22話 遂に
「離れろっ!!」
バアルの腹を蹴るが、剣の腹で受け止められる。だが、力では勝っていたようで、バアルの体は後ろに飛んでいった。
「ぐぅ………『ヒール』」
傷口にヒールをかけるが、血の勢いが弱まったようにしか思えない。
しかし、神の思し召しか何かは知らないが、もう一度ヒールをかけると、妙な違和感に気付く。
込められる魔力の量が増えている。『ハイヒール』が使えるようになったのだ。
すぐさま傷口にハイヒールをかけると血は止まった。
バアルはむくりと起き上がり、冷静にこちらを見つめて、いや、観察している。油断などといった言葉からかけ離れた姿である。
「油断大敵、か………高い授業料だな、センセー」
「………出来の悪い生徒には、罰を与えるのが当然だ。授業料も高くするさ」
目線はバアルから逸らさず、左腕を回収してポケットに入れる。恐らく、もう戻る事は無いだろう。
ため息を吐く。油断大敵。まさにその通りである。相手が悪い?それはただの言い訳だ。
「…………確かに俺が悪いが、それを棚に上げて、一方的にお前が悪い事にして、やり返しても構わないか?」
「何を言っている。戦いとはそういうものだろう?敵の事情など関係ない。自分のために、自分の目的のために、自分の欲求のために戦う。それこそが正しい。戦いに哀れみや同情など必要ないだろう」
確かに、と口から言葉が溢れた。そして、その言葉を聞いてリミッターが外れた。そのリミッターの名前は、『理性』。限度という概念が頭の中から消え去り、最初に思った事は単純明快なものだった。
「決めた。お前は原型が人のカタチだと分からなくなるくらいにして殺そう。異論は無いよな?
何で最初からそうしなかったんだろうか?やはり、ぬるま湯に浸かりすぎていたか。腕一本、犬のエサにせねばならぬほどに鈍ってしまったな」
「……………お前は一体、何者だ?」
「なぁに、ただのしがない貴族だ」
そう言った瞬間に、殆どの魔力を身体強化に注ぎ込んだ。およそ人とは思えない力が使用可能となる。
そして、一秒と経たないうちに、俺の右手にはバアルの左腕があった。バアルはうつ伏せに倒れている。
「ぐうぅ………な、んてスピード………それに、パワーもある………」
「まだ本気じゃないからな」
バアルの左腕目掛けて跳んだ俺に、バアルは剣で応戦したが、俺は剣の腹を左足で蹴り難なく回避する。そして残った右足でバアルの顔面を蹴る。しかしそれを左腕でガードするバアル。その左腕を俺は掴み、引っ張ってバアルの体を近付ける。右手を離してダガーを抜き、バアルの左肩を斬りつける。半分くらいが斬れたところで、ダガーを鞘に戻す。左側から剣が斬りつけて来るので、しゃがんで回避する。髪が数本切れる。そのまま跳び上がり、塞がりかけている傷口に蹴りを入れて無理やり開かせる。バアルが呻く。そのまま左腕を取り、思いっきり背中側に引っ張り、傷口の反対側から蹴りを入れてもぎ取った。そして今の状態に至る訳だ。
「力無きものには幸を、力あるものには不幸を、そしてそれを妨げるものには死を与えよう」
「…………お前は神か何かのつもりか?」
「いいや、ただの心構えさ。貧しき人には温かい物を食べさせる。そんな貧しき人を見捨てたり、そうさせて私腹を肥やすような者には罰を与える。その私財を盗み、貧しき人に配ったりな。そして、それを妨げる者、つまり悪事に眼を瞑り、あろう事かその悪を潰す事を阻止しようとする。そんな奴は……死刑だ」
「…………極端で、傲慢だ。結局、それら善悪や、貧富の判断はお前がする。ただの自己満足じゃないのか?」
バアルは冷たい表情のままそう言い放つ。まるで俺の言っている事は間違っている、とでも言いたげな表情だ。
「その通り、自己満足だ。だが、別に俺はそれで構わないと思っている。
結局、人間なんてみんな、傲慢で醜悪で非道で残虐で欺瞞で欲が強くて周りを見下していて服従させたくて人の不幸が大好きで………未完成なんだよ、人間は。
ただ、偶に例外がいる。何にでも、例外ってのは居るもんだ。そいつらには、邪心ってのが少ない。無いわけじゃない。そんな奴は居ないと言いきれる。
邪心が、他と比べたらかなり少ないんだ。そしてその代わりに光を持っている」
「…………光、だと?」
「ああ。醜い人間はみんな、自分の醜さから目を逸らす。だからその奥にある光に気付かない。それを疎ましく、羨ましく思って生きていく。
