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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
3章 ダクリア2区編
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第89話 それぞれの覚悟

 セイヤたちが塔の中に入ると、中はかなり広くなっており、部屋の奥には上の階へとつながる階段が見えた。


 そこでセイヤはゆっくりと警戒し、部屋の奥へと進む。そして問題がないことを確認すると、ユアたちに合図して階段を上る。


 六人が二階に着くと、先ほどと同じくらいの広間があり、人の影があった。といっても、数人程度でそれほど強そうには見えない。


 セイヤがそんな人影に向かって『闇波』を行使しようとしたが、セレナがセイヤのことを止める。


 「ここは私たちに任せて。覚悟を見せるわ」

 「やりましょうか」

 「行きます」


 セイヤに自分たちも覚悟があると示すため、セレナたちが動く。


 セレナは腰から魔装銃を抜き、広間の中央へと走り出す。広間にいた敵兵は、いきなり出てきたセレナに対し、一瞬だけ驚くが、すぐに首からかけていた銃を構えて、引き金を引く。


 しかし敵兵の銃から実弾が出ることはなかった。なぜなら引き金を引くことができなかったから。


 敵兵の銃を見てみると、全員の引き金の部分が凍っていた。敵の銃を凍らしたのは当然アイシィだ。


 セレナは銃を撃つことができない敵兵たちに向かって、問答無用で魔装銃の引き金を引いて、赤い魔力弾で敵を次々と絶命させていく。


 そして運よく命を繋いだものは、モーナのナイフの嵐によって絶命させられた。


 「これが私たちの覚悟よ」

 「これでどうでしょうか?」

 「私たちはできます」


 どうだと聞いてくる生徒会メンバーに対し、セイヤは笑みを浮かべながら言う。


 「合格だ。お前らの覚悟は本物で間違いない」


 セイヤに合格と言われて、三人で喜ぼうとする生徒会。しかしセイヤの言葉はそれで終わりではなかった。


 「でも時間がかかりすぎだ。これじゃあ隠密作戦にならない」

 「ううっ……」


 ふてくされるセレナ。


 「まあいい。隠密作戦はこれで終了だ。ここからは派手にいくぞ」

 「「「「「えっ?」」」」」


 セイヤがニヤリと笑みを浮かべて、右手を上に向けて広げる。いったい何が起きるのか、全く理解していないユアたち。だがセイヤは気にせず、魔法を発動した。


 「一気に行くぞ。『闇の大砲(デスキャノン)』」 

 「嘘でしょ!?」


 そんなセレナの声とともに、セイヤたちの頭上は一瞬で消滅した。セイヤが使った魔法はその名の通り、闇属性の魔力をぶっ放す単純な魔法だ。


 これにより、セイヤは階数にして約十階分の部屋を、一瞬で消滅させた。当然、その中にはたくさんの敵兵がいただろうが、跡形もなく消えている。


 「ちょっとロリコン! いくら何でもやりすぎよ」

 「セイヤやりすぎ……」

 「セイヤ凄かった!」

 「これは流石に……言葉が出ません」

 「すごい……」


 あまりの大雑把さに、文句を言われるセイヤだが、これで敵兵をかなり消したのも事実。しかし、同時にセイヤたちの侵入が発覚し、警報が鳴り始め、次々敵兵がセイヤたちをめがけて飛び降りて来た。


