ネカフェに集う者たち
夕焼けに向かって歩きながら、相田カナタは財布の中身を確かめる。薄くて軽い。やけに夕焼けが目に染みた。
「くそっ、また滝瀬にもらうしかないか」
どちらかというと大人しそうな男の子、といった外見には似合わない言葉が思わず漏れた。
小さな声だったが、もし通行人が聞いたら思わず振り返り、「いや、お金の事とは決まってない。何か別のもの、ゲームのアイテムのことだろう」と言い訳したり「大人しそうな顔して実はド外道なんだろうか」と創造を羽ばたかせたりしただろう。
しかし残念金の話である。
カナタ本人も女に、しかも同年代の、特別な関係なわけでもない人間に金を融通してもらうとは、我ながら情けないと思う。いや同年代じゃない特別な関係の相手だとしてもやはり情けない。
しかし、色々と活動するには、何をおいてもやはり金。食べるのに金、服に金、靴に金、場所に金、情報に金、魔術に金。
本当は良くないと思いつつも、もらわなければやっていけない。切り詰めたとしても足りないし、人間はゆとりや贅沢を覚えるとそうそう抜け出せない。良くないとは思ってはいるんだ!
一度「借りる」という形にしないかと言ったこともあったが、こともなげに突っぱねられた手前言いだしにくいし、現状の頼り具合と「それがいずれ返さなければならない金」になると思うと足がすくむレベルだ。
「はぁ」
溜息しか漏れない。
活動をはじめて細々とした管理をすることになり、初めて世の社長を尊敬した。それまでは社員を引っ張っていき責任を取るのが仕事でできるものならなってみたいと思っていたが、今は社員を引っ張りながら背中も押して縁の下も支えるすごい仕事だと思うしもし自分にできてもなりたくない。ストレスでハゲる。
そうこうしているうちに目的のネットカフェについた。
受付の店員にすでに来て場所をとっている団体の追加であることを伝えると部屋を教えてもらえた。
「おー、アイダやっと来たのね。遅かったわね」
「へーへーアイダですよっと。ごめん、ちょっと委員会でつかまってて」
中で待っていたのは5人の男女。
そう、この間マヨイミズと戦っているところに井達三郎がであったフォッシルスターの面々である。
(まぁ皆良いやつらだし、困ったら頼ろう。今はできる限りのことをするんだ)
「んーじゃあ、対策会議始めようか」