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5話 色々ありすぎた一日

 王に初めて会ってから既に1年が経過し、俺は6歳になった。


 あの後も偶に会っていたが、大して変わった様子は無かったから、余り気にしなくていいだろう。


 今日は修行を一段階レベルアップさせるとの事で、父上と共に森の奥まで来ていた。


 因みに、お父様から父上と呼び方を変えたのは、6歳の誕生日に父上がそうしろと言ってきたからだ。父上は気分屋だから気分だろう。

 兄上はまだお父様と言ってるしな。


「着いたぞ、ここが新しい練習場だ」


 そこは森の奥深くで、そのあたりだけ木が無く、広場の様になっていた。

 俺はここに来た瞬間どのような修行になるかを悟った。

 広場のところどころに、おそらく森に元々住んでいるのであろう魔物が何体か居た。

 多分修行とは──


「新しい修行は、ここで魔物と戦ってもらう。

 大丈夫だ、この森には低級の魔物しか生息していない。

 あ、一種類大物がいるが……まあ大丈夫だろう。

 1日20匹がノルマだ。種類はなんでもいいぞ。

 この2つのどっちか好きな方を選べ」


 そう言って父上は何の変哲もない剣と木剣を地面に置いた。


 やはりそうだったか。もう修行を初めて1年だ。基礎体力もついたしそろそろ実戦をやらせて本当の戦いを体験させようという考えなのだろう。

 うむ、悪くない考えだ。父上は教官でもしていたのだろうか?

 しっかりしたトレーニングメニューに、ちゃんと実力を見極めて達成できるギリギリの目標を設定してくる。俺が父上に見せた実力ならこのくらいが妥当だからな。

 教育者として逸材だな。まあ、俺には遠く及ばないがな。


 低級の魔物か……。

 周りに見えるのは本で見た容姿と全く同じ、ゴブリンやスライムだ。

 俺は楽勝だが、普通の6歳の子供にゴブリンはキツくないか?1体ならまだしも20体は不可能だろ。1体でも充分不可能だけどさ。

 いや、さっきも言ったように俺の実力を分かっているからだろうな。普通の子にならまだやらせないだろう。

 俺なんか超天才とか言われてるし。やり過ぎたかな?


「ああ、あと帰るのには時間がかかるからあれを使って帰って来なさい。そうすれば簡単に帰ってこられる」


 父上が指差した先には黒い扉が1つだけ、広場の真ん中に配置してあった。


「あれは何ですか?お父様」

「あれは私が作ったワープゲートだ。魔法で屋敷近くのもう一つの白い扉に繋がるから帰りはそれで帰って来なさい。

 白い扉から黒い扉には繋がらないからここに来るときはきちんと走って来るんだぞ。分かったか?」

「わかりました。頑張ります」


 父上はそのまま扉を通り帰っていった。

 あれも魔法か。興味深いな、魔法。でも俺は適性が無いからほとんど使えないんだよな……。

 魔力はかなり多く、有り得ない量らしいからとても勿体無いと父上が言っていた。どのくらいだろうか、有り得ない魔力量。


 前に執事のグリードに聞いたところ、適性とは属性の適性なので、無属性の魔法は使えるらしい。

 他の属性は例外を除き一切使えない。

 ちなみに例外とは魔法道具や魔法陣の事である。


 属性適性が無い人なんてほとんど居ないそうだ。

 出来れば俺も火とか出してみたかったな……。


 さて、無いものを欲しがっても仕方無い。今は魔物に集中しよう。

 広場の大きさは大体縦が50m、横も50mくらいだな。結構広い。

 父上が作ったのだろうか?

 魔物は今見えるのは全部で5体。

 俺は広場の1番端に居る。

 正面の30m程先にゴブリンが5体集まって居る。なにやら話し合うような事をしている。

 鈍感なのか俺に一切気付いて居ない。普通動物とかってもっと敏感なハズなんだが……。

 魔物は違うのかな?