 セイヤは階段で早く上に登ろうとしたが、あることに気づく。


 「やべっ、階段まで消滅させた」


 セイヤが何を言っているのか理解できないユアたち。階段があった方を見ると、そこには存在したはずの上へとつながる階段が、跡形もなく消えて、綺麗な床になっていた。


 「ちょっと、どうするのよ!?」

 「安心しろ。リリィがいる。リリィ頼む」

 「わかった! 来て! ゲドちゃん!」


 リリィがそう言うと、大きな水の球体が姿を現し、水のドラゴンへと姿を変えていく。セイヤたちはすぐに水でできたドラゴンに乗り、上の階を目指し、上昇する。


 「このまま上に行きながら、降ってくる敵を殲滅するぞ」


 セイヤはそう言って、『闇波』で次々と降ってくる敵兵を消滅させていく。


 ユアはユリアルを生成し、光属性の魔力でできた矢を敵兵に向けて放ち敵を倒していく。リリィも水のレーザーで敵を貫いていく。


 セレナは魔装銃の引き金を次々引き魔力弾で、モーナは風を操りナイフで敵を切り裂き、アイシィは氷の礫を飛ばしながら、敵の命を奪っていく。


 そうしてセイヤたちは一気に十五階くらいまでショートカットすると、ゲドちゃんから降り、再び歩いて上を目指す。


 次の階ではたくさんの敵兵が広間でセイヤたちのことを待っていた。先ほどよりも格段に広くなった十六階の広間には、これまた先ほどよりも格段に強そうな敵兵が千人近く武器をもってセイヤたちのことを待ち受けている。


 「どうやら敵さんも準備が完了したみたいだな」


 セイヤはそう言いながら、愛剣である双剣ホリンズを召喚する。ユアも先ほどの弓ではなく、レイピアのユリエルを生成して構える。リリィたちも各々戦闘態勢に入っていく。


 いざ勝負! となりそうな直前、セイヤがユアたちに言った。


 「一番敵を殲滅できなかった奴は、レイリアに帰ったら全員に一週間昼飯おごりな」


 セイヤはそう言い残すと『纏光』を発動して、爆発的に上昇した身体能力で、敵を殲滅していく。


 「セイヤずるい……」


 ユアはそういいながらも、『単光』を行使して、敵を次々と殲滅していく。ユアがユリエルで刺した敵は、すぐには絶命はしない。だが一呼吸おいて、内部から破裂して肉塊になる。


 これはユアが敵兵の体内に光属性の魔力を流し込み、体内から爆発させているのだが、そんな光景を見たことがない敵兵はただ恐怖を覚える。


 「リリィも負けないよ!」


 リリィは次々と水のレーザーを撃ち出し、敵兵の心臓付近を貫いていく。あまりの貫通力に、一発のレーザーで一気に十人くらいの心臓を貫くリリィの姿は、敵兵にしてみれば、無慈悲な幼女でしかなかった。


 次々と敵が殲滅されていく中、不意にモーナが言う。


 「私たちもやりましょうか」

 「モーナ?」

 「これは生死をかけた戦いです。私たちは覚悟をもってこの場にいます。それは相手も同じです。私たちの覚悟は甘かったようですね。

  私はここで、もう一度覚悟します。もうためらわないと。それにお昼ご飯を一週間おごりも嫌ですしね」


 モーナは笑顔でそう言い残すと、杖を敵兵に向け、魔法を発動する。


 「テンペスト」


 無数のナイフが空気中を浮遊して、次々と飛んでいき敵兵の命を奪っていく。そこにはもうためらいなどは存在せず、ただ敵のことを葬っていくだけだった。


 「モーナ……」

 「セレナ先輩。やりましょう」

 「アイシィ?」

 「ここはレイリア王国じゃありません。多分私たちは甘かったんだと思います。だから私もやります」

 「アイシィ」


 アイシィはそういうと氷であるものを作り出す。それは双剣。氷でできた双剣を手に、アイシィは敵兵の中へと突っ込んでいく。


 敵兵を次々と双剣で切り裂いていき、相手に背後をとられると、持っていた氷の双剣を変形させ、氷の刀を作り出して、後ろの敵兵にさす。


 それからアイシィは槍、斧、ナイフなど様々な武器を氷で作り出し、次々と敵兵を殲滅していく。


 そんな二人の光景を見ながら、セレナは自分の甘さを痛感する。今回の作戦において、自分が一番覚悟があると思っていたセレナ。しかし実際は、セレナが一番、覚悟がなかった。


