革命都市 4
「なんだ。お前は。どうしてここにいる」
マリアンナは相変らずの取り付くシマのないような調子で、私に向かってそう言った。
「マリアンナ……お前を探しに来たんだ」
「私を探しに来た? そうだとすると可笑しいな。私はあの書置きに『王都で待っている』書いたはずだ。お前がこんな所にたどり着くはずはない」
「それは……というか、お前、それじゃあ、最初から私に二度と合うつもりはなかったということか?」
「そうだ」
マリアンナはきっぱりとそう言った。
あまりにもきっぱりと言われてしまったので私は次の言葉に詰まってしまった。
「マリアンナ。その言い方はないだろう。シャルルはお前を探してここまで来たんだぞ?」
そこへアルドンサが私に助け舟を出す。
しかし、マリアンナは特に表情を変化させることもなく私をアルドンサを見る。
「私は探しに来いとは一言も言っていない」
「なっ……ま、マリアンナ……お前……!」
アルドンサが唇を噛み締める。
「いいんだ。アルドンサ」
「しかし、シャルル……!」
「……マリアンナ。では、聞こう。なぜ、私を置いていった?」
マリアンナは私を見る。
「別に。深い意味はない」
「私は、お前の所有物ではなかったのか?」
マリアンナは黙ってしまった。
そして、そのまま私とアルドンサの横を通り、部屋を出て行こうとする。
さすがに私も呼び止めずにはいられなかった。
「マリアンナ!」
「うるさいぞ。お前と話すことなんてない」
そういってマリアンナは本当にそのまま部屋を出て行ってしまった。
「マリアンナ……」
「ふふっ。これは相当怒っているようですわね」
そこへなぜか嬉しくて仕方ないという感じのエリスが口を挟んでくる。
「怒っている、か……まぁ、私にもなんとなくわかる」
「シャルル様。ワタクシならば、マリアンナを説得して、シャルル様とお話するようにすることもできるかもしれませんが、いかがいたしましょう?」
「え? できるのか?」
「ええ。少なくとも、今のシャルル様よりかは、マリアンナのことを説得することは可能だと思いますわよ」
エリスの言う通りだ。
このままではとてもマリアンナとまともに会話することもできないだろう。
「……わかった。頼む」
「わかりましたわ。ああ、でも、その前にエリック様に言われておりますから、お二人を宿屋にご案内致しますわ」
紅い修道服の少女は、マリアンナと同じように部屋を出て行った。
「シャルル……大丈夫か?」
「え? ああ。まぁな……こういうこともあるとは思っていたが、実際にこうまで相手にされないとキツイものだな。あはは……」
「……すまない。シャルル」
「アルドンサ……前にも言っただろう? 君が謝ることじゃないんだ。これは私に責任がある。なに、マリアンナとは君よりも長く共に旅をしてきたんだ。きっと、話をすれば分かってくれるよ」
私がそういうとアルドンサも安心したようだった。
とは言ったものの、先ほどのマリアンナは不機嫌極まりないと言った感じだった。
果たして私の話をちゃんと聞いてくれるかちょっと不安である。
しかし、かといってマリアンナと話さないわけにもいかない。
私はマリアンナを探してここまで来たのだし、理由もわからないままにマリアンナと袂を分かつこともできない。
「とにかく、エリスの後を着いて宿に向かおう。そこでまた考えればいいさ」
「ああ。そうだな……しかし、シャルル……その……やはり私は感じるのだ」
「え? 何を?」
「この場所……いや。この街だ。ブランダ王国の革命を目論むというのも問題なのだが……どうもそれだけではないような気がする」
「この革命都市がそれだけではないって、どういうことなのだ?」
「……分からない。しかし、マリアンナを説得でき次第、王都に向かおう。この都市の存在は必ず王に話さねばならないだろう」
アルドンサは真剣な顔でそう言っていた。
それは私が知っている気高くも、可愛らしい騎士の顔ではなく、異常な事態に緊張した面持ちだった。
確かに、街の中にいるから分からなかったが、この街の存在はつまり、この国に革命を目論む集団がいるということだ。
そして、その集団がいるということは近いうちに革命を目指した争いが起きてしまう可能性を示唆している。
どうやら私は、いよいよ重大なことに巻き込まれているようである。




