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43話 『魔女』と『星喰い』。

 木製のベッドに墨桐を寝かせ、俺は一息ついた。


 桜倉サクラグラ邸。いつか魔女屋敷と俺が呼称した家へと気絶した墨桐を運び入れ、俺達はようやく大きく溜息を吐くことを許された。ハルカゼが冷たいタオルを用意すると言って部屋を出たため、今この部屋は俺とアリシアが番をしているという状態だ。

 アリシアはカーペットの上に座ったまま、居心地が悪そうに周囲をキョロキョロとしている。

 ……無理もない。幾千幾万の蔵書が几帳面に本棚に並ぶその部屋は、ある種異様な圧迫感があった。

 ベッドがあるということは、ここはハルカゼの部屋なのだろう。それを証拠にベッドの横にはハルカゼが学校で使っている鞄が掛けられた机があり、読みかけの本に栞が挟まっていた。

 手持ち無沙汰になり、俺はその本の表紙をなぞる。日本語ではない文字で書かれたその本は、何度も読みなおしたのだろう、装丁の端々が綻び掛けている。


「……凄いな」

「そうでありますね……皇国の城内図書館に雰囲気が似てるでありますよ」


 成る程、言われてみればこの部屋の雰囲気は俺やアリシアが世話になった皇国の城内の空気に似ている。どこか二本離れした西洋の空気漂うその空間は、異世界のどこかと言われても信じられる程現実離れした部屋だった。


「父母が、魔術師だったんだってよ」

「……では、ハルカゼ殿が高位魔術師ハイ・ウィザードのクラスであるのは、そのせいでもありましたか」

「机上で、レベルを上げきる程の本の虫のことを、ちょっと舐めてたな」


 レベル99の高位魔術師ハイ・ウィザードなど、簡単になれるものではない。

 異世界でも指を追って数える程しかいなかったはずの存在を生み出したその部屋は、やはりそれなりの威圧感を俺たちに与えてきていた。

 その威圧感から逃れるように、ベッドの脇のこれまた木製の窓に近寄る。

 そこから外を見ると、空にはこちらに向かってゆっくりと突き進んで来ている『隕石』が見えた。俺は大きく溜息を吐く。


 ――冗談みたいな話だが、今回俺達が相手をしなければならない『世界の危機』は、あの空に浮かぶ巨大な『隕石』であるらしい。


 まだ、普通の人間に見えるような状態ではない。

 見えているのであれば、誰かが大げさに騒ぎたて、俺達が気づく前から大きな問題として取り上げられることは間違いなかっただろう。例えば勇者であったり、神剣使いであったり、高位魔術師ハイ・ウィザードであったり、そういった特別な人間しか、まだあの落下物には気付けていない。


 理由は、こちらの世界に召喚されきっていないからだ。

 まだあの『隕石』は異世界に存在があり、その巨大な質量を徐々にこちらの世界に送り続けている。

 全ての召喚が終了した時点で、こちらの世界に影響が波及し、一気に破壊を始めるようなそんな存在なのだろう。

 そうなればあの大きさの『隕石』がこの星と直撃を起こし、それは正しく『世界の危機』として世界を終わらせることになる。

 ……ついにこの世界もドラゴンを倒す冒険譚から最後の幻想を描く物語に転換したか。ちなみに七の話だ。

 あっちが合併したからって、こっちも合併されても困るんだが。



 認めたくない現実を前に逃避をしていると、ドアが二度ほど叩かれ、返事を待たずに木製のドアが開く。

 ハルカゼかと思いきや、そこには知らない女性が立っていた。どこかハルカゼに似ているその女性は白衣にミニスカートという女教授ルックで部屋の中に入ってくると、俺のところまでつかつかと歩いてくる。

