第一話
がちがちの理系が書いた文章。
変な部分もある可能性あり。
夏休みの変なノリで書いてしまった。
温かい目で読んで頂けるとうれしいです。
昔々、この大陸では【人間】【動物】そして【妖】が共存していた。
人間は動物を飼いならして暮らし、妖は人目のつかない場所でひっそりと暮らすもの・人間と仲良く暮らすものがいた。それぞれの暮らしに大きな争いごとはなく、平和という一言に尽きる世界であった。
だが、その平和は突然崩れる。妖が突然暴れだしたのだ。人間と友好的に暮らしていたもの・ひっそりと暮らしていたもの例外なく暴れだす妖が出た。
平和な世界であったため、人間たちは妖に対抗する術を知らなかった。
そのため、人間たちはその暴れだした妖に次々と襲われ喰われ数を減らしていった。
火を吐く妖、鋭い牙や爪を持つ妖、素早く動き人間の肉眼では捉えることの出来ない妖と多種多様な妖が人間たちを追い詰めていく。
逃げ延び続けていていた人間たちのなかからも「もうだめだ」と次々と諦めていく者が出てくる中、五体の妖が人間たちの前に現れる。その妖は人間を襲わず、逆に人間たちを襲う妖らを倒す。
その五体の妖は大陸内で逃げ惑う人間たちを次々と救い出し、生存者に希望を与えていった。
しかし、その五体の妖も何千何万もの妖を相手にしていったため疲弊していってしまう。
五体の妖は時間とともに傷を増やし疲れ果てていくが最後の力を振り絞り、それぞれ別々に1000キロ平方メートル~5000キロ平方メートルほどの面積をあるところはマグマで囲い、またあるところでは水で囲み、他にも稲妻を走らせたり、見えない防壁や深い谷で囲い込み生き延びている人間たちをそこに避難させた。
そして、その避難させた土地にもとからいた妖らを殲滅させると五体の妖はついに力尽き死んでいった…。
五体の妖が死んでしまった後も、人間たちはその五体の妖を忘れることはしない。生き残った彼らは避難した土地ごとに国を立ち上げ、それぞれ助けてくれた妖を守り神として崇め奉った。
その立ち上げた五つの国は後に【炎艶】【譚海】【雷羅】【白済】【獄露】となる。
「はいっおしまい。ちょっと言葉が難しかったかな~。」
と言いながら二十代後半の女性は「五体の妖」という題名の本を閉じる。
「ごたいのあやかちかっこいー」
目を輝かせながら、幼稚園児ほどの男の子は無邪気に話す。
「ふふっ。そうね。かっこいいわね。むさし君も大きくなったらこの五体の妖のように弱いものを助けたい?」
女性は聞く。
「うん!ぼくたすける!!」
と男の子はすぐに元気な返事を返した……。
「おい!白宮っ!!授業中だ!俺の授業で寝るとはいい度胸じゃねえか。」
大きく野太い声が教室に響く。
「はいっ!すみませんでした!」
先ほどまで机に突っ伏していた茶髪の学生、白宮武蔵は即座に立ち上がり教師に謝罪する。
「ほう。すぐに謝罪は良い心がけだ。その態度に免じて、この問題が解けたら許してやろう。」
とガタイがよく服の上からも筋肉むきむきなのがわかる白堂という教師がニヤリと笑いながら言う。
白堂教師が指定した問題は数学の基本問題であった。体育教師にしか見えない風貌の白堂教師は数学教師である。数学の基本問題であれば公式を使うだけですぐに解くことはできる。だが、先ほどまで寝ていた白宮は使う公式がわからない。教科書もノートも出さずに寝てしまっていたため彼の机の上にヒントはない。
困り果てている彼を救ったのは隣に座っている坊主刈りの男子学生だった。その男子学生は教科書を開き公式をシャーペンでさした。公式を知ることの出来た彼は暗算で解答を導き出し、
「x=425です。」
そう教師に答える。
