戻す。


 そして視線をセイヤに戻したユアの父親が、セイヤとリリィに向かって、挨拶を始める。


 「俺はユアの父親、ライガー=アルーニャだ。今回はうちの娘を助けてもらって感謝する。キリスナ=セイヤ、リリィ」

 「!?」


 ライガーと名乗るユアに父親に続き、ユアの母親が、私は母親のカナ……と自己紹介を始めたが、セイヤの頭には入ってこなかった。


 なぜなら、ユアの父親が誰でも知る超有名人であり、その名前はセイヤでも知っていたから。


 そしてその名前の衝撃があまりにも大きすぎたから。


 ライガー=アルーニャ、その男こそ、レイリア王国に十二人しかいない、特級魔法師の一人だった。


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