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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
3章 ダクリア2区編
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第103話 モカ救出

 「うっ……」


 ユアはゆっくりと目を覚ました。


 体に感じる疲労感と所々が痛み、自分がまだ生きていることを理解する。しかしなぜ自分が生きているのか、わからなかった。


 自分は暗黒騎士と呼ばれる女性に殺されたはずだというのに、体のどこを見ても致命傷はない。あるのは疲労感と、かすり傷程度。


 ユアは周りを見るが、既に暗黒騎士の姿はなかった。


 「なんで……」


 暗黒騎士が何を考えていたかは理解できないが、今は生きているだけでよかったと思う。


 暗黒騎士に自分は全く歯が立たなかったことが、少し悔しいユア。聖属性を使える自分はどこか特別、そんな慢心があったのかもしれない。


 しかし暗黒騎士はユアの持つ聖属性の力を、まるであざ笑うかのように破って見せた。


 自分は無力だ。改めてそのことを思い知らされたユアは、反省すると同時に強く思う。もっと、もっと、強くなって、セイヤと肩を並べられるほどになるのだと。


 ユアは思い出したように周りを見ると、自分の目と鼻の先にうつぶせになって倒れているリリィ、壁際には寄りかかるようにして意識を失っているモーナの姿を見つける。


 ユアはすぐに二人のことを起こす。幸い二人も致命傷はなく、二人とも無事だった。だが、ますます暗黒騎士が何を考えていたのか、わからなくなる。


 リリィもモーナも、傷こそ追っているものの、致命傷は全くない。本当に戦ったのかが、怪しくなるぐらいの無事である。


 「お姉ちゃん、敵は?」

 「ユアさん、あの鎧の女性はどこに?」

 「わからない……消えた……」


 暗黒騎士の行動に疑問を覚える三人。しかし三人は突如として、奥の扉から現れた一人の女性の声によって意識を持っていかれることになる。


 「あら、あなたたち……」


 扉の近くにいたのは、きれいな赤い髪の女性でユアたちの目標であった、モカ=フェニックスだ。


 「おばさま、どうして?」


 モカと一番親交が深いモーナが質問したが、モカは驚いた顔で質問し返した。


 「それはこっちのセリフよ。モーナちゃんに、ユアちゃんと、リリィちゃん、なんで三人がこんなところに?」

 「それは私たちが助けに来たからです、おばさま」

 「三人で?」

 「いえ、六人ですわ。セレナたちは別行動をしております」


 モーナの答えに驚くモカ。無理もないことだ、まさか学生であるセレナたちが、たった六人でモカを助けるために暗黒領に来たというのだから。


 とんだ行動力である。


 「ところで、ほかの三人は無事なの?」

 「それは……」

 「大丈夫!」


 セレナたちの安否がわからないモーナは口ごもるが、代わりにリリィが元気よく答えた。


 「今セイヤはこっちに向かっているって! セレナお姉ちゃんたちは先にレイリアに戻っているらしい! でも二人とも無事だから安心しろ、って、セイヤが言っていた!」

 「そう、よかったわ」


 全員の安否を確認して、安心するモカ。本来なら保護者として叱るべきところなのだろうが、もとはと言えばモカが捕まったことが原因のため、叱ることはできない。


 その後、三人はモカの治療で傷を癒し、モカがなぜ脱出できたのかを聞いた。


 端的に言うと、モカのことを助け出したのは暗黒騎士らしい。


 モカがとらわれていた牢屋のカギを開けた暗黒騎士は、モカに向かって、


 「現在あなたのことを救出するためにレイリアから魔法師が攻めてきています。あなたはしばらくたったら混乱に乗じ、この牢を出て、救出部隊と合流してレイリアに帰ってください」


 と言い残して去ってしまったそうだ。


 モカが


 「なぜ助けてくれるの?」

 

