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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
4章 レイリア魔法大会編
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第174話 再会

 「やっと見つけた……」


 額に汗を浮かべ、荒い呼吸をしながらも、うれしそうな表情を浮かべるディオン。彼の視線の先には、先ほどから追い求めていたセイヤの姿があった。


 ディオンはセイヤの姿を視界にとらえると、一目散に駆け出す。


 「セイヤさーん!」


 やっと見つけた。ディオンは心の底から嬉しくなり、セイヤの下に駆け寄る。その際、セイヤの近くにいたセレナたちに、ディオンは気づかない。


 「セイヤさーん!」


 大きく腕を広げ、セイヤの胸に飛び込もうとするディオン。それは岩山エリアで一人にさせられた不安から、少しだけ幼児退行してしまっただけであり、そこに変な気持ちなどは一切ない。


 しかし、そんなことを知っているのはディオン本人だけであり、セイヤがディオンの気持ちなど知るわけもなかった。


 だからこそ、セイヤはディオンに対する嫌悪を全開で、ディオンのハグを拒絶する。


 「気持ち悪い」

 「ぐほっ……」


 セイヤは自分に向かって飛びつこうとしていたディオンに拳骨を落とし、地面に叩きつけた。そしてディオンはそのまま顔面から地面にダイブする。


 だがディオンはこれしきで心が折れるような少年ではなかった。


 「ひどいな! 感動の再会ですよ? もっと感情的になってくれたっていいじゃないですか!?」


 何の躊躇いもなく、自分の本音を口にするディオンだったが、周りからしてみると、ディオンの言っていることは気持ち悪かった。


 確かに、ディオンからしてみれば感動の再会である。戦闘能力が皆無のディオンが戦争状態の岩山エリアを一人で進み、セイヤと再会した。感情的になっても仕方がない。


 しかし、セイヤからしてみると、まったく感動の再会でもない。


 むしろ急にテンションが変わっているディオンのことを不審そうに見ていた。


 そんなセイヤに対して、セレナが言う。


 「セイヤ……もしかしてそっちに……?」

 「いや、断じて違うぞ」


 あらぬ方向に誤解し始めたセレナのことを、止めようとしたセイヤだったが、セレナの暴走は止まらない。


 「絶世の美少女二人で女に満足してしまったのね……もう、私なんかが入り込む余地なんて……」

 「違う、違うから。俺は女にしか興味ないから」

 「本当? じゃあ私にも入り込む余地ある?」

 「ああ、あるぞ。大いにあるから、安心しろ」

 「やった 」


 セイヤの右腕に抱き着きながら、嬉しそうな表情を浮かべるセレナ。その表情は完全に恋する乙女だ。


 なんとかセレナの誤解を解いたセイヤだったが、まだ事情を理解していない者が二人ほどいた。それはもちろん、ラーニャとリュカである。


 「ねぁ、ラーニャちゃん?」

 「何かしら、リュカ」

 「アンノーンがアンノーンじゃなくなったよ?」

 「そうね。彼はもう、いろいろなことを知っているのよ」


 セイヤが様々な経験を積んでいるのであろうと誤解する二人。そしてもう、セイヤがアンノーンではないということをしみじみと感じていた。


 「あんなに避けられていたアンノーンが、あんな美少女と、男の子から好かれるなんて」

 「いろいろ、すごいね……」


 二人のセイヤを見る目がどんどんと虚ろになっていく。


 セイヤの豹変や、濃密な殺気よりも、二人にしてみれば、こちらのほうが衝撃的だった。まさかセイヤがあんなことや、こんなことを、女の子だけではなく、男の子と経験しているなど、簡単には受け入れらなかった。


 そんな二人に対して、セイヤは困ったように言う。


 「おいラーニャ、お前絶対にわざとだろ? リュカはともかく、お前は絶対わざとだろ?」


 セイヤがやや殺気のこもった視線でラーニャのことを見る。すると、ラーニャは苦笑いをしながら答えた。


 「あれ、バレてた?」

 「当たり前だ」


 セイヤに睨まれ、ラーニャは苦笑いを浮かべたが、その表情はどこか嬉しそうだった。


 ラーニャはセイヤたちが誘拐されたということを聞いたときに、仕方がないと思った。それは魔法師である以上、仕方がないことであり、自分の身は自分で守らなければならい。


 そしてあの事件が終わったと聞いたとき、セイヤやザックは死んだと思った。


 しかし信じられないことに、セイヤは現在、ラーニャの目の前にいる。しかもセイヤの話によれば、ザックたちも生きていたというではないか。


 たとえ関わりがなくとも、かつての級友が生きていることは嬉しいことだ。


 そして雰囲気などは豹変してしまったセイヤだが、ラーニャは今のやり取りで、セイヤの根底は変わっていないと感じた。


 セイヤの豹変を考えれば、想像を絶するような経験をしてきたことに違いない。それは人格を変えることも容易なほどに。


 けれども、今のセイヤから感じる雰囲気は、ラーニャがセナビア魔法学園時代のセイヤから感じた雰囲気と似ていた。そんなセイヤに対し、ラーニャは良くも悪くも懐かしさを感じていたのだ。