 何だ、ハルカゼの姉か? ご家族の方か? いや、両親はハルカゼの小さいころに居なくなったと聞いてたはずだが。

 謎の女性は俺の上から下までを舐めるように見ると、ニィと口の端を持ち上げて笑った。この手の笑い方をする女性を相手にして碌な目にあったことがない俺は身構える。


「――へえ、結構男前捕まえてきたんだね、ハルカゼは」

「……お邪魔してます」

「いいよ、楽にして。客人は持て成すのが『魔女』の流儀だから」


 言いながらハルカゼの学習椅子を手で引き寄せ、そこに腰掛ける。

 魔女と、その女性は言う。確かに年齢的にも外見的にも魔女っぽいが。ハルカゼの十年後がこうなると思うと、あいつの胸は晩成型なんだろうなと思うくらいに。

 俺はなんとなく相手のクラスを確認しようと思って目を凝らすが、その女性は俺のその視線の変化を読み取ったのか、やはりニィと笑ってから足を組み替えた。


「女性を、そんな目で見るものじゃないよ、葛切セトくん。出会い頭の相手のクラスを見ておきたいという、君の用心深さに免じて不問としてあげるが、出来れば一言断りを入れて欲しかったな。そして、見えないだろう、一応こちらの世界でも、ジャミングを入れているから」


 ……俺は、半身を下げる。

 横目でちらりと確認するが、ベッドに寝ている墨桐のクラスやアリシアのクラスはしっかりと見えている。

 だが、その女性の額には、『クラスとレベルの表示がない』。本人が言うには、それはジャミングを掛けているからということだが……俺は相手の出方を伺って胸元のシャーペンを意識した。


「自己紹介は済ませたつもりだったが、その様子ではワタシの存在をハルカゼから聞いていたわけではないようだね。で、あれば、今回この屋敷に訪問したのもワタシに助言を求めてではなく、単に仮宿として使いたかっただけということか……」

「いや……何が何やら。ハルカゼからは何も聞いてなかったですし、墨桐を寝かせる場所が欲しくて……お邪魔をしていたつもりなんですけど」

「そうか……だったらワタシは、必要のないでしゃばりをしようとしたということになるな。求められてもいないのに、ちょっとワケありの人間っぽく登場し、したり顔でキミの前で足を組み替えたわけだ。いかにも全てを知っているかのごとく、『魔女』なんて自己紹介で自分を分かってもらった気になって」


 女性は納得するようにポンと手を打って、俯いて顔を手で覆う。



「――今、死にたいくらい恥ずかしいんだが」



 耳まで赤くなって、小さく震え出す魔女がそこに居た。

 ……何この人。恐らく年上だけど可愛いとか思ってしまった。


 俺は話の腰が思いっきり折れた音を聞きながらその女性に言う。


「……いや!? いいよ!? 別に流れ出来てたから自己紹介しろよ!」

「……そ、そうか。今ワタシは、登場から印象づけようと思ってスベった、最高にイタい女だと思われていないか? 大丈夫なのか、葛切セトくん」


 最高にイタい女とまで思ってない。正直イタい女くらいには思っていたが、大丈夫だと初対面の女性を励ます。

 何で俺、桜倉邸で誰かも分からない女性のフォローしてるんだ? しかも『世界の危機』が後ろから迫ってる状況で。


「そうか……じゃあ、改めて自己紹介をしよう。……ワタシの名は、桜倉チカゲ。ハルカゼの祖母をやっている」

「……祖母!?」

「いいリアクションをするじゃないか。キミがハルカゼに選ばれただけのことはあると言える」


 いや、俺は別にいいリアクションをするからこちらの世界に召喚されたわけじゃないが。

 だが、そんなリアクションにもなるだろう。……言うに事欠いて祖母ときたか。そういえばハルカゼは祖母と二人暮らしだと言っていたような気がする。

 『木製の家に住む祖母』を想像していた俺にとって、目の前のどう見ても二十代前半にしか見えない女性は、記憶の上書きに時間を必要とするほど結びつかない存在だった。


「これでも、数十年は魔女をやっているからな。外見の一つくらいは容易に誤魔化せるといったところだ。キミの居た異世界ではそういうのは珍しいことだったのかな。捨虫の法は魔術を修める者にとっては『絶対物質』『生命の創造』に並び、最終目標の一つだと思うが」