だが、醜さに正面から立ち向かう奴らもまた存在する。そいつらは、身が焦がれるような思いを味わいながら、暗い底に潜って、光を手に入れようとする。…………どれだけ潜っても、届かないんだがな、結局は」
「…………お前は、届いたのか?」
俺はバアルの理解力の早さに驚きつつも、しっかりとその問いに答えた。
「いいや、全然。外から見ると見えてるんだがな、潜ってみると、何処にあるか全く分からなくなっちまう。手に入れようともがけばもがくほど、光は遠くなる。悲しいモンだよなぁ…………。
ま、それはもういい。話を戻そうか。
とにかく俺は、自己満足をするために、自分の理念に基づいて生きていく。
アリスが助けを求めている。そして、それを助けられるのは俺だけだ。そのために向かっている途中でお前に妨害された。
つまり、俺にはお前を殺す理由がある。文句言うならあの世で言いな」
「な…………ッッ!!」
瞬時に加速し、バアルに肉迫する。俺の前蹴りは剣に止められる。そのまま体を回転させて左足で顔面を目掛けて蹴りを放つ。ゴッ、と鈍い音がしてバアルのこめかみに俺の足がぶつかる。しかし、バアルがよけきれなかったのではなく、よけなかったのだ。空中で体勢が崩れている俺の首に剣が向けられる。俺は瞬時に首にアーマーを作り出す。首が落ちるのは避けられたが、地面に叩き付けられてしまった。
体がバウンドして、宙に浮かぶ。視界に入ったのは、バアルが剣を振り上げている姿。それを見た瞬間、指をバアルの手に向けてショットを放つ。放たれた魔力の弾丸はバアルの右手を穿った。苦痛に顔を歪め動作を止めるバアル。俺はその隙に着地し、離れる。しかし手を休める事はしない。離れる俺を追撃しようとしているバアルに、『マシンガン』をお見舞いしてやる。急所は防がれているが、脚や肩などには被弾している。まあ、それもすぐに治ってしまうのだが。
「くそっ、やっぱり厄介だなその能力!」
「お前の……ぐっ!?……魔法も、だっ!! 」
徐々に近付いてくるバアル。もちろん近付かせるつもりは無いので、俺も徐々に後退する。均衡した状態だが、それはすぐに崩れる事になった。バアルの両手に被弾し、バアルが剣を落としたのだ。俺はそれを見てすぐさま指先に魔力を込める。バアルは、ついに再生能力が限界を迎えたのか、両手が、いや、被弾している場所がほとんど治っていなかった。
「死ね!『圧縮魔弾 (フルデストロイショット)』!!」
放たれた小さな魔力の弾は、バアルに触れた瞬間に人一人は軽く入れるくらいの球体に変化した。バアルはその中に飲み込まれた。
中では、圧縮された魔力が暴れ狂い、押しつぶし合っている。その中に入れば、生物であれば肉片になってしまうのには1分とかからないだろう。外側はパーフェクトキャッスルでコーティングしてあるので、少なくともいきなり壊れて中の魔力嵐が飛び出す事は無いだろう。
フルデストロイショットが消え去った場所には、既に何も残っていなかった。魔剣も、塵になってしまっていた。
「疲れた…………くそ、片腕になっちまったな………」
傷口を眺めながらそんなことを呟く。
流石にこうもずっぱりと腕が切断されていると、魔法でも治せないだろうとしか思えない。そもそも、部位欠損を治せる魔法など聞いたことが無い。
「ご主人様ぁーーーーー!!!」
「ご、ご主人様っ!!」
どさっ、と後ろに倒れ込んで仰向けになると、2人の声が聴こえてくる。もちろん2人とは、ブラスとウルの事だ。
2人はアニマルモードのままこちらに向かって来ていた。俺のそばで止まって、すぐに人間形態 (ヒューマンモード)に戻った。
「ご主人様、それ…………」
「左腕が…………………」
「………ああ、斬られちまった。油断大敵、だとよ。高い授業料になっちまったな」
ブラスは傷口を見ながら、今にも泣きそうな顔をしている。ウルは、茫然自失といった様子だ。よほどショックだったのだろう。
「あ、あぅぅ………ご主人様ぁぁ…………」
「…………うぅ………」
「2人とも、取り乱しすぎだ。俺は死んだわけじゃないんだから。心配してくれてありがとう。だから泣きやめ、な?」
そう言うと、2人はゴシゴシと目元をこすって涙を拭き、俺に顔を向けた。
「ご、ごめんなさい。よく見たら血も出てないし……慌ててました」
