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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
4章 レイリア魔法大会編
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第158話 実力者たちの会合

 密林エリアでセイヤがダクリアの軍勢を相手にしていた頃、セナビア魔法学園のメインスタジアムにある一室では豪華な顔ぶれが揃っていた。


 「久しぶりだな、イフリール」

 「ああ、お前も元気そうで何よりだ。ライガー」


 ライガーの目の前にいる茶髪の鋭い眼をした男はライガーと同じ特級魔法師であり、炎竜の二つ名を持つイフリール=ネフラ。


 拳を合わせる二人の間には、確かな信頼関係があることが分かる。


 「そしてエルドリオも久しぶりだな」

 「久しぶりだな、エルドリオ」

 「はい、お久しぶりです。二人とも元気そうで何よりです」


 遅れてライガーとイフリールに挨拶をしたのは、こちらも彼らと同じ特級魔法師の称号を持つエルドリオ=ペトラリア。


 しかしエルドリオはイフリールとは違い、どこかライガーのことを疑い深い眼で見ている。


 ここまでですでに特級魔法師三人が出ており、もうお腹いっぱいになりそうだが、まだまだ終わらない。


 ライガーたちの目が部屋に居たカップルたちに向けられると、カップルたちが自己紹介を始めた。


 「初めまして、俺は十三使徒序列十二位、ワイズ=トゥエルブです」


 最初は彼氏の方が挨拶をする。


 「私も彼と同じく十三使徒で、序列十三位のナナ=サーティンです」


 彼氏に続き、彼女の方も挨拶を済ませる。


 二人はカップルであり、同時に聖教会に所属する十三使徒たちであった。


 部屋に揃った五人、その全員がこのレイリア王国でも有名な魔法師たちだ。


 もし何も知らない者たちが今の部屋の状況を見れば、一体何事だと騒ぎ立てるであろう。しかしここに居る者たちは事情を知っている魔法師。だからその顔も真剣だ。


 「自己紹介を済んだことだし、さっそく本題だ」


 話を始めたのはライガー。


 「全員分かっていると思うが、現在、レイリア魔法大会はダクリアの侵攻を受けている」


 ライガーのその言葉に、残る四人の顔がさらに厳しくなる。彼らは全員、現在の状況がダクリアの侵攻だとわかっていた。


 「そこで我々の任務は主犯の確保、もしくは排除だ。この際手段は選んでいる暇はない」

 「ああ、ライガーの言う通りだ。俺らは一刻も早くこの進行を止めなければならない」


 イフリールもライガーに賛同したが、そこでエルドリオが聞く。


 「でもどうやってラピス島に?」


 現在、ラピス島に行く手段はない。それは緊急事態にもかかわらず選手たちを転送しない運営委員を見ればわかることだ。おそらくダクリアの妨害を受けているのだろうとライガーたちは考えていた。


 「それについてだが、俺らはラピス島にはいかない」

 「「「なっ……」」」


 驚きの声を上げたのはエルドリオ、ワイズ、ナナの三人。イフリールは当然といった顔をしている。


 「どういうことですか? なぜラピス島にいかないのです?」

 「そうですよ。一刻も早く私たちが駆け付けないでどうするのですか?」


 ライガーの言葉に反応するワイズとナナ。確かに常識的に考えれば、ここはライガーたちが一刻も早くラピス島に行き、残っている選手たちの安全を確保すべきであろう。しかし今、ラピス島にいる魔法師たちの大半は常識外な経験をしていたりと、常識外な力を持っている。


 「大丈夫だ。ラピス島内はあいつらに任せる」

 「そうだな」


 セイヤたちの本当の力を知っているライガーや、自分の息子が出ているイフリールは大丈夫だとわかっているが、そんなことを知らないエルドリオはライガーの意見を認めることができなかった。


 だからエルドリオはつい口走ってしまう。


 「ライガー殿、やはりあなたはダクリアの手先になっていたのですね?」


 それはエルドリオの推察にしか過ぎない。


 聖教会がライガー討伐を狙い、異端認定を受けた魔法師をかくまっているという情報。それら全てがダクリアとライガーが繋がっていると物語っていたが、確かな証拠はない。


 ライガーがその言葉を聞いて笑ってしまう。


 「ハッハッ、まさかそう来るとはな」

 「どういう意味ですか?」


 急に笑い出したライガーに警戒の眼差しを向けるエルドリオ。


 警戒度マックスのエルドリオに対して、ライガーはどこか砕けた口調で答える。


 「安心しろ、俺はダクリアとはつながっていない」

 「なら、どうして聖教会はあなたの狙っているのですか?」


 もしライガーがダクリアと繋がっていないというなら、どうして聖教会が必死になってライガーのことを狙っているのか、理解できない。


 しかしライガーはエルドリオの問いに対してあっさりと答えた。


 「ああ、それならうちに異端認定されたやつがいるからな」

 「なっ……」


 あっさりと白状したライガーにエルドリオは驚く。それはエルドリオの後ろにいたワイズとナナもだ。


 「もし異端認定を受けているやつが怪しいと言うのであれば、あいつは今この空間にはいないから安心しろ」

 「なら、どこに?」


 この空間、その言葉をエルドリオは疑問に思う。しかし次の瞬間、ライガーから衝撃の言葉がもたらされた。


 「あいつならそこに映っているぞ」


 ライガーが指さす先にあったもの、それは部屋に置かれていた小型スクリーンだ。そしてそこに映っているのは三十人近いダクリアの部隊を殲滅中の金髪碧眼の少年、セイヤだ。


 「まさか……あの少年が異端認定を受けたという?」

 「そうだ」


 エルドリオは信じられなかった。セイヤとは一度だけ会ったことがあるが、その時に彼から感じた雰囲気は到底異端認定を受けるほどのものではなかった。


 「これは!?」


 しかし現在スクリーンに映っているセイヤの姿はエルドリオの知るセイヤとは全く違っていた。


 容赦なく振り下ろされていく双剣、そしてその双剣が次々と敵の首を斬っていく。そこには一切の躊躇いなど存在しない。敵を見つめるセイヤの目はとても冷酷で、特級魔法師であるエルドリオでさえ恐怖を覚えるものだった。


