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王都への道中

馬車に揺られていると朝日が昇り辺りが明るくなって来た。

既に周囲は革命都市の周辺とは大部違う風景で遠くまで来てしまったのだと実感する。

マリアンナ…果たして大丈夫なのだろうか…

本当にマリアンナ一人をおいて来てしまってよかったのだろうか…


「おい、シャルル」

「……へ? あ、ああ、なんだ? アルドンサ」

「まったく……またボケッとしていたな?」


 眉根を寄せてアルドンサは私を睨んだ。


「え、ああ……す、すまん」

「マリアンナのことがそんなに心配か?」


 そういわれてしまうと、否定はできなかった。

 アルドンサは大きく溜息をついた。


「……まったく。別れ際はあんなにも潔かったのに、どうしようもないな」

「ああ……いざ、ここまで来てしまうと心配になってきてしまうのだ」

「心配しても仕方ないだろう? マリアンナは自ら私とお前を遠ざけ、お前もそれを了承したんだろう?」

「それは……そうなんだが……」


 私も分かってはいたのだがどうにも気持ちを整理できなかった。

 アルドンサは呆れた顔で私を見ている。


「しっかりしろ。これから王都に付くんだ。王都に付けば、私の家に行くんだからな」

「え? 家って……カルリオンの屋敷にか?」

「そうだ。お前を……その……わ、私の将来の旦那として連れて行くんだからな。きちんと旦那らしく振舞ってくれないと困る」


 ……なんだって?

 私はそれまで聞いてなかった事柄に、慌ててその先を聞くことにした。


「あ、アルドンサ……ほ、本当に私を旦那として連れて行くのか?」

「あ、当たり前だろ! そういう約束だったじゃないか!」


 アルドンサは馬車の中でまた思い切り立ち上がったので、天井に頭をぶつけ、痛そうに頭を抑えてまた座った。


「あ……い、いや、まぁ……」

「……嫌、なのか?」

「嫌じゃないが……その……君のご両親……カルリオン公爵がどういう反応をするのかどうか……」


 すると、アルドンサはそんなことかという顔で私を見る。


「それなら問題ない。父上ならお前のことを気に入るだろうよ」

「そ、そうなのか? だったら、いいんだが……」


 ブランダ王国一の武闘派貴族と言われたカルリオン公爵……どんな人物かは知らないが、想像だけでもおそらく歴戦の勇士といういかめしいイメージが付く。

 果たしてそんな人物が今の私を見て、自身の娘の旦那として認めるというのだろうか? 私には到底層は思えなかった。

 そうなると、せめて「元」貴族という称号を持っていた方がいいんだろうか? だとすると、今ここでアルドンサにそのことを話した方がいいのではないか?


「あ、アルドンサ。その、私には君に言わなければ行けないことが――」

「あ! おい! シャルル! 見ろ!」


 と、私がようやく重い口を開いた瞬間、アルドンサが窓に近付いて私を呼んだ。


「な、なんだ?」

「見ろ! クローネが見えてきたぞ!」


 見ると、窓の外には巨大な都市が広がっていた。

 今まで見たことのない数の建物が所狭しと並んでおり、その中央部に巨大な城が聳え立っている。


「これが……クローネ……」

「ああ。ここがブランダ王国の中心部、黄金の都、クローネだ!」

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