「ご主人様、本当に………大丈夫、なの?」
「ああ、命に関わりはしない。まあ、これから不便にはなるだろうがな。
よし、じゃあ早速歩を進めるか。いくぞお前ら」
「ちょ、ちょっと待って下さいご主人様!!」
歩き出す俺をブラスが引き止める。くいっ、と袖が引っ張られ、そちらを見ると不安そうな顔をしているウルが居た。
ブラスは少し悩んでから、話し始めた。
「ご主人様、いくら凄いご主人様でもそんなに酷い怪我をしたんだから休息を取らないといけないと思います!!無茶しちゃいけませんよ!」
「………アリスが待ってるからな、早く行かないとだめだ。それに、怪我も大丈夫だって。言ったろ?」
「だったら、せめて私の背中に乗って下さい!!ご主人様を走らせる訳にはいきません!!」
必死に食い下がるブラス。それだけ俺の事を大事に思ってくれているのだろう。とても嬉しい。
ブラスは引き下がりそうには無いし、ブラスが引いてもウルが出てきそうだ。怪我は本当に大丈夫だが、戦いで疲れた事は確かだ。しょうがない、少し過保護すぎる気もするが、ここはブラスに従っておこう。
「分かったよ……じゃあ頼む、ブラス」
「はい!」
満面の笑顔を見せるブラス。すぐにアニマルモードになり、催促するように蹄で地面を叩いた。
ブラスの上に飛び乗り、ウルを引っ張り上げて俺の前に座らせる。
「よし、オーケーだ。全速力で駆け抜けてくれ。ただ、無茶はするなよ?」
「頑張って………なの」
「了解です!」
地を蹴り走り出すブラス。周りの景色は、何も無く、一本の木すらも生えていない。魔物たちも、俺とバアルの戦闘の影響か、見渡す限りには一体の魔物の影すら見えなかった。流石は超広大な双子平野だ。
ポケットから丸い石のようなものを取り出す。色は透き通った青だ。もちろんただの綺麗な石ではなく、れっきとした魔道具である。魔力を込めると、ふわふわと浮かび上がり、ブラスの前に向かって行った。正面ではなく、少し右側だ。
「ご主人様………あれ、何?」
「行きたい場所がどの方向かを示してくれる魔道具だ。それには俺達が向かっている双子平野の反対側の街の方向しか示さないように設定してあるがな。
ブラス、それが自分の正面に来るように走れ。今は少し左にズレている状態だな。理解出来ただろ?」
「もちろんです!!方角なんて考えてませんでしたよー、流石ご主人様ですね!」
これが無いと、周りに目印になるような物、例えば木なども一切存在しないこの場所では遭難してしまう。ただまっすぐ進み続ければいいと思うかもしれないが、人間は目印などが無いと意外とまっすぐ進めないのだ。いくらまっすぐ走っているつもりでも実際には同じ場所をグルグル回っている可能性が高い。樹海などではよくこのような事が起きる。
「まあ、無くても何とかなりはしたけどな、無いよりは有ったほうがいいだろ」
太陽の位置や星の位置など、方角を把握する方法は幾つかある。いざとなったら、テンタクルスなんかで自分たちをぶん投げればいいしな。そんな暇は無いのでしっかりとこの魔道具を買っていたのだ。
「確かに…………」
「それはいいから、とにかく集中して最大限度で走れ。
今日は早めに野営を行う。双子平野を抜けるのは3日後になるだろう。スローペースになり過ぎるのはいかんが、あまり急ぎ過ぎても事を仕損じてしまう。ちょうどいいペースで行くべきだ」
予定では、あと3日で双子平野を抜けて、その後7日でイリスに到着する。余裕を持って8日だろうか。
イリスでは、色んな事をしなければならない。まず第一にアリスの奪還。死神に目的も問いたださねばならない。次に、イリスがどのようにしてこの件に関わっているか調べる。場合によっては、イリスを滅ぼす事も視野に入れなければならないかもしれない。極力それだけは避けたいが。
最後に、リザルトさんからの依頼だ。託された手紙をイリスに居る『とある人物』に渡して欲しい、との依頼だ。場所などは一切分からない。特徴は聞いているが、難しい仕事だ。こんな時に何故?とも思うが、どうやらその人は間者らしく、イリスが攻めて来た時、またはイリスに攻める時に情報を流す人物らしい。手紙の内容は知らないが、まあ、大体理解はできる。
もちろん最優先なのはアリスの奪還だ。急がねばならない。
「ブラス、済まないがもう少しスピードを上げれるか?」
