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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
5章 大魔王襲名編
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第231話 じっとしてるはずがない

 セイヤの知らせを受けたセレナたち一行はアルーニャ家に到着した。そして中に入ると、ユアとリリィの下へ向かう。


 「ユアさん!」


 部屋の扉を開け、中に飛び込むセレナ。その行動は非常識だと責められるかもしれないが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。それにユアたちもそのようなことをいちいち気にするような人間ではない。


 セレナの後に続き、アイシィとモーナも部屋へと入る。


 部屋の中ではユア一人が待ち構えていた。


 「ユア先輩!」

 「ユアさん」


 彼女たちの目からセイヤのことが心配だと言いたいことはすぐにわかる。だからユアは三人を座らせるとすぐに本題へと入った。


 「セイヤのことでしょ……」

 「うん。セイヤは無事なの?」


 彼女たちはセイヤが今どこで何をしているのか、それが知りたかった。だが残念なことにそれはユアも知らないのであった。


 「私にもわからない……」

 「そう……」


 ユアの答えに表情が曇る三人。


 「でも……」

 「「「でも?」」」

 「生きてはいる……」

 「それは間違いないの?」

 「うん……リリィの契約が続いてるから……」


 セイヤの居場所こそわからなかったが、念話を試みることができることから生存していることは確かだ。だが一重に生存と言っても完全な自由とは限らない。大けがを負っているかもしれない。もしかしら拘束されて身動きが取れないのかもしれない。


 いくら生きているからと言って、安心できるわけではない。それでも生きていることが分かっただけで三人の心は落ち着く。


 「そういえばリリィは?」


 そこでアイシィがリリィの不在に気づく。いつもこの屋敷にいるか外でナーリと遊んでいるリリィ。でもナーリは今頃フェニックス家にいるはずだ。


 「リリィは今調査に行っている……」

 「調査?」

 「そう……」


 調査と言われて首をかしげる三人。ユアの言葉では説明不足だった。


 「調査とは一体?」


 モーナに聞かれ、ユアは詳しい話を始めた。


 「この家にセイヤの知らせが来たのは三日前……」

 「三日前!?」


 なぜ早く教えてくれなかったのだという顔をする三人だが、何か事情があったのだろうと察して落ち着く。


 「そしてすぐにお父さんに連絡を試みた……」

 「それで結果は?」

 「繋がらなかった……」

 「リリィの念話もですか?」

 「そう……」


 ユアの表情を見て、やはり異常事態だと改めて認識する。


 「ところでユアさん、セイヤくんが暗黒領に派遣されたことは?」

 「知ってる……」

 「では具体的のどこへ派遣されたかは?」

 「わからない……」

 「そうですか」


 どうやらユアも自分たちと同じ程度しか知らないと三人は察した。


 「では聖教会の狙いについてはどう考えますか?」

 「確証はないけどセイヤの暗殺……」

 「やはりそうですか」

 「というと……?」

 「はい、私たち三人も同じように考えています」


 三人の顔を見てユアは納得した。彼女たちがこれから何をしたいかを。


 「セイヤを助けに行く……?」

 「もちろん」

 「それが私たちの意思です」

 「はい。先輩にはお世話になっていますから」


 三人の覚悟を見たユアはあるものを持ってくる。


 「これは……」

 「レイリアの……」

 「地図?」


 いきなりレイリアの地図を持ってきたユアに首をかしげる三人。だがユアは気にせず説明に移った。


 「今リリィはここに向かってる……」

 「ここは……」

 「暗黒領?」


 ユアが指さした場所はアクエリスタン近くの暗黒領。だがそこには何も書いておらず、セレナとアイシィは理解していない。しかし二人と対照的にモーナは理解していた。


 「ここはあの場所ですね」

 「そう……」

 「あの場所って?」

 「モーナ先輩?」


 モーナに説明を求める二人。モーナはうなずくと説明を始めた。


 「ダクリア二区に行ったとき、二人は別行動だったから知らないでしょうけど、ここには魔力を流し込んで走る魔動四輪車が置いてあるの。他にもダクリア二区から持ってきた戦利品が」

 「でもなんでそこに?」

 「それはセイヤの痕跡を辿るため……」


 ユアの言葉に首をかしげる二人。仕方がないのでモーナが説明を続ける。


 「おそらくユアさんはセイヤくんが本当にダクリアに派遣されたならここから何かしらの道具を持って行ったと考えているのでは?」

 「そう……」

 「そっか! ここから荷物が無くなっていればセイヤは生きている」

 「そしてダクリアに行ったことにもなる」


 二人が気付いた通り、セイヤが本当にダクリアに派遣されているなら必ずこの場所から何かしらの荷物を持っていくとユアは踏んでいた。逆に変わっていなかったらセイヤは拘束されているか、レイリア内にいるはずだ。


 だからユアはリリィ確認を頼んだのだ。


 「それとお父さんの目撃情報がフレスタンで確認された……」

 「フレスタンで!?」

 「行き先は?」

 「まだわからない……」

 「そうですか」


 行き先が分からないにしても目撃情報が得られたのは大きい。これでライガーの追えばセイヤのことが分かるかもしれないから。


 「なら今すぐフレスタンに」

 「大丈夫……もう手は打った……」


 すぐにフレスタンに向かおうとしたセレナを止めるユア。そして珍しく笑みを浮かべて言う。


 「今は待つとき……」

 「待つ? この事態にですか?」

 「そう……」


 どこか自信ありげなユア。そんなユアを見て三人は何か策があるのだろうと察する。


 「具体的にどれくらい?」

 「二日……」

 「二日も!?」

 「二日後に、何かが分かると?」

 「そう……」


 二日もじっとしてられるか、と言いたげなセレナにと対照的に、モーナは冷静にユアの話を聞く。モーナにはわかっていた。ユアも本当はすぐに助けに行きたいのを我慢して待っていることを。


 「わかりました。それで二日間私たちは何をすれば?」

 「待ってればいい……でも……」

 「でも?」

 「ダクリアに行く準備は必要かも……」


 その言葉を聞いた瞬間、三人の顔には笑みが浮かぶ。


 「わかったわ」

 「リベンジの時ですね」

 「わかりました」


 こうして三人はアルーニャ家を後にした。そして再びダクリアに乗り込む準備に奔走するのであった。

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