「ちっ。正解だ。外してくれたら面白かったんだが…まぁいい座れ。」
教師は不満気だ。
教室内にいる学生たちはそろって
(外したらなにが…)
と青ざめている。
席に着いた白宮は小声で隣の坊主刈りの学生に感謝の言葉を述べる。
「いいっていいって、僕と君の仲じゃない。まぁーあとでなんか奢ってもらうけどさー♪」
と坊主刈りは笑顔で答える。もちろん教師に聞こえないレベルの小声でだ。
この坊主刈りの男子学生の名前は白野笑太。名前の通り笑顔の似合う男である。
「今月はもう金ねぇから勘弁してほしいんだが…。この前もあいつにいろいろ買わされたし…」
と白宮は嘆く。
「あぁ~、一華ちゃんね。そういえばこの前大会で優勝したらしいじゃん。すごいよねぇ彼女。まぁそれはそれ。これはこれだから♪昼食代浮いてラッキー♪」
彼は奢って貰うことを諦めるつもりはないらしい。
白宮は小さく舌打ちをする。
二人の話に出てきた一華という女子学生はフルネーム与白一華。白宮の幼馴染であり、弓の名手である。先日もそこそこ大きな大会に出場し見事優秀な成績を収めた。それを理由に白宮に高級デザートをねだり、そのおねだりに屈した彼は財布が寂しい状態になっているのだ。
残念ながら白宮・白野と彼女はクラスが違う。
白堂教師の数学の授業が終わり昼休みに入った。
(そーいや、さっきはなかなか嫌な夢を見ちったな…。あの頃の俺は威勢がいいガキだったなぁ)
と白宮が先ほどの夢の感想を心の内で語っていると、
「はやく食堂いこーぜ!」と白野はせかす。
「わっーたよ。なるべく安いのを頼むぞ。」
白宮はなんだかんだで優しい男だ。彼はなんだかんだで白野に飯を奢る。
白宮と白野が食堂に向かうとき、競技場では戦闘訓練が行われていた。
「あれ一華ちゃんじゃない?頑張っているねぇ」
と言う白野に対して「ふぅーん」と心のない返事の白宮。
戦闘訓練をしている学生らは汗だくで一対一の模擬戦をしている。
「やっぱり大変そうだね。戦闘科は…」
と白野はさらに付け加える。
この学校いや、この大陸にある小中学校や高校はすっべて戦闘科と生産科に分かれる。それは白宮たちのいる白済の国だけでなく、他の四つの国でもそうだ。
生産科ではその名の通り生産系の職に就きたいと希望した学生たちが生産に携わることについて学んでおり、戦闘科では国の外にいる人間たちの敵【妖】と戦うための訓練を重視してカリキュラムが作られていて座学はあまりない。小さい学年のときは戦闘科のほうが学生が多く生産科が少ないが、大きくなるにつれ戦闘に恐怖を覚えたり、突然戦えなくなったりといろいろな理由で生産科に移る学生が多く出てきて高校課程を終える頃には生産科のほうが多くなっていたりする。
ちなみに先ほどの会話でもわかるだろうが、白宮と白野は生産科。与白は戦闘科である。
さらに言うと白宮は小学校のときに戦闘科から生産科に移っている。
「あぁ、そうだな。」
彼は少し暗い顔をしながら、短く白野に言う。戦闘科について良い思い出がないのだろう。
そのことを知っていた白野はまずったかなぁという言葉が書いているよう顔をする。
そして別の話題を提示した。その話題は昼食を済ませるまで続いた。
食堂で昼食を済ませた彼らは白野が菜園部の活動があったため分かれて行動する。
白野と違い部活動をいていない白宮はいつも昼休みに行く芝生のところでごろっと横になりウトウトしていた。
空はきれいな青色をしていて、太陽の光はとても暖かい、学校内のグランドには友達同士で運動している学生たちがたくさんいる。
「平和だなぁ」
白宮はそう独り言を漏らす。
確かにこの風景だけを見れば平和だといえるだろう。だがこの大陸内で平和なのはごく一部で大陸の大半は狂暴な妖によって人が通るのが困難な地域である。