「大丈夫ですけど、揺れが酷くなりますよ?いいですか?」
「ああ、構わない。ウルも大丈夫だよな?」
「………平気」
「よーし、じゃあ行きます!しっかりと掴まってて下さいね!」
少しずつスピードを上げていくブラス。確かに揺れが酷くなったが、このぐらいなら何ともない。
俺はずっと、ウルと一緒にブラスの背中で揺らされ続けていた。
──────────
時は少し遡り、バアルが召喚された頃のイリスの前にある草原の中央にて。
「………召喚されたか」
「……………………何が?」
そこには、一人の男と魔法陣が刻まれている檻に入った少女の2人が居た。
男は、黒ずくめであった。唯一、髪色のみを除いて。
黒いフルプレートアーマを身にまとい、黒い巨大な鎌を肩に乗せ、底の見えない真っ黒な瞳を持ち、それら全てとまったくの対称である真っ白な髪を持ち上げて後ろに流していた。檻の横に立ち、真剣な表情でどこかを見つめている。そこには一切の緩みや優しさなどは存在せず、まるで獲物を狩る瞬間の動物がみせる野生そのものを表現しているかのようであった。
少女は、美しい橙色の髪を肩まで伸ばしており、目は透き通るような蒼である。顔は端整な顔立ちであり、将来はかなりの美人になるであろう事が予想される。服は、麻のシャツにズボン、その上から黒いローブをまとっている。表情からは怒りが見える。その怒気をぶつけながら、男を睨んでいる。
男はちらりと少女を見てから目線を元に戻し、口を開いて答えた。
「それを言う必要は無い」
「………………ケチ」
「……………………」
沈黙が続く。どちらも別に会話をしようとは思っていないらしく、そこに気まずさなどは存在しない。
この男こそが、『九神』三位 死神ことグレイブ・サーバーである。そして少女は、トロハ王国の第三王女であるアリス・アヴァラムだ。2人は誘拐犯と被害者の関係であり、馴れ合う必要は無いし、そもそも馴れ合おうとはどちらも思っていない。
アリスには痣や切り傷などはほとんど無く、暴力等はされていないと分かる。食事もきちんと貰っているようで、健康そのものと言っていい。
唯一、握るとちょうど拳の先になる指のつけ根から血が出ている。恐らく、檻を殴りつけてできた傷だろう。しかし、檻には傷一つ付いていない。
アリスは特異体質であり、異常な怪力を持っている。ただの檻ならばパンチ一発で破壊し脱出することが可能だろう。しかし、この檻が壊れていない事や、魔法陣が施されている事から、この檻が普通ではない事が分かる。
「ねえ、ボクはいつまでこうやって捕まってればいいの?」
「………俺の目的が果たされるまでだ」
「もし果たされなかったら?」
「…………お前はイリスの捕虜になる、それだけだ」
「………何それ」
アリスは怯えた表情を見せた。まだ子供でも王族だ。人質としての価値は充分にあるし、戦争になって自国が負けてしまえば、王族が皆殺しにされるのは明らかである。それらをすぐに理解していた。いや、理解してしまった。自分の先が見えてしまったのだ。
「い、嫌だよ………ボクはまだ死にたくない!!やめてよ!!!」
「…………別にそれを決めるのはイリスの連中だ、俺に言っても意味の無いことだ」
「違う!ボクをイリスに渡すのをやめてって事だ!!」
「無理だ。契約だからな。それに、目的が果たされたなら、お前はどうせ開放されることになる。それを祈っておけ。…………話は終わりだ」
「……………………」
へたりこみ、項垂れるアリス。目の前にいる人物は話が通じないし、交渉すらも出来ない。逃げる事などは不可能だ。
この男の目的など知った事ではないし、そもそも何故それに自分が使われているかが分からない。
その恐怖と重圧と不安は、とても子供が耐えられるようなものではない。遂にアリスは泣き始めてしまった。
「うぅ………なんで………ボ、クがごんな………ヒック………うぅ…………」
「………………………」
グレイブはアリスに目もくれず、ずっと遠くを見ている。
辺りには、アリスのすすり泣く音と風の音しかしなくなった。
───────
「そろそろ行くぞ、準備は大丈夫だろうな?」
双子平野での初日の野営を終え、2日目の朝。夜中は3人でローテーションをして見張りを行った。魔物は俺が見張り番をやっている時に一回だけ来たが、ウルやブラスを起こすのもしのびないのでショットでさっさと撃ち殺してアナザーディメンションで回収した。それ以外には大した事は無かった。