 俺は武器として木剣を選んだが、実は余り剣は得意じゃ無いんだ。

 前世では、銃か素手で戦っていたからな……。

 全く使えない訳じゃないが、剣の腕前は人並みだ。ナイフならかなり得意、と言うよりナイフなら多分、チンピラとかが相手なら100人一気に相手しても勝てる。


 とりあえずこの体でどこまで戦えるか知りたいので、ゴブリン5体ならちょうどいい。


「目標20秒。3…2…1…スタート」


 一気にゴブリンに向かって走り出す。

 そうすると流石に気付いた様でこちらを向く。

 1体前に出て来たな。


 すぐ近くまで近づくと、前に出て来た1体が持っていた木の棍棒を振り上げ俺に向かってきた。5体の中で1番弱い個体のようだ。

 そのまま突っ込むと不用意に棍棒を振り下ろして来たので、スピードを一瞬早め踏み込み、そうすることでよけつつ右手の掌底でアゴを打ち抜く。

 これで脳震盪を起こしそのゴブリンは膝から崩れ落ち地面に倒れた。


 それを見て他の4体は呆然としていたので、1番近くに居た一体の頭部を、左手で持っていた木剣で左上から右下に振り下ろし、頭が落ちた瞬間右足のハイキックで俺の足がゴブリンの顔面にめり込み、ゴブリンの体が浮いて地面に落ちる。