 「わかったか? 俺はダクリアとは繋がっていない」

 「は、はい」


 エルドリオは理解する。ライガーが嘘をついていないという事に。


 今のセイヤの姿を見れば、彼が異端認定を受けたことがよくわかる。スクリーンに映るセイヤはあまりにも桁違いの力をもっていた。


 そしてセイヤがライガーに信頼を置いていることをエルドリオは知っている。


 だからもし、ライガーがダクリアと繋がっているとするならば、当然セイヤに仲間を殺す躊躇いが生まれてもおかしくはない。しかしセイヤからそんな躊躇いは微塵も感じられない。


 つまりセイヤとライガーはダクリアの敵という事だ。


 「しかし、なぜ救援に行かないのですか?」


 そう聞いたのはワイズだ。


 ライガーがシロだという事が分かっても、それは救援を送らない理由にはならない。


 ワイズの質問に対して、ライガーは淡々と答える。


 「それは必要ないからだ」

 「必要がない?」

 「ああ。今回のレイリア魔法大会には十三使徒が一人に俺とイフリールの子供がいる」

 「それでも!」


 いくら十三使徒や特級魔法師一族がいたとしても、彼らはまだ子供だ。戦わせるには荷が重すぎる。


 「お前だって気付いているだろ? アルセニア魔法学園が異常だってことを」

 「それは……」


 ライガーが言いたいことはアルセニア魔法学園の代表は皆、実戦経験があるという事だ。そのことはワイズにもわかっていたが、相手はダクリアである。いくら実戦経験があったとしても、ダクリアの魔法師と戦うにはまだ甘い。


 ワイズはそう思っていた。それはワイズの彼女、ナナも同じである。


 だからこそ、次の瞬間、二人はライガーの答えに驚愕した。


 「それにここだから言うが、うちの代表は全員ダクリアでの戦闘を経験している」

 「それは初耳だぞ」


 ライガーにそう言ったのは今まで静観していたイフリール。さすがにイフリールも今のライガーの言葉には驚きを隠せない。


 「お前らも知っているだろ? ダクリアの魔王が一人死んだのを」

 「ああ、一応報告書は読んだ。だが、それがどうした?」

 「あれやったの、うちの代表たちだ」

 「「「「なっ……」」」」


 そこにいたライガー以外の全員が言葉を失った。


 いくらなんでもライガーの言葉が信じられなかったから。


 「どういうことですか?」


 詰め寄ってきたエルドリオにライガーは答える。


 「言葉の通りだ。あいつら六人がダクリア二区に乗り込んで、捕まっていたフェニックス家の人間を救出。そしてその際に、主犯だった魔王をセイヤが倒した。それだけだ」

 「それだけって……」


 突然知らない情報を教えられて困惑する四人。一学生魔法師がダクリアの魔王を倒すことなど異常を通り越して、尋常ではない。


 しかしライガーが嘘をついているようには見えない。


 「だから向こうは大丈夫だ。俺らはこっちの仕事をする」

 「はぁ、相変わらずお前は……まあ、いい。それで、俺らの仕事って?」


 一番最初に平常運転に戻ったイフリールがライガーに聞く。


 「俺らの仕事は相手の避難路を断つことだ」

 「まるで相手が逃げ帰るみたいな言いようだな」

 「ああ、相手は絶対に逃げ帰るぞ」


 まるで未来が決まっているかのように話すライガー。


 一体その自信はどこから来るのかと、イフリールやエルドリオたちは思った。


 「なぜそのようなことが断言できるのですか?」

 「なぜって、こっちにはセイヤやユア、それにリリィだっている。たとえダクリアであろうとも、そんじゃそこらの魔法師ではあいつらには勝てないからな。それに今は十三使徒やイフリールの息子だっている」

 「ずいぶんと信頼しているのだな」

 「まあ、あいつらは強いからな」


 確信めいて言うライガーに四人は思う。ライガーがここまで信頼しているのなら大丈夫だろうと。


 「わかった」

 「わかりました」

 「了解です」

 「まずは敵の予備要員ですね?」


 次々と頭の思考を救出から排除に変えていく四人。その辺の切り替えはさすがは実力者だと言えるだろう。


 「では、まずは各自に分かれて怪しい者の調査からだ。場合によっては殲滅しても構わん」


 ライガーが高らかと指示を出す。そんな時だった。


 「失礼、私もその調査に加えてもらってもいいですか?」

 「お前は?」

 「ミコカブレラ!?」


 突如部屋に入ってきた銀髪の青年。その青年に対してワイズが言った名はミコカブレラ、それは十三使徒序列五位の教育係の名前であった。


 いつも読んでいただきありがとうございます。


 レイリア魔法大会編もそろそろ佳境に入ってきました。今回は島外の話でしたが、次からは再びラピス島に舞台を移してお送りしたいと思います。(予定では東の方)


 それでは次もよろしくお願いします。次は明日の21時頃の予定です。

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