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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
5章 大魔王襲名編
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第224話 大魔王の館(中)

 ついにダクリア帝国の中心、大魔王の館に足を踏み入れたセイヤたち一行は、次々と湧いてくる敵たちをアーサーの闘気で対処しながら進んでいた。


 「駄目だ! 防御魔法は効かない」

 「なんだこれは!」


 相手は何もしていないというのに次々と意識を失ったかのように倒れこむ仲間たち。ならばと防御魔法を展開するが、それもむなしくまた次々と意識を失ったかのように倒れこんでいく。そして次は自分ではないのかという恐怖が身を包む。


 そしてアーサーに対する恐怖が身を包んだ瞬間が終わりの時だ。


 こうして、アーサーの闘気だけでセイヤたちは魔王の館の三階まで攻略することに成功した。


 「どうだ帝王、闘気ってのもなかなかだろ?」

 「ああ。まさかこんな手があったとはな」

 「すごい……」


 アーサーの圧倒的な力に驚く二人。


 「別に珍しくはないさ。闘気は誰にでも使えて、同時に誰にも使えない技だ。一度闘気の存在を知り、使い方を覚えれば誰にでも使える。しかしなかなか闘気を知る機会がない。ほとんどの人が闘気を威圧だと考え、使おうとしないからな」


 アーサーの言う通り、闘気は誰にでも使える技だ。けれどもその存在を知らないがゆえに、なかなか習得が難しい。


 「これが使えるようになれば、魔法師としての景色が変わるぞ」

 「確かに魔法をもすり抜ける技があればかなり戦いやすくなると思うが……」


 セイヤがそう言いかけた時だった。不意にアーサーが眉をしかめる。


 だがその理由はセイヤたちにもすぐに理解できた。


 「どうやら相手も本気を出してきたようだな」


 ちょうど姿を現した男を見て、セイヤはそう口にした。セイヤたちの前に姿を現したのは、先ほどまでとは明らかに実力が違うであろう魔法師たちの集団。


 身にまとう雰囲気が、先ほどまでとは格段に違っている。おそらく敵の中でも隊長クラスであろう。


 「みたいだな。さっきまでの闘気じゃ通じない」


 アーサーの言う通り、セイヤたちの目の前にいる敵にアーサーの闘気は通じていなかった。おそらく彼らも自身の実力にかなりの自信があるようで、アーサーのことを本能的に格上とは思っていないのだろう。


 闘気が使えないとなれば、いよいよ魔法に出番だ。セイヤはそう考え、魔法行使の準備に入る。だが魔法を行使しようとしたセイヤに対し、アーサーが待ったをかける。


 「大丈夫だ帝王」

 「何を言っている? 闘気が通じないなら魔法で……」

 「私も手伝い……」


 セイヤとダルタの言葉を待たずに、アーサーが答える。


 「言っただろ、手出しは無用だと。それにこれはお前へのレクチャーだと」

 「どういうことだ?」


 どうやらセイヤはアーサーの言いたいことを理解していないようだ。仕方がないので、アーサーは聖剣を片手に説明を始めた。


 「闘気っていうのは威圧と同じだと言ったはずだ」

 「ああ、だが威圧できない実力差なら闘気は使えない」

 「その通りだ。けれども、威圧ができる実力差にすれば?」

 「まさか!?」

 「そのまさかだ」


 セイヤが驚きの声を上げた直後、アーサーは右手に握る聖剣に初めて魔力を流し込む。


 敵はアーサーの握る錆びれた聖剣を見て、あざ笑うかのような目を見せる。確かに今の聖剣は錆びれていて、剣としての役目を果たさないだろう。使うのであれば、鈍器としての方が正しい。


 そんなこともあって、彼らはアーサーのことを見下していた。


 だから次の瞬間に起きた光景を見て、彼ら驚愕する。


 アーサーが聖剣に魔力を流しむと、錆びれて茶色くなった刀身に白い文字が浮かび始める。そして白い文字が輝き始めた刹那、刀身の錆が一気に消滅し、聖剣が真の姿を現す。


 「これは……」

 「驚いたか? これが聖剣の真の姿だ」


 セイヤは聖剣が真の姿を現したことにも驚いたが、それ以上に聖剣の刀身に現れた白い文字に驚く。セイヤはあの白い文字に覚えがある。それはいまだに詳しいことはセイヤ自身にもわかっていないが、セイヤが魔王モードになった際に使う大剣デスエンドにも存在するから。


 だがそんなことを知らないアーサーはセイヤが聖剣に驚いていると勘違いしていた。


 「そして聖剣の真の姿が現れた今なら、闘気は十分通じる」


 アーサーの言う通り、聖剣の真の姿を前にした敵たちは、先ほどまでとは打って変わり、アーサーのことを格上の相手と認識しているように思われる。


 だがそれも無理にないことだ。アーサーの握り聖剣はまるで生きているかのような存在感を放っており、一目でその剣がただの剣ではないことが分かる。


 そして今まで何もなかった空間に突如怪物が現れたような感覚。そんな感覚が、自然とアーサーのことを強敵と認識させていく。そして強敵と認識されてしまったら最後、アーサーの前ではどんなことをしても通用はしない。正確に言うのであれば、何か手を打つ前に、アーサーの闘気によって意識を刈り取られてしまう。


 こうして、アーサーは隊長クラスの相手たちもまた、魔力を使わずに意識を刈り取り、あっという間にそのフロアにいた敵たちを全滅させてしまった。


 「さて帝王、先を急ぐぞ」

 「あ、ああ」


 セイヤはアーサーの規格外の実力に呆然とし、ただ黙ってついていくことしかできなかった。そしてその後もアーサーは次々と敵を倒していき、挙句の果てには魔王候補であろう有力な魔法師たちも闘気で倒してしまった。


 こうしてセイヤたちはアーサーの闘気だけで大魔王の館を駆け上り、ついに大魔王がいる部屋の前へとたどり着く。


 「ここに大魔王がいるのか?」

 「ああ、そうだ。まずはあたしが先に行くから二人はここで待っていろ。あたしが呼んだら部屋の中に入るんだ。いいな?」

 「わかった」

 「わかりました」


 二人が返事をすると、アーサーはそのまま大魔王ギラネル=サタンのいる部屋の中へと入って行くのであった。








 アーサーが大魔王の部屋に入って行ったことを確認したセイヤは考える。それはアーサーの使っていた闘気と、白い文字の浮かんだ聖剣。その二つはどちらもセイヤが知らないものであり、まだ詳しいことが分からない。


 特に聖剣に浮かんだ白い文字。あれが一体何を示し、どういう意味があるのか。セイヤはその答えが知りたかった。


 セイヤも手にする白い文字の浮かぶ武器。


 その文字の正体とは。そしてその文字が表す意味とは。


 セイヤがその答えを知るのはまだ少し先の話であった。


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