いにしえの決闘場 4
その後、本当に競技場において兵士同士の決闘モドキが開催されてしまった。
兵士同士は木製の剣を手に、それぞれ本気で戦っている。
私とエリックが見ている前で次々に勝負が決まっていく。
「そろそろ、奥さんの出番だよ」
エリックの言う通りで、次の勝負に出て来たのは露出度の高い装備を着たアルドンサ。
一方の相手はまるで巨人のような大男だった。
「あ、アルドンサ……」
「あちゃ~……さすがに相手が悪いかなぁ?」
確かに男と比べるとアルドンサはまるで子どものように見える。
「……おいおい! ちょっと待ってくれ」
と、アルドンサと対峙していた大男が大声で叫んだ。
「ん? どうした?」
エリックが大男の叫びに応える。
「俺の相手は、この小娘かぁ?」
大男はさも馬鹿にした風にエリックに尋ねた。
既に試合を終え、観戦している男達の笑い声も聞こえてくる。
「ふっ……はっはっは!」
しかし、その笑いを掻き消すかのような大きな笑い声が聞こえた。
「あぁ? 何がおかしいんだよ? 姉ちゃん」
笑い声の主はアルドンサ。
「まったく、愚かなことだな。見た目だけで敵を判断するとは」
「あぁ? 姉ちゃんよぉ……怖いなら怖いって言えばいいんだぜ?」
「怖い? お前がか? お前が吾輩を怖がることがあっても、吾輩がお前を怖がることは絶対にないな」
アルドンサの挑発は明らかに男を興奮させていた。
「ぷっ……ふふっ。奥さん、面白いねぇ」
エリックは嬉しそうにニヤニヤと笑っている。
私としては、何故そんなことを言うのかと内心ヒヤヒヤだった。
私の心配とおりというか、見た目とおり短気であった男は、剣を握りそれを大きく振りかぶると、そのままアルドンサに突撃してきた。
「あ、アルドンサ!」
私は思わず叫んでしまう。
「死ねェェェ!」
男が思いっきりアルドンサに向かって剣を振り下ろす。
大きな砂埃がアルドンサのいた辺りに巻き上がった。
「あ、アルドンサ……」
私はゴクリと生唾を飲み込んだ。
しかし、砂埃が晴れた場所には、アルドンサの姿はなかった。
「馬鹿め。まるで獣だな。剣というものはこういう風に使うのだ」
アルドンサの声が聞こえてきた。
見ると、なんとアルドンサは大男の肩の上に乗っていたのだ。
「なっ……こ、このクソアマぁ!」
そういって男がアルドンサに再び襲いかかろうとしたが、それも既に遅かった。
アルドンサは男の頭部に剣で鋭い一撃を打ち込む。
その一撃が決まると共に、男は大きな音を立てて地面に崩れ落ちた。
その様子を見ていた観客……私を含め全員が唖然としてしまっていた。
「……おお! 素晴らしい!」
そして、その沈黙を破ったのはエリックだった。
エリックの大げさに拍手に続き、他の観客も拍手する。
私も思わず拍手してしまった。
すると、アルドンサは私に向かってウィンクしてきた。
「あはは……そ、そうだな。素晴らしいよ。アルドンサは」