 ラーニャがそんな懐かしさを感じていると、地面に這いつくばっていたディオンがやっと周りの姿に気づく。


 「あれ? あなたたちは……昨年の優勝メンバーの……」


 ディオンが視界にラーニャとリュカを捉える。そして盛大に驚きの声を上げた。


 「嘘、信じられません。僕ファンなんです!」


 嬉しそうな表情を浮かべるディオン。そしてディオンはセイヤの腕に抱き着いていたセレナにも気づく。


 「あ、あなたは……アルセニア魔法学園のセレナさんじゃないですか!」


 セレナのことを見ながら騒ぎ出すディオン。


 「す、すごいですよ! なんですか、このオールスターは! 豪華すぎますよ!」


 昨年のレイリア魔法大会優勝メンバーであるラーニャとリュカ、そしてアルセニア魔法学園の代表として名の知れているセレナを見て、テンションが上がるディオン。


 しかしそんなディオンとは対照的に、女性陣の顔には困惑が映っていた。


 「ねえ、アンノーン?」

 「なんだ?」

 「あなたの彼氏さん? ちょっとキモイんだけど……」

 「どうにかしてよ、アンノーン」

 「セイヤ、私この人無理」


 次々とディオンに対する拒絶の意思を見せる女性陣。しかしディオンの関心はすでにほかのところに映っていた。


 「な、な、なんで!? セイヤさんはお三方と知り合いなのですか?」


 ディオンの関心は、まるで知り合いかのようにラーニャたちと話すセイヤに向けられていた。


 基本的に転校が不可能な魔法学園において、他校の知り合いを作ることは難しい。それこそ、レイリア魔法大会に出場するしかない。


 しかしセイヤは昨年のレイリア魔法大会には出場していないため、どこで知り合ったのか、ディオンは物凄く気になった。


 ディオンの様子を見て、答えないと面倒なことになると思ったセイヤは正直に話す。


 「アルセニア魔法学園に通う前はセナビア魔法学園に通っていたんだ。それでその時のクラスメイトだよ」

 「な、な、なんと、そうだったのですか! すごい、すごいですよ!」


 なぜかまた一段とテンションが上がるディオン。


 こうして、さらにテンションが上がったディオンに対し、女性陣が再び困惑した表情を浮かべるのであった。





 場所は変わり、セナビア魔法学園にあるとある一室。


 そこには二人の男の姿があった。


 一人は赤い髪をした男。そしてもう一人は銀色の髪をした青年。


 「現状はどうですか?」

 「はい」


 銀髪の青年、ミコカブレラが聞くと、赤髪に男が答える。


 「現状ですが、かなり押されています。投入した部隊の大半が壊滅、残っている部隊も少ないです」

 「そうですか」


 報告を聞いたミコカブレラは考えるそぶりを見せる。


 ミコカブレラ=ディスキアンは聖教会に所属する魔法師である。しかし同時に、ダクリアとも関係のある魔法師だった。


 そして現在、ミコカブレラはライガーたち同様、ダクリアの人間の捜索する任務についている。ミコカブレラの目の前にいる男こそ、ライガーたちが探している男なのだが、ミコカブレラは誰にも報告はしていない。


 そもそも、今のミコカブレラは一人だった。本当なら、特級魔法師であるエルドリオと二人一組で捜索に当たっているはずなのだが、そこにエルドリオの姿はない。


 なぜなら、ミコカブレラは特級魔法師であるエルドリオのことを撒いて、一人でこの部屋に来ていたから。


 ミコカブレラが言う。


 「そう言えば、今回の作戦には次期魔王候補たちも参加していましたよね?」

 「はい。しかしサウン様は海エリアで、テイス様は岩山エリアで亡くなりました」

 「それは本当ですか?」

 「はい。青髪の女と、金髪の少年が。金髪の少年においては闇属性の使用も確認しています」

 「なんと……」


 この時、ミコカブレラは心のそこから驚いていた。次期魔王とは、言ってしまえばダクリアの将来を担う有力な魔法師たちのことであり、そう簡単に負けるとは思えない。


 しかしそんな彼らがすでに二人も負けている。


 それは予想外のことである。


 「それで、残りの三人は?」

 「はい。残りの三人ですが、砂漠エリアで交戦中です」

 「これは!?」


 赤髪の男が持つスクリーンに砂漠エリアが映し出されると、そこにはダクリアの魔法師たちと戦っているユアたちの姿があった。


 「レアル……」


 ミコカブレラはレアルが戦っている姿を見て、確信する。この戦いは、レアルたちが勝利すると。


 ミコカブレラはダクリアにも関係があるが、レイリアにも関係のある魔法師である。なので、ユアやヂル、そしてレアルがどれほどの実力者かは、他のダクリアの魔法師たちよりは知っているつもりだ。


 そんなミコカブレラの本能が告げていた。


 この戦いは、レイリア側の勝利だと。


 「至急、私をラピス島に転送してください」

 「はっ、はい」


 赤髪の男が慌てて返事をすると、すぐに転送魔法を行使する。そして、ミコカブレラの体が次第に消えていき、ラピス島へと転送されていく。


 ミコカブレラの参戦により、史上最悪のレイリア魔法大会も、いよいよ終わりに向かうのであった。


 いつも読んでいただきありがとうございます。


 まず初めに、リメイク版の件ではお騒がせし、本当にすいませんでした。これまで通り、こちらを連載して行きたいと思います。ご意見をくださった皆様、ありがとうございます。


 詳しいこと活動報告に書かせていただいたので、よかったらご覧ください。

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