 次に俺の右に居たゴブリンの足に体を回してハイキックであげていた足を叩き込む。

 ゴブリンはそのまま後ろに倒れかけ、俺は倒れかけているゴブリンの顔面に木剣を叩き込み、ゴブリンは勢いよく頭から地面に突っ込んで頭を強く打ち動かなくなった。


 ここまで所要時間9秒。


 残りの2体はやっと状況が分かったらしく、喚きながら2体同時に棍棒を振りおろしてきた、

 片方は左側から、もう片方は後ろからだったので、前に一歩出て棍棒をギリギリで避ける。

 そのまま体を反時計回りに回転させながら左側に居たゴブリンの顔面に木剣を投げつけ動きを止める。


 そして後ろから襲ってきたゴブリンを正面に見据え、棍棒を踏み付けて棍棒を使えなくしてから、そのまま顔面を殴り飛ばしたら、吹っ飛んだので放置。

 右を向き木剣を投げ付けたゴブリンを見ると木剣が目に突き刺さり悶えていたので、顔面を横から蹴り飛ばして気絶させた。


「よっ……とタイムは15秒ってとこかな。この体ならまあまあかな?」


 その後俺はゴブリン達の首を折り息の根を止めた。

 可哀想な気もするが、試合以外の勝負や人以外が相手ならこうすると決めているんだ。

 1度命を賭けて勝負したんだから情けはかけない。前世からずっとしていた事だ。


 さて、あと15体か。色々試したい事があるんだよな…。

 例えば気功とか、こっちの世界でも使えるのか。


 …………使えた。気功が使えると色々便利だから嬉しい。

 とりあえず今日はノルマ達成して帰ろう。

 ここは広いから色々実験が出来そうだ。家の書庫から魔法に関する本とか持って来て無属性の魔法を試してみよう。


 その後俺はゴブリンを5体、スライムを10匹狩ってから帰った。

 あのワープ扉凄い便利だ。普通に空間が繋がっていたからな。

 俺も使えるようになると嬉しいんだが……。心の底からこの魔法が無属性であることを願おう。


「只今帰りました」

「お帰りなさいませリテラ様」


 この金髪碧眼の優男のエルフが執事のグリードさんだ。

風魔法の使い手で、国有数の魔法使いらしい。

 ちなみに年齢は116歳。エルフは400年生きるらしいので人間の20歳くらいだそうだ。

 仕事大好きで、休むことが無い。

 父上曰く、「仕事が趣味だから休みを取らせても、『休んでいる時間で趣味をします』と仕事する」らしい。


「旦那様がお呼びですよ。帰って来たら私の部屋に来なさい、との事です」

「わかりました、有難うございます」


 何の用だろうか。

 父上の部屋は書斎の事なので、2階にある書斎に向かう。


 きちんとノックをする。

「入りなさい」

「失礼します。お呼びでしょうか父上?」

「お前に言う事があったんだ。新しい修行も始めたしちょうどいいだろう。

 言っていなかったが、お前には従魔術適性があるんだ」

「従魔術適性?」


 確か魔物を使役出来るんだよな。魔物の系統適性がある 人間しか出来ない魔術だ。


「ああ。しかもお前は神獣系統が適性なんだ」

「神獣系統!?」

「うむ、100年に1人居るか居ないかの才能だ。下手に言いふらして奴隷商人なんかに狙われても困るから教えてなかくったんだ。

 まあ神獣なんて伝説のようなモノだから大丈夫だろう」


 神獣系統適性なんて………。

 本で見たが、魔物の系統は8つある。

 竜系統、獣系統、スライム系統、植物系統、岩石系統、アンデット系統、昆虫系統、神獣系統だ。


 たいていの人はスライム系統や獣系統などで、いくつか適性を持っている。


 だが神獣系統はさっき言われた通り100年に1人居るかどうかだ。それが俺とは………。

 異世界らしくなってきたな。

 ニホンでは異世界に転生=チート、という常識があるらしいからな。ニホンオタクのトムが言ってた。

 俺も例外じゃないのかな?


 でも神獣なんて滅多に出会えるもんじゃない。

 どうやら俺は例外みたいだ。


「他にも言ってない事があるんだが聞きたいか?」

「あ、はい。教えて下さい」

「お前が知っている通り、お前は属性適性は全く無いから魔法は無属性しか使えない。

 しかし魔力だけなら……100万くらいある。これも下手に漏らしたら狙われるかもしれないから言っていなかった。気をつけなさい」

「ひゃく……!?」


 100万だと!?流石にそれはチートすぎるぞ!?

 確か普通の人は魔力が1000くらいらしいな。1万あればいい魔法使いになる、王族に仕える宮廷魔導師が10万ぐらいだ。

 俺は更にその10倍近く……。

 確かに多いとは聞いていたが多過ぎる!

 なんでそれで属性適性が無いんだ!?どうせなら10万くらいで全適性とかが良かった!


「確かに無属性魔法は強くない。しかし戦い方によれば充分使えるんだから堂々としていなさい。

 だが無能なんて蔑まれるからな……。

 お前が蔑まれるのが嫌なら隠しておきなさい。

 お前の好きにするといい」

「わかりました。では、失礼します」


 俺は執務室をあとにする。

 なんか今日は色々ありすぎて困るな……。

 しかも父上いきなり過ぎる上淡々と話してたから気分で教えようとしただけだろうな。

 従魔術はともかく、早速明日から無属性魔法の練習をしよう。

 どんな魔法があるのかな……。


 1階に降りるとグリードさんがコーヒーを執務室に持って行こうとしていた。

 実はこの世界にもあるのだ、コーヒー。

 実際前世と同じ物が結構ある。

 大体食べ物だがな。


「あ、グリードさん、それ父上に持って行くんでしょう?」

「はい。そうでございます」

「それ終わったら書庫に来てくれませんか?無属性の魔法についての本を集めたいんです」

「わかりました。ではすぐに参りますので少々お待ち下さい」


 これでよし。

 俺は魔力を放出したりぐらいならする事が出来る。前に魔法ってどんな感じか考えていて、グリードさんに聞いたらまずは魔力を放出したり出来るようにしましょう、と言われなんとなくやっていたら出来た。

 まだ放出するだけだが、魔力を身体に流して身体能力を強化したり、身体に纏わせたり出来るようになるらしい。

 試してないからよく分からんが。

 早く出来るようになればいいなぁ………。


 その後グリードさんに手伝って貰い本を集め、日が暮れるまで読み耽った。

 その日は他に特に何もしなかった。


「さあ、明日から魔法の練習だ………。楽しくなりそうだ」


 ベッドに入り、俺はそう呟いて目を閉じた。

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