「……もしかしたらあったかもしれないが、生命と脳に関する研究にはある程度の制約があったから……一般に実用化されたりはなかった、と思う。……思います」

「いいよ、砕けた言い方で。今更この歳で他人に敬意を払われたいとは思わない。成る程、キミがいた異世界はそれなりに魔術という万能性に対してきちんとした法律で統制が取れていたようだね。正しくそれが『法』として人々を律し、人々に律される程度には……。ああ、済まない、歳を取ると世間話に枝葉が生えてしまう、今キミ達が知りたいことを伝える存在であろうと思ったはずなのに、ワタシの話ばかりをして済まないね」


 女性……チカゲさんはふう、と溜息を吐いて髪をかきあげ、ハルカゼと同じ瞳の色で俺を見てくる。

 どこからどう見てもハルカゼの祖母という名称と結びつかないが、少なくとも勇者の目から己のクラスを隠す程度には練達の魔術師であることは確かだ。助言を貰えるというのなら喜んで貰いたいところである。


「……チカゲさんも、見えてるんですか」

「見えているよ。正確に言うなら、見えていた、だけれどね。魔女や魔術師が他人よりも感知能力に優れていることは、ハルカゼから聞いているだろうから、ハルカゼよりも高位の魔術師であるワタシは、キミ達が気づく前からアレを見ることが出来たよ。だから、キミ達が知りたいこともある程度は教えることが出来る」

「……じゃあ、ストレートに聞かせて欲しい。あれは、何なんですか」


 チカゲさんは少しだけ目を伏せ、額を二回指で叩いてから言う。


「――見ての通りだろうね。世界を食い散らかす大質量隕石、というのが正しい。ただ、普通の隕石と違うのは、あの『隕石』は己の意思で星を砕こうとしているところにある」

「己の意思、ってことは……あの隕石は生きてるんですか」

「生きているというのが、生物であるかという問いであるなら、違うと答えよう。あれが複数の鉱物が合わさって出来た岩石であることは間違いないし、そういう意味では完全に物質だよ。だが、キミなら理解は出来るだろうが、何も意思というものは生物にのみ宿るものではない」


 言いながら、チカゲさんは俺の胸元を見る。

 そこで黙しているシャーペンは、元は人格を持った神剣だった。生き物として代謝をしているわけでもなければ、魔力を使わず動くことも出来ない神剣達は、生きてはいないが意思のある代表のようなものだ。


「ワタシが見るに、それほど高尚なものではないようだけれどね。例えて言うならばアレは指向性を持っているだけだ。こうあれかしと言う何者かの意思を以って生み出された、意思そのものの具現と見る方が正しい。己の欲望によって世界を滅ぼそうとしているのではなく、世界を滅ぼそうとしているから世界を滅ぼすのだよ」


 その在り方は、魔王が自らを語った『魔王』や他者の願いを叶えることだけを目的に生み出された『願望器』の生き方と似ている。

 成る程……それと同列に考えるとするなら、あれが『世界の危機』であることにも納得出来た。世界を滅ぼすために世界を滅ぼすだけの、いわば災害のような存在があの『隕石』なのだろう。


「今はまだこちらの世界に具現をしていないが、確実にその世界を滅ぼすことが出来る程の距離まで近づけば、あれは容赦なくその星を喰らい尽くす。そうして、この世界から主観をなくすことで、世界自体を終焉に導くのが、あの隕石の真なる目的であるのだろうな。――ワタシは、その目的に着目して、アレを『星喰い』と名付けることにした」


