死神への贈り物 2
「シャルル様。鈍感、というのはですね。決してお嬢様はシャルル様を罵っているわけではないのですよ」
街の中心街を歩きながら、隣にいるソフィアは厳しくそう言った。
「それはわかっているが、どうしていきなり鈍感なんて言ったんだ?」
「そりゃあ……シャルル様が鈍感だからですよ」
「だから……私のどこらへんが鈍感なんだ?」
ソフィアは、コホンとわざとらしく咳払いをする。
「いいですか。シャルル様の考えた策とは、そのマリアンナさんという断罪人を、正式なシスターと同じように見せたいという考えでしたよね?」
「ああ、そうだ」
マリアンナに足りない、その十字のアクセサリーがあれば、おそらくマリアンナに対するマリアンナの目も優しいものになるはず……私はそう考えたのだ。
無論、それで全てが解決するわけでもないが。
「つまり、そのマリアンナさんに、アクセサリーをプレゼントする、と」
「ま、まぁ、そうなるな」
「……ここまで言ってわかりませんか?」
ソフィアは酷く軽蔑した顔で私を見る。
「……すまん。わからん」
私がそういうとソフィアはまた大きく溜息をついた。
なんだ? 何が悪いんだ?
その時の私は酷く混乱した。
「……わかりました。いいです。とりあえずアクセサリーを買いに行きましょう。装飾店はこちらです。私についてきてください」
ソフィアの後を付いていきながら私はふと、財布を取り出す。
それは、リベスの街でクロエにもらったあの財布だ。
ふと、私の脳裏にあの時のことが蘇る。
思い返せば、今の私はクロエだけではない、多くの人の死の上に生きているのだ。
マリアンナにアクセサリーを渡したら、革命都市のことに関してまた考えねばならない。
そんな戒めを感じながら私は財布を開ける。
「……あ」
「どうかされましたか?」
「え? あ、ああ。いや……な、なんでもない」
しかし、そんな、戒めをしておきながら財布はすっからかんだった。
これでは店でリンゴ一個買えないではないか……私はほとほと、自分の甲斐性のなさに絶望してしまった。
しかし、文無しの私は結局そのままソフィアに案内されるようにして、クローネの装飾店にやってきた。
店内にはきらびやかな装飾品が所狭しと並んでいる。そのどれもがとても今の私には手の届かない値段のものだ。
マリアンナには悪いが、あまり高価ではないもので済ませることしよう……
と、私は店の隅にまとめた置いてある装飾品の山を見つけた。
それを見てみると、どれも1000ベルガ程度の安価なものである。
これならなんとか買えそうではある……これにするか。
「そんな安価なもので済ませようとしているのではないですよね?」
と、背後からソフィアの釘を刺す声。
「は……ははっ。ま、まさか。そんなわけないじゃないか」
「そうですか。して、シャルル様。お金の方はお持ちなのですか?」
「え? あ……そ、それは……」
すると、ソフィアは私に小さな巾着袋を私に渡してきた。
中からはジャラジャラと音がする。
「え……こ、これは?」
「お嬢様がおそらくシャルル様はお金をお持ちでないだろうから、と出がけにくださったのです。それでどうぞ、『マリアンナ』さんへのプレゼントをお買いになってください」
すると、ソフィアはそのまま私に背を向ける。
「ソフィア? どこへ行くんだ?」
「私はお屋敷に先に戻っております。ごゆっくりとマリアンナさんへのプレゼントをお一人でお選び下さいな」
そして、本当にソフィアは店を出て行ってしまった。
私は巾着袋を開けてみる。
「うわぁ……明らかにアクセサリー一個には多すぎる金貨だな」
ざっと見ても3万ベルガは入っていそうである。
私は袋をとじる。
「……はぁ。ほとほと自分が情けない……これで元は貴族だっていうんだからな」
自嘲気味に笑ってしまった私は、そのままマリアンナに渡すための十字のアクセサリー、「プレゼント」を探すことにした。