 (こんなんじゃだめだ。私の目的はお母さんを助けること)


 セレナは決意した。もう躊躇わないと。


 「火の巫女の深淵、ここに出よ。『アトゥートス』」


 セレナの発動した『アトゥートス』は、まるでセレナの決意を象徴するかのように勇ましく敵に向かって枝分かれしていく。


 二万ほどまでに枝分かれした赤いレーザーは、次々と敵兵に当たり、その身を焦がしていく。敵兵は赤いレーザーを避けようとするが、『アトゥートス』は追尾型のため無駄だった。


 赤いレーザーが次々と敵兵を焼き殺していく。


 こうして敵兵は、全滅した。一方的な殲滅を終えたセイヤたちは、次の階へと向かうため階段を昇っていく。その途中、セイヤがふと言った。


 「さっきの俺が数えたところによると一番少なかったのは鳥女だった。鳥女、帰ったら昼飯よろしくな」

 「なんでよ!?」

 「なんで、って、お前が一番殲滅数少なかったし」

 「あらあら、じゃあセレナ、よろしくお願いしますね」

 「セレナ先輩、ごっつぁんです」

 「ありがとう……」

 「セレナお姉ちゃんありがとう!」

 「えっ? あの話、本当だったの?」

 「もちろん」

 「そんな~」


 そんな会話をしながら進むと十七階へと着く。しかし十七階はさっきまでの階とは違い、広間になっておらず、大きな扉が二個あった。


 「どうやらここらで二手に分かれないといけないみたいだな」

 「みたいですね」


 一瞬にして一同の顔が厳しくなる。それはモーナたちにも覚悟が生まれた証拠だ。


 「さて、どう分けるかだが……」


 セイヤは全員の顔を見ながら考える。ユアたちはセイヤに任せるという態度を示したので、セイヤは一番効率的かつ安全な二つに分ける。


 「相手が闇属性を使う場合を考えると、俺とユアは別のほうがいいな。あとお互いの情報交換のためには念話石なしで念話できるリリィも、ユアと同じ方がいいとして……」


 ここまでは簡単に決まる。問題は次だ。


 ユアとリリィと誰を一緒にするか、が問題である。本当ならいろいろな武器を使えるアイシィを入れたいのだが、リリィとの関係を見るといろいろ危ない気がする。


 かといって、セレナを入れたら、これはこれで大変なことになりそうなので、必然的にモーナしかいなくなった。


 「モーナ、ユアたちと組んでくれ」

 「わかりました」


 この時、セイヤは知らなかった。決してモーナとリリィを一緒にしてはいけないことを……


 「じゃあこれでいいか。一応確認はしておくが、最優先事項はモカ=フェニックスの救出だ。モカ=フェニックスを見つけ次第、連絡を取ってすぐにこの場から離脱する。できるだけ無用な戦闘は避けるように。絶対に死ぬなよ」

 「ええ、承知しましたわ」


 こうしてセイヤたちは二手に分かれ、扉の中へと入っていく。


 扉を開ける直前、ユアがセイヤに抱き着き、耳元で「浮気はダメ」と言い残して、濃厚なキスをするなど、いろいろハプニングがあったが、モカ救出作戦は第二段階へと突入した。


 セイヤ、セレナ、アイシィ

 ユア、リリィ、モーナ


 この選択があの悲劇を生むことになることを、まだ誰も知らなかった。


いつも読んで頂きありがとうございます。いよいよ戦闘の始まりです。これからどんどん戦闘をしていくので、セイヤが無双します!

この話を持って今年の更新は終わります。三ヶ月ちょいありがとうございました。そして来年も良かったらよろしくお願いします。みなさん良いお年を


ついでですが、先日作者はついにTwitterを始めました。活動報告に書いてあるので良かったらフォローしてください。それでは|・x・)ノシ

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