 ……星を喰う『世界の危機』。

 誰にも気付かれないように静かに這い寄り、人がその存在に気付いたときには全てを終わらせている、この星にとっての脅威。

 俺は、あるいは俺達は……今回そういうものを相手にしていかないといけないらしい。


 静かに頷くと、チカゲさんは何かを納得したように大仰に頷いた。


「……やはり、ダサいか? ワタシのセンスは……」

「いや、そういうことを考えて沈黙してたわけじゃないから。いいんじゃないですかね! 呼び名なんか何でも!」

「知ってはいたんだ、もしかしたらワタシのセンスは若者に受け入れられがたいくらい古いのではないかと。だが、それを認めるのは魔女としても中々に難しいことでな……や、やはり横文字を入れたほうがいいか……?『ザ・エンド・オブ・スター・改』とか」


 そっちの方が数倍ダセえ! Endの前に付くTheは『ジ』だろうが! しかもなんで初発から改付いてんだよ!


「……あの『星喰い』……俺達で、どうにかすることは出来ると思いますか?」


 俺がその名称をわざわざ強調して気を使って尋ねると、少しだけ嬉しそうな顔をしてからチカゲさんは俺の顔を見る。


「……出来る出来ないで言うなら、出来るだろうと思うよ。キミはきっと出来る出来ないではなく、やるかやらないで動くタイプの人間に見えるからね。そういう人間の努力は得てして実るものだ。幸いにしてキミのことを助けてくれる人も、キミの周りには多いだろう。だから魔女はそれを必ず出来るという保証ではなく、出来るかもしれないという可能性に留めて、キミの背中を押してあげるよ」

「あ、あの……お話の途中申し訳ございません。アリシア・ファイルカスタムと申します」


 今まで黙って聞いていたアリシアが口を挟んでくる。

 片手を上げて身を乗り出すと、チカゲさんはそれに先を促すように頷いた。


「……チカゲ殿は、お手を貸していただけないでありますか。見たところ、高位の魔術師であるとお見受けするであります。現状、あの『星喰い』とやらに対抗するには余りにも我々の戦力は微細でありますゆえ、お力を添えていただけるとありがたいのですが」

「それに真摯に答えるとするならば、出来ないといった方が正しい。上手く説明で納得してもらえるかは分からないが、ワタシがキミ達に力を貸せるのはここまでなんだ。本来魔女というものは、誰かの味方になってはいけないものとされている。キミ達『勇者』が己の強大な力を大衆の助力とすることと引き換えに、その力を持つことを認められているように、ワタシ達『魔女』もまた、誰かに与しないことと引き換えに、大きな魔力を扱うことを許されているのさ」

「……わ、私の頭では分からんであります。ですが、ご助力いただけないということでありましたら、納得いたしましょう……非常に残念でありますが」


 すまないね、とチカゲさんは言う。アリシアは納得したと口では言っていたが、煙に巻かれたような顔で引き下がる。

 恐らく、チカゲさんにはチカゲさんのルールがあるのだろう。それは俺達が口を出せる程浅い歴史の上で出来たルールではない以上、それを曲げてもらうことは出来ないと思った。……まあ、結局は地球がなくなるようなことになったら己も存在していられないだろうし、それを覚悟の上でそう言っているなら俺から魔女に言えることは何もないだろうと思う。


「尋ねるまでもないことだと思うけれど、キミはあの『星喰い』をどうにかするつもりなのかい」

「そりゃ……まあ。やらないと、地球がどうにかなるなら、尚更」


 文字通り居場所がなくなるのは勘弁願いたい。

 自分の力でどうにかなるなら、それを守りたいと思うのは勇者としても人としても当たり前だと思う。


「……極論の話をしていいかな、葛切セトくん」

「正直、あまり好きではないので機嫌が悪くなるかもしれませんが、それでも良ければ」

「それでも聞いておきたいと思う、老人の幼稚さを笑って欲しい。……極論を言えば、キミが認識できる『世界』というものは、非常に狭い範囲のものだ。両親、家族、そして友人、その程度のものだろう。テレビ越しには有名人や、あるいは道ですれ違った偶然近くに住んでいる人間なんかも、キミの世界を形作る存在であるだろうけれど、それは代替が利くと言ってもいい。だから、キミの『世界』は精々が友人と、その家族くらいまでの範囲だろう」