ここ白済が平和なのは、昔話に出てきた五体の妖のうちの一体が生成した見えない防壁と人間たちが長い年月を使って築き上げてきた防壁のおかげである。この二つの防壁の外には妖がそこら中に潜んでいる。
その平和な空間でウトウトしていた彼は再び眠りについていた。
今回彼の眠りを妨げるものはなく昼休み終了の予鈴が鳴るまでぐっすりと眠ることができた。
予鈴が鳴ると彼は身体を起こし、
「ふぁ~。よく寝た。教室に戻るかなあ」
と一人つぶやきながら教室に戻る…。
午後の授業は昼休みの昼寝が役に立ち、居眠りの常習犯である白宮武蔵であったが寝ずに受けることができた。
放課後になった。クラスの大半が部活動に行く中、帰宅部の彼は下校する準備をしていた。
その時、
「むっさしーーー!!」
と勢いよく教室の扉を開け入ってくる女学生がいた。その女学生は長くきれいな白色の髪、整った顔でスタイルも良い。いわゆる美少女というやつである。彼女こそ白宮の幼馴染、与白一華だ。彼女は白宮を見つけると素早く彼の元に行き、
「今日遊び行っていい?良いよね?うんうん。それじゃ行くよ!ハイ決まり!早く帰ろー!」
と返事を待たずに決めつけた。
その発言に残っていたクラスの男子は一斉に殺気をだす。そりゃそうだ。与白は誰がどう見ても美人であり、校内仲良くおしゃべりしたい女子ランキング上位の常連様だ。そんな彼女が自分の他の男子学生と仲良さげにおしゃべりをし、挙句の果てには家に遊びにも行こうとしている。それで殺意が沸かないわけがない。
その殺気に気づいている白宮は冷や汗が流れるのを感じながら
「……わかった。わーーったから、落ち着け。来ていいから。あーーそうだ。白野!お前も来るか?いや来いよ!」
と隣にいた白野に声をかける。
(こいつが来れば少しはマシに鳴るだろう)
そんなことでも考えているのであろう。
「いやいや。お二人の邪魔をするわけにはいかないよ。それに部活もあるしさ。さてと、お二人さん仲よくねぇ。」
とニヤニヤとしながら、クラス全体に聞こえるように言うと、白野は荷物を持って部活にいってしまった。
(くそっ…あんにゃろ。俺が困ることを楽しんでやがる。他に何か…)
そう考えている最中にも教室内の殺気はグレードアップしていく。
「何してんの?早くいくよ!」
与白は対処法を考えている彼の腕を引っ張り
「失礼しましたぁ!」
と教室を出る。
白宮が教室を出るときに見たクラスメイトたちの顔は明日覚えていろよと書いてあるようだった。
このまま腕を引っ張って歩かれてしまうと他のクラスからも殺気がでてしまうため早々に
「わかったわかった。自分で歩くから」
と言って腕を放してもらう。腕が放されたところで、あちこちから殺気は出ていたが…。
殺気にひやひやしながら白宮は与白と一緒に学校からでる。
「なんで、急にうちに来たいって言ってきたんだ?…まさかうちに来たいというのは口実でまた高いもの奢れって言うつもりじゃないだろうな。もう俺の財布はすっからかんだかんな。無理だからな。わかったか?無理だぞ。」
帰路の途中、彼女に対して一部を強く主張して白宮は言う。
「流石に奢ってーーはないよ。この前けっこう奢ってもらったしぃ♪今日は~私が愛してやまないあの闘真さんの出る番組があるのだぁ!それを見るのだぁ!」
彼女は目をキラキラさせる。
「あ~なるほどわかったわかった。お前のところのテレビよりうちのおうが大きいからなぁ」
「そうそう。闘真さんのかっこいいぃーところは大きな画面で見ないと!うちの親には朝のうちに言っといたし。」
「朝から決まっていたのか…俺が何と言おうとくるのは決定されていたと…はぁ…」