 と聞いたところ、暗黒騎士は


 「レイリアで『フェニックスの焔』がなくなるのは困りますから」


 と答えたらしい。


 ますます暗黒騎士が何を考えているのか、わからなくなるユアであったが、これから強くなればまた会える。確証はないが、そう思うのであった。


 「無事か?」

 「セイヤ……」

 「セイヤ!」


 モカが出てきた扉と反対の扉から、セイヤが姿をあらわす。制服はところどころ傷ついているものの、体自体には大した傷がないようだ。


 ユアはセイヤが無事だということを確認すると、一目散に駆け寄り、最愛の人の胸の中へと飛び込む。


 「セイヤ……無事でよかった……」

 「ユアもな」


 自分の胸に飛び込んできたユアをやさしく受けて止めて、その頭を撫でるセイヤ。ユアはセイヤに頭を撫でられて気持ちよさそうに目を細める。


 「リリィも!」


 セイヤに頭を撫でられているユアの姿を見たリリィが、自分もと、セイヤの首に抱き着く。セイヤは自分の背後から抱き着いてくるリリィの頭も優しく撫でると、リリィもユアと同じように気持ちよさそうな顔をした。


 「私たちはお邪魔みたいね」

 「そうみたいですね」


 突如として完成した甘ったるい空間に、モカとモーナが困ったような表情を浮かべる。しかしセイヤたち三人はそんなことに気づかない。


 その後、ユアとリリィが満足して、セイヤから離れると、五人は一度ダクリア二区の街へと戻るために魔王の館を出る。


 途中、敵兵の残りもいたのだが、セイヤの威圧を受けると尻尾を巻いてどこかへ行ってしまった。


 セイヤたちが街に着くと、ちょうど日が沈みかけていた。


 「今日は遅いからここで泊まっていくか」

 「うん……」

 「うん!」

 「そうですね」

 「私までいいのかしら?」


 セイヤたちは例の宿の最上階のスイートルームを三部屋とり、一夜を明かすことにした。


 ちなみに三部屋というのは、セイヤ、ユア、リリィとモーナ一人と、モカ一人であるのだが、夜にセイヤたちの部屋でいろいろ起きたことは言うまでもない。


 宿のスイートルームは全部で四部屋。そのうち三つをセイヤたちが使っていたが、残る一つは他の客が使っていた。


 深夜、部屋の明かりをすべて消して、壁に寄り添う一人の人影。となりの部屋からはセイヤたちの声が聞こえる。


 人影は壁に耳をつけるような形で、セイヤたちの部屋を盗み聞ぎしていた。


 セイヤたちの部屋がやっと寝静まると、その人影は窓をゆっくりと開けて、ベランダに出る。そしてそのままベランダから飛び降りた。


 八階建建ての最上階から落ちたらひとたまりもないが、地面には死体の姿はない。そしてバチバチと音とともに、闇に消えた人影を見た者はいなかった。


 セイヤたちも、その存在に気づくことはなかった。


 いつも読んでいただきありがとうございます。その後シリーズ第二弾でした。モカさんも無事に見つかってよかったよかった(雑なのはお許しください)

 さて、話が短かった分雑談でもしましょうか……ユアとリリィの名前の由来についてです。


 ユアの由来は普通に英語のyourからです。ユア単体ではわからないですがここにリリィを加えるとわかるはずです。

 リリィは英語に直すとlilyとなり二人を合わせてyour lilyになります。直訳するとあなたの百合となるのですが、あなたというのはもちろんセイヤです。

 百合の花ことばは純潔などがあり、セイヤの心がずっと清らかであるようにという願いを込めてつけました。もう一つの意味のほうはすでに失われていますが、その辺は気にしないでもらえると嬉しいです。

 こんな感じで二人の名前が決まったというお話でした。ということで次もその後シリーズ第三弾を追加してエピローグで終わりにしたいと思うので、次もよろしくお願いします。


 明日も更新できるはずです。

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