革命都市 2
私達はその後、革命都市の中心部を歩くことになった。
要塞のような都市にふさわしく都市中を歩くのは武装した兵士が多い。
しかし、その中でも目を着く存在がちらほら見える。
それは、修道服の少女達であった。
「なぁ、シャルル」
アルドンサもそれに気付いていたようだった。
「ああ。私も気付いている」
「あれは、マリアンナと同じ――」
「断罪人、ですわね」
そこへエリスが素っ気無くそう言った。
「……なぜ断罪人がこの街に?」
「あら。聞いていなかったのですか? 革命都市の主要構成員は、革命に参加する傭兵、そして、断罪人ですわ。ですからこの街には多くの断罪人がいるのですわよ」
そういわれて私は、酒場で男達が話していたことを思い出した。
「じゃあ、断罪人を使って革命を成功させようっていうのか?」
「あはは。旦那さん。使って、なんていい方はよしてくれよ」
エリックが困ったような顔で私を見る。
「俺は断罪人を人間だと思っているよ。優秀な兵士だ。だから、エリスちゃんや他の断罪人にも革命に参加して成功へと導いてほしいと思ったからこそ、こうして断罪人の皆さんに集まってもらっているわけよ」
エリックの言葉はどこか引っかかった。
優秀な兵士……ジェラルドが言っていた「断罪人は千人の兵士にも及ぶ力を持つ」という言葉。
それを目の前の男は実際にやってみようとしているのだ。
しかも、このブランダ王国を革命するという戦いに実践投入することで。
「さぁ、さっさと行こう。もうすぐだ」
エリックはまた歩き出した。
街の中心部を抜けると、人気のない場所に出た。
そんな場所で私達の目の前にあったのは、大きな教会であった。
「教会……」
「というか修道院だな。ここにアンタ達に会って欲しい人がいるわけよ」
そういってエリックは教会の方に進んで行く。
なんともこれまでの旅で教会系統の建物に良いイメージがない私は、躊躇いながらもその後を着いていった。
教会の前には修道をまとった少女が、先ほどの門番と同じように入口を守っていた。
「お疲れさん。クリスタ姐さん、いるかい?」
しかし、少女達は無表情のままでエリックを見ている。
まるでマリアンナと同じような無表情。
私はそれを思い出して胸が締め付けられた。
「いる。用事か?」
「そうそう。悪いんだけど開けてくれるかな?」
エリックが頼むと少女たちは何も言わずに、大きな扉を開けた。
「入れ」
「悪いねぇ。さぁ、お二人さんも」
私達もエリックに続いて中へ入った。
門番の少女たちは冷たい視線でえ私達を睨んでいた。
「ふふっ。まったく。断罪人というのは誰も彼も無愛想ですわね」
エリスが可笑しくて仕方ないという風に笑っていた。
「まぁ、皆ジェラルド様に忘れられないトラウマを植えつけられたんですもの。もはや人間でないんですから仕方ないですわね」
「はははっ! そんなこと言っても、エリスちゃんは俺にも優しいじゃねぇか」
「ワタクシは特別ですわ。ねぇ、シャルル様?」
そういって私を見るエリスの細い視線は、やはり恐ろしいものだった。
一体何を考えているか分からない視線だ。
ジェラルドの屋敷で会ったときとは少しその瞳の感じが変わっているような気がする。
より一層底なしの沼に足を突っ込んでいるような、不安な感じの――
「シャルル」
「え?」
私がそんな風に思っているとアルドンサが私の肩を叩いた。
「落ち付け。息が荒いぞ」
「え……? そ、そうだったか?」
「ああ」
「ふふっ。大丈夫ですか? シャルル様」
エリスはそういって私から離れていった。
「シャルル。気を引き締めろ。この場所は不味いぞ」
「不味い? どうしてだ?」
「邪悪な気配だ……負の感情が溢れている。気をつけないと飲まれるぞ」
確かに言われて見れば、どこか落ち着かないのはそのせいかもしれない。
全体的に暗い雰囲気だけではない。
何かこの世のものではない存在がここに巣食っているかのようだった。
だが、ここにマリアンナもいるのだ。
逃げ出すわけにはいかない……!
「おーい、お二人さん。こっちだ。クリスタ姐さんの部屋はこっちだよ」
エリックが私達を呼んでいる。
私は頬を両手で叩くと、アルドンサと共にそちらへ向かったのだった。