と二人は会話を続ける。
彼女が大ファンである闘真さんこと黄々闘真は雷羅の国の最強剣士だ。彼は三十の後半の歳でありながら、素早い身のこなし、ブレのない剣戟で他の剣士を圧倒する剣士である。噂によると本気を出したら剣からイナズマが走るなども言われていたりする。そんな噂が立つほど彼は強いため彼女のような熱狂的なファンはこの大陸にたくさんいる。
いろいろと話をしているうちに白宮家に着いた。白宮家は一般てきな一軒家で特に目立つ箇所はない。
「ただいまー」「おじゃましまーす」
それぞれ言いながら家の中に入る。
「武蔵くんおかえり。一華ちゃんいらっしゃい。闘真さんの試合見来たんでしょ。わかってたわ~。クッキー焼いといたの。食べながら観戦しましょ?」
白宮の母が出てきてそう言う。テレビ番組表を把握している白宮母は与白がくることは想定済みである。
「わぁ。ありがとうございます。」
テーブルの上にクッキーの乗った皿を置き、白宮、白宮母、与白は座布団の上に座る。
与白はいまかいまかとわくわくし、白宮親子もそこそこ楽しみに番組が始まる時間を待つ。
そろそろかなと白宮がテレビの電源をつけるとニュース速報が放送されていた。
「速報です。たった今、あの有名な雷羅の国の剣士黄々闘真さんが何者かに襲われ、殺されたという情報が入ってきました。彼は本日午後五時からの闘真ガチンコバトル大会の出場を控えている際、たばこを吸ってくるすぐ戻ってくるとスタッフに言い控室をでました。いつまで待っても戻ってこないためスタッフが捜したところ暗い路地裏に血だらけで倒れている黄々闘真さんをみつけ病院に運びこみましたが、残念ながら間に合わなかったようです。ただいま現場と中継がつながっています。現場の黄谷さーん。」
ニュースキャスターの声が白宮家のリビングに響く。
重い空気が漂う。
白宮親子はそのニュースに驚きながらも一番ショックであろう与白の様子をうかがう。
与白の顔は引きつり呼吸するのも忘れたかのように止まっていたが小声でなにかつぶやいた。
「闘真さんが死んだ?え?あの闘真さんが?嘘…」
彼女は幼いころから黄々の大ファンであった。何かに取りつかれていたかのようにファンで居続けていた。熱狂的な大ファンだった。だから、彼女が動揺するのは当たり前だった。
白宮親子はそれぞれ心配そうに声をかけるが与白はうつむいたままである。
少しの間シーンとしていた。
「心配かけてすみません。もうだいじょうぶです。」
先ほどまでの威勢はなく、暗い顔をしていた。
「とりあえず、食えよ、うまいぞ?」
そう言いながら白宮はクッキーの乗った皿を渡す。
それをいただきますといいながら何枚か食べた後、彼女は帰って行った。
彼女が帰って行った後、白宮家では父親がいつも通り帰ってきて、いつも通り三人で夕食をすませ、いつも通り明かりが消え白宮家は就寝した。
次の日、これまたいつも通りの朝を迎えた白宮。リビングに行くとそこには父と母二人がテレビを見ながら硬直している。テレビはニュースがついており、そのニュースキャスターはこう言っていた。
「雷羅の国の防壁が破られ、雷羅に大量の妖が入り込みました」
雷羅にも妖が入ってこれないよう、昔話に出てくる五体の妖のうちの一体の力で土地の周りに稲妻を走らせていた。それにこちらも白済のように人が作った防壁の二重の守りによって今まで守られてきた。それだけでなく、この大陸にある国にはどこも戦闘科を卒業した者たちの対妖の戦闘集団もいる。妖対策はこれ以上ないほど完璧であったはずだ。それなのに大量の妖に入り込まれてしまった。
その現実は、白宮家いやこの大陸にすむすべての人間たちを震え上がらせた。