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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
5章 大魔王襲名編
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第236話 ダリスとキレル

 キレル山脈、それはダクリア国内でもほとんどの人が知らない場所だ。しかしその大きさはとても大きく、そしてひどく険しい。


 セイヤたち一行は飛行船を後にすると、荷物をもってキレル山脈の探索を始めた。


 「さて、ここからはかなり厳しくなるぞ」

 「具体的にどれくらいですか?」


 アーサーの言葉にダルタが不安そうな表情を浮かべる。このメンバーの中で圧倒的に実力の劣っているダルタは少しでも足を引っ張らないようにと考えているため不安に思ってしまうのも仕方がないだろう。


 「まあレイリアで言うならダリス大峡谷くらいかな」

 「ダリス大峡谷!?」


 予想外の名前に驚くダルタ。しかし事実、このキレル山脈に住む魔獣たちはダリス大峡谷の魔獣たちと同じレベルの力を持っている。


 ダリス大峡谷とはアクエリスタンとフレスタンの境界線の延長線上にあり、レイリアで知らぬ者はいないほどの場所であり、そこは強力な魔獣たちの住処だ。


 聖教会に勤めていたダルタはダリス大峡谷の恐ろしさをよく知っている。


 だから自然とその表情がどんどんと険しくなっていくと同時に、緊張した面持ちになっていく。


 「ち、ちなみにダリス大峡谷ってあのダリス大峡谷ですよね?」

 「そうだ。あのダリス大峡谷だ」

 「ひ、ひぇぇぇぇぇ」


 思わず悲鳴を上げてしまうダルタ。


 そんなダルタに対し、セイヤが落ち着けとばかりに言った。


 「別にダリス大峡谷だって恐ろしくないぞ」


 思い出すのはユアと共に戦ったあの日の日々。あの時はまだウンディーネとは敵同士であり、文字通りの死闘を繰り広げた。


 当時は辛い戦いばかりだったが、今思い返せばそれもいい思い出である。といっても、あれからまだ半年もたっていないが。


 セイヤの言葉に、ダルタは目を点にする。そしてしばらく間を置いた後、震えた声でセイヤに尋ねた。


 「も、ももも、もしかして、セイヤはダリス大峡谷に行ったことあるの!?」

 「あれ、言ってなかったか?」

 「聞いてないよ!」


 セイヤのカミングアウトに驚くダルタ。その表情からは本当に驚いていることが分かる。


 「ほう、帝王はダリス大峡谷に行ったことがあるのか」

 「それは都合がいいですね」


 そこでアーサーとギラネルが含みを持った表情で話に加わる。


 「どういう意味だ?」


 二人の意図することが分からないセイヤは逆に二人に尋ねた。


 「いや、これから行くところもダリス大峡谷と似たような場所だからな」

 「事前に経験されているのであれば、攻略も楽になりましょう」


 という二人だが、やはりセイヤにはよく理解できない。そこでセイヤはさらに詳しく聞こうとした。


 「それって……」

 「それでウンディーネとは会ったのか?」


 しかしセイヤが聞く前にアーサーが尋ねた。仕方がないのでセイヤは先にアーサーと質問に答える。


 「ああ、会ったぞ」

 「それはよかった」

 「というより、契約した。それも完全の」

 「へぇ、契約か………………はっ、契約!?」


 セイヤの言葉に驚きを隠せないアーサー。どうやら聖騎士アーサーでも精霊や妖精の類と完全契約したことに驚きを隠せないようだ。


 だがアーサーが驚くのも無理はないだろう。なにせ精霊と完全契約して生きている魔法師の前例などない上に、ダクリアを統治する大魔王でさえ開いた口が塞がらないのだから。


 「帝王、それは本当か?」

 「あ、ああ」

 「本当にダリス大峡谷のウンディーネと契約したんだな?」


 何度も確認するアーサーに戸惑いながらも頷くセイヤ。


 「なるほど。これは思ったよりことが早く進むかもな」

 「そうだな。セイヤ様がすでにウンディーネと契約しているなら話は早い」

 「それにウンディーネと契約がある分、今回はかなり楽になるぞ」

 「だな。しかもダリス大峡谷となると……」

 「ああ」


 アーサーが再びセイヤの方を向くと、真剣な表情で聞いた。


 「ダリス大峡谷には誰と行った?」

 「はっ?」

 「だから誰と一緒に行ったと聞いているんだ」

 「えっと、ユアだが……」

 「ユア?」


 ユアと言われて「誰だ?」と言いたげなアーサー。だがアーサーがユアを知らないのも当然であるため、セイヤは説明を付け足す。ちなみにセイヤの後ろでムスッとした顔のダルタはおいておく。


 「ユアっていうのはライガーの、雷神ライガー=アルーニャの娘だ」

 「ライガーの?」

 「ということは……」

 「ふん、面白くなってきた」

 「これは運命のいたずらか?」

 「さあな。だが、勝利の女神は今のところこちらに微笑んでいるようだ」


 勝手に話を進める二人。


 セイヤとダルタは二人の会話から置いてけぼりだ。だが決してその内容を聞こうとはしなかった。というよりも、なぜか聞いてはいけない雰囲気になっていたのだ。


 四人はその後、近場の魔獣たちを殲滅していきながら、キレル山脈を進んでいくのであった。

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