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とある電子工学科の学園生

作者: アルト

 不幸、人はそれを一時の溜めの期間だと言うだろう。


「さてと、これを不幸で片づけていいのか?」


 交通委員という、学園周辺の交通関係の仕事を行う委員に所属していながら新学期そうそう事故を起こす。

 相手は40代後半の会社員Aさん。

 Aさんがスマホを弄りながら猛スピードで余所見運転してきたところ、緊急回避で縁石にブチアタリ、車道の反対側まで約7メートルほど滑空してそこの縁石で頭を強打する。

 しかも”当たってない”から衝突事故として見てもらえず、さらに生徒指導に怒られる。

 まあ、こちらも自転車で車と同等の速度を出していたのだから仕方ないが。

 そしてそれで、かすり傷で済んでいるところからしておかしいが。


「ですから、こちらもスピードの出しすぎという非はありますが、向こうが余所見運転で……」

「きちんと回避できんかった君が悪い。もしかして君もスマホを弄ったりしながら」

「してません。疑うなら荷物検査でもしてください」


 色々あって始末書書いて、一限目。

 実習してレポート出して、実習してレポート出しての繰り返し。

 今回の実習はソルダーレス・ブレッドボードというものを使って論理回路を組むといったものだ。

 これがまた面倒なのだ。

 トランジスタと抵抗器、そしてダイオードを組み合わせるだけ。

 そう聞けば簡単そうだが、実際にやるとややこしいパズルのようなものなのだ。

 トランジスタは図と実際の”足”の配置が異なるために初心者はよく間違える。


「まったく、なんでこんなもんやるんだか。今時SSI、MSI、LSIだののICあるんだからそっち使えっての」


 周りの生徒がもくもくと作業を始める中、その学園生はまずトランジスタを横一列に並べて配置した。

 これは彼なりの間違えにくくする方法らしい。

 端のほうから順に作っていくと、どうしてもどれがどこに繋がればいいのかが分りづらくなってしまう。

 それならばせめて中心となり、且つ目立つパーツを置いてから抵抗器や整流ダイオードを配置しよう、そういうことらしいのだ。


「動作確認っと……終わりました」


 最後のLEDが正しく点灯するかを見て彼は終了した旨を伝えた。


「はやっ!」


 周りから驚かれるも一切の動揺の表情が顔にでない。

 実習の予定では二時限使ってすべての作業を行う予定だったが、わずか十分で終わらせた。

 余った時間は当然、自由、ではなくレポートの作成。


「ちょいちょい」

「なん?」

「これ、どこが間違っとんかわからんのやけど」

「んー」


 いつものように隣の生徒に聞かれる。

 最初の説明でいっつも熟睡モードになっているのが悪いと思うのだが。

 そしてその生徒の回路はジャンパー線を無駄に使っていて、まるでミニチュアのジャングルのような回路だ。

 どこが悪いのか、回路の最初から電気の流れ道を辿っていると、その生徒が電源装置のアウトプットボタンを押した。


「ね、点かんやろ」

「キナ臭い……まさか」


 パチンッ、と音がして、回路の末端にあるLEDが何故か破裂した。

 そしてその破片が何故かすべて自分に飛んでくるという不思議現象。


「アノードとカソードが逆やないか……」



 なぜかLED破裂事故の責任を擦り付けられそうなった後の三限目。

 プログラミングの実習。

 正直これはほぼお遊びである。

 上級生が製作した電光掲示板の点灯パターンを作るだけだ。


「面倒くせぇ……」


 プログラムの打ち込みに使うコンピュータを念入りにチェックする。

 毎度毎度の不測の事態が無駄なタイムロスにつながっているのだ。

 そうして確認し終えた後に、作業を始める。

 プログラミングに使うのはC言語。ベーシックでも可能だが今回はCのほうが指定されていた。

 このような制御ではincludeなどは不要だが、前置処理でポート番号を指定しておかないと後々とても面倒になる。

 もろもろの処理を打ち込み終わり、main関数内も入力し終え、いざコンパイル!

 と、キーを叩こうとしたところで画面がブラックアウト。

 電源はちゃんとつながっている。

 コンピューターのケーブル類もつながっている。

 不思議現象。

 ほかの面々が終わらせる中、一人残ってまた初めからやり直すのであった。



 すべての実習を終え、帰り支度を済ませる。

 駐輪場へ行くとなぜか自分の自転車だけが180度回転している。

 しかも駐輪場から離れた位置にある。

 誰かのいたずら、というわけではない。

 いつものことだ。

 駐輪場の端で固定するためのラックがないエリア。

 しかも風防もないために風にさらされる。

 この風が原因だ。

 自転車のスタンドを軸に風の影響で回転。

 そんなことがあってたまるか。

 いや、実際にあるのだから仕方ない。

 そしてなんの奇跡か校舎の配置でいい感じに風があたり続け移動するという。

 最初は信じてもらえずに監視カメラを設置してみてもらったほどだ。



 いざ、帰宅。

 寮までの道のりは約6キロ。

 自転車に乗ってグラウンド沿いの道を走って、途中で同級生に合流して。


「よう」

「なんだ、不幸君か。朝の事故ってどんなんだった?」

「てめぇは人の不幸を笑うやつか」

「いやいやそうじゃ……って無視して行くんかい」



 まっすぐ国道沿いに走って、後ろから来た人のブレーキワイヤーが突然ぷっつん……。

 あたられて車道に転落。

 そのまま勢いに任せて転がり、ちょうど走ってきていた10tトラックのタイヤを避ける。

 自転車と荷物はもちろんスクラップだ。


「……ほんとさ、なに? この不幸」


 もろもろの手続きを警察署で済ませ、寮の部屋につくころには空は真っ暗。

 そして部屋に入るとしっかりと空間を冷却していたエアコン。

 壁際にはどうも棚から落ちたらしいリモコン。


「電気代どうなる……?」


 とりあえず、エアコンを止めようと、リモコンを拾い上げると落ちた衝撃で故障していたらしく動かない。

 仕方なくカバーを外して応急動作ボタンで停止させる。

 連続した出来事でへとへと。

 何もする気はなく布団に倒れこむ。

 上の部屋が騒がしいが気にしない。


 今日はもう何もない。

 夜が明ければ明日が来る。

 そう思った矢先、部屋が爆ぜた。

 すべてを覆い尽くす真っ白な光、あらゆる音を飲み込む衝撃波。

 彼はこのとき、ついにガス管の破裂まで来たか!? と思った。

 しかし、視界が晴れるとまがまがしい空の下、ただ一人で……。



 人間の運は平等。

 誰がそんなことを言ったのだろうか。

 ちゃんといるではないか、しわ寄せにされている人間が。

 不幸、人はそれを一時の溜めの期間だと言うだろう。

 ほんとうにそれは正しいのだろうか。 

 幸せを勝ち取るための行動すらも不幸の前に閉ざされるのだから。

ただ書きたくなったから書いた。

ただそれだけの文章。

私が書いている作品の中に出てくる誰かさんのことでもあるかも。

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