団長登場1秒前。(ぇ
「離してっ、離してったら」
最初に聞こえた悲鳴よりはやや幼さを残した声が馬上の副騎士団長の耳に入ってきた。少し遅れて目に入ってきた光景は、トリディアにありふれた平穏な午後の一時などであるはずがない。
筋肉質の男に手を引かれてゆく少女は明らかに拒絶の反応をしていたし、近くの壁には最初の悲鳴の主らしい娘がもたれかかっている。ヴァルクに気が付いた男は、抜剣して騎馬で駆けてくる邪魔者に無言で敵意の視線を向けた。
「死に急ぐか?」
些少は抑揚した声に明らかに妨害者に対する怒りが混じっている。もっとも、ヴァルクがそんな恫喝で引き下がるとは思っていなかったのだろう。男は、無言のままあごをしゃくった。
それが合図であった。立ち並ぶ家々の間の路地から人影が躍り出る。
数にして約二十のそれは服装こそ一般人の着ているような代物であったが、おもいおもいの武器を持ち、眼光も構え方も明らかにありふれた市民のものではなかった。
「相手をしてやれ」
敵意と殺気を瞳に宿し、男の声を受けてヴァルクを取り囲み輪を作る。
男の方はそこまで確認して不愉快な邪魔者であったと思われるものから背を向けた。包囲網を越えて追ってくることは無いとふんだのだろう。
暴れる少女を無理矢理肩に担ぎ、余裕が出たのかちらりと振り返る。実際、いくら腕が立つと言ってもこの人数をヴァルクが一人で突破するのには無理があった。輪はさらに狭まる。
「くっ」
少年は剣を握り直し、地面と水平に構える。強引だが強硬突破しか手段はないと判断し、その為の構えを取った、ただそれだけのことではあるが、成功する可能性は低い。
「ゆくぞっ」
躊躇無く、気合いと共にヴァルクが踏み出そうとした瞬間、一陣の風が吹いた。
……リレー小説はここで途切れている。
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