 それは、確かにそうだと思う。

 生憎出不精でコミュ障なことは自覚しているので、俺の交友関係といえばそれくらいのものだし、それを世界という区切りだとするなら、俺の『世界』は非常に狭い。

 極論であるという前提を先に敷かれたので、俺は渋々頷く。


「じゃあ、その『世界』を守る一番確実で手早い方法は、その限られた人間を異世界へと移住させることではないかと、ワタシは思うんだが」


 ……ああ。成る程、そう来たか。

 俺は少しだけ心がザワつくのを感じて、チカゲさんに見えないように拳を握った。


「俺が守りたいものだけを守ることを、世界を守るというのならば……確かにそうですね」

「実際にはそうでないと言うのかい」

「ええ。……俺が本当に守りたいのは、その守りたいと思う人間の世界も含めての話ですから。だから、そいつらだけを守って『世界』を守ったなんて言いたくないです」

「道理に合っているね。だが、その解釈を以って世界を定義するならば、キミはキミが関わる世界の全ての人間を救わないといけなくなるだろう。正しくそれは勇者の在り方だ。……キミは、人の身でありながらその全てを背負うつもりなのかい」

「……守れるか守れないか、出来るか出来ないか……それを考えてからじゃないと、目の前の困っている相手に手を差し伸べちゃいけませんか」


 俺が逆にチカゲさんを糾弾するように言うと、チカゲさんは少しだけ考えるように足を組み替え、俺の目を見てくる。

 間違ったことを言っているつもりはなかった。俺が異世界で、異世界を魔王の手から救おうとしたのは本当だったし、それが正しいと信じていたから仲間と共に旅を続けることが出来た。

 ハルカゼを助けようと思ったのも、ハルカゼ自身が本当に困っていることが分かったから……その力になりたいと心から思い、俺は手を差し伸べたんだ。


 ――それを、魔女に否定をされる謂れはどこにもない。


 チカゲさんが何かを言おうと口を開いたとき、ドアが二回ノックされる。

 返事をする者はいなかったが、ドアが開いてハルカゼがそこから顔を覗かせた。


「あ、え? お祖母ちゃん……?」

「悪いね、ちょっとハルカゼの勇者様を借りてるよ。出来れば、もう少し貸していて欲しいんだが、いいかい?」

「は、はい、えっと、セトさん、ごめんなさい、えっと」

「……ハルカゼのお祖母ちゃんなんだろ。……さっき聞いて、死ぬ程驚かせてもらったよ」


 俺が脱力して言うと、ハルカゼは俺とチカゲさんの顔を見比べながら部屋に入ってくる。

 俺達の横を通り過ぎると墨桐の隣に座り込む。ベッドで気を失っている墨桐の体温を測り、手に持ったタオルを墨桐の額に置いて看病を始めた。


「セトくん」


 その様子を眺めていた俺に、後ろからチカゲさんの声が掛かる。

 俺が振り返るとチカゲさんが、少し話をしないかと部屋の外を指さしていた。


「ハルカゼ、ちょっと出てくる。チカゲさんからのご指名みたいだ」

「あ、うん、少しニカちゃん汗掻いてるから、着替えさせてあげたくて……助かります」

「……代わるか?」

「……か、代わることで何の意味があるんですかそれ?」


 まだ振るわない冗談を言うと、チカゲさんが部屋の外で俺が出てくるのを待っているのが見えた。

 俺は肩を竦めるとアリシアにハルカゼを手伝うように指示を出し、俺はその白衣の背中を追う。


 部屋を出たところで、顎に手を置いて何かを思案していたチカゲさんは思いついたように言う。


「……『零式シューティングスターR』」


 ……いや、ダセぇよ。

 『星喰い』が怒って落ちてくるの早まったら困るから、もう『星喰い』でいいよ。

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