「オッケーです!」
「………大丈夫」
「よし、じゃあ出発だ。既に半分近く進んだはずだから、今日はそんなに急がなくていいぞ」
普通の馬車ならば双子平野を通過するのには、魔物などの要素も入れれば10日はかかる。それを3日で行けるのは、かなり機動力があると言えるだろう。
アニマルモードになったウルに跨り、前を向く。ポケットから例の魔道具を取り出してから魔力を流す。またふわふわと浮かび上がり、ウルの前で止まる。
「よし、行くぞ。今日は魔物が多いみたいだからな、気を付けろ」
「本当だ………ちょこちょこ見えますね」
「ん…………分かった」
ブラスが言ったように、少し遠い場所に魔物の姿を確認することができる。走っている最中に攻撃されたら面倒だ。できるだけ相手の射程距離内に入る前に仕留めていこう。下手にウルに怪我をさせるわけにもいかんしな。
地を蹴り加速するウル。たなびく銀の体毛は、指で梳いても引っかかる事はなく、とても美しい。
「ウルはこのまま集中して走り続けろ。細かい段差などに気を付けろよ。ブラスは後ろを警戒しろ。追ってくる魔物が居たら、出来るだけ無傷で無力化するか、足止めをしろ。俺は前の魔物を処理する。分かったか?」
「分かりました!」
「……………了解」
2人ともすぐに頷き、それぞれの仕事の分担を終わらせる。こういう事はしっかりとはっきりさせておかないと、大きなミスに繋がってしまう。ミスが起きてからでは遅いのだ。
ゴム弾で意識を刈り取り、心臓を一発で貫く。そしてすぐさま死体をアナザーディメンションで回収。それを先程から続けている。
ブラスにできるだけ殺さずに、と言ったのはブラスはアナザーディメンションなどを使えず、殺すと死体を放置しなければならなくなるからである。それはその魔物の命に対する冒涜だと俺は思うし、死体の血の匂いに魔物たちが誘われて大量の魔物が来ても困るからだ。
その日も、大したことは起こらずに終わった。まあ、もちろん無い方がいいのだが。
翌日、昼過ぎに双子平野を抜けて街に到着した。結局、双子平野での大きな出来事と言えばバアルとの戦闘くらいになってしまった。
少しランクの高い宿を取って、銭湯に行く。銭湯も、ある場所にはあるらしい。家風呂なんかは流石に王族や、一部の有力な貴族が所有しているぐらいだ。
翌日からは、大体が野営だった。ちょうど野営をしようとしたら村が見えて、空家を貸してもらった事は一回だけあったが、それ以外はほぼすべて野営だった。食事は相変わらず携帯食料だ。魔物の肉などならかなりあるのだが、調理するための火が存在しない。生でかぶりつくわけにもいかないので、しょうがなく不味い携帯食料をもそもそと食べていた。
そして、双子平野を抜けてから7日、遂にイリス王国が視界に入った。少し離れた丘の上で、イリス全体を見渡す事ができた。
イリスは山のふもとにあり、巨大な城壁で囲まれている。山を少し登ったくらいの場所に巨大な城が建築されていた。純白の城は荘厳さと美しさを兼ね備えており、素晴らしいの一言だった。街は城から放射状に拡がっている。全体的に白い建物が多い。城も真っ白だ。
国はかなり広く、城壁の外には木一本も生えていない、見晴らしのいい広く大きな草原がある。これなら敵が来てもすぐに分かるだろう。そのさらに外側には森がある。これは、かなりいい地形だな。
草原を眺めていると、黒い点を見つけた。よく見てみるとそれは人で、黒い甲冑と黒い鎌を持っていた。
「見つけた………ウル、全速力で草原まで走り抜けろ!!」
「りょう、かい!!」
ウルが急加速し、周りの景色が流れる。1分とかからずに草原に降り立つ。
そこには、全身黒ずくめの男、死神 グレイブ・サーバーが立っていた。その横にはアリスが檻に閉じ込められていた。腫れた目もとから泣いていた事がわかる。俺は思わず叫んでいた。
「死神ぃぃい!!」
「やっと来たか、リテラ。さあ、最後の試練を始めるぞ」
「…………てめぇは必ずこの手でぶん殴る!!」
俺は死神に向かって言い放ち、地を蹴り加速。死神へと飛びかかった。
投稿遅れて申しわけありません!色々ありまして遅れてしまいました。そのへんは活動報告に書いてあります。
ではまた、次話を楽しみにしていて下さい。頑張りますので。




