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いにしえの決闘場 2

「ああ、ここだ。ここ」


 エリックの後を付いてきてやってきたのは、村から出て少し歩いた地点だった。


「……ここ?」

「ああ、そうだ。ここが検査会場だよ」


 エリックはそう言ったが、どうにもそこには何もないように見えた。


「……何もないじゃないか」

「はぁ? アンタらどこ見てんだよ。目の前にあんだろ?」


 そう言われて私は、エリックの前方を見た。


「あ……」


 思わず口から声が漏れる

 そこにあったのは巨大な建造物だった。

 石造りでできた丸いドーム状の建物。


「どうだい? これ、見たことないだろ?」

「あ、ああ……なんだこれは?」

「コロッセオだよ。知らない? 今から千年前の古代ヒューロ帝国で使われてた闘技場だよ。知ってんだろ? ヒューロ帝国くらいよ」

「ああ……かつてこの地一体を支配した古代の大帝国だろう?」

「そう。で、そのヒューロ帝国の皇帝が、ここで奴隷を殺し合わせたり、奴隷と猛獣を戦わせるためにこんなでっかい建物を建てたんだよ。まったく、いつの時代も権力者ってのはロクなもんじゃねぇな」


 そう言ってエリックはそのまま闘技場へと向かっていく。


「こっちだ」


 私とアルドンサは顔を見合わせる。


「……行くのか?」


 アルドンサが不安げに訊ねてくる。


「そりゃあ、明らかにアイツは不審なヤツだが、行かないと革命都市に入ることさえままならないわけだしな」

「……そうだな。よし、行こう。何。いざとなったら私がお前の盾になる。心配するな」


 なんとも情けない話ではあるが、アルドンサにそういわれると私は安心してしまった。

 そして、私達はエリックの後をさらに追いかけた。

 エリックについて行くと、コロッセオの入口らしきところで待っていた。


「此処から入るんだ。で、どっちが検査を受けるね? 旦那か? それとも奥さん?」


 エリックの言葉に対し、明らかにアルドンサはイラ付いているように見えた。


「エリック。何度も言うが私達は夫婦じゃないんだ」

「あーはいはい。わかったよ。で? どうする? 検査を受けるのは体力があった方がいいと思うよ」

「ならば私が出よう」

 

 アルドンサが意気揚々とそう言った。


「ほぉ。奥さんが出るんかい。じゃあ、先にコロッセオに入ってくれ。入ったら真っ直ぐ進むんで、奥の部屋に入ってくれ。そこで係の者が準備をしてくれるからさ」

「準備? ……妙な真似をしたら叩き斬るぞ」

「はははっ。何もしねぇよ。怖いねぇ」

 

 アルドンサはエリックのことをまるで信用していないようだったが、渋々先に闘技場の中へと入って行く。


「あ、アルドンサ……」


 私は思わずアルドンサを呼び止めてしまった。

 アルドンサは振り返る。


「心配するな。後で会おう」


 爽やかな笑みを浮かべてアルドンサはコロッセオの中に入っていった。


「ふふっ。いい奥さんだねぇ」

 

 と、エリックが下卑た声でそう言って来た。


「だから……私達は夫婦ではない」

「でも、いずれ夫婦になるんだろ? 苦労するだろうぜ? あんな怖そうな奥さんじゃ」

「……アルドンサは、怖くない。優しい女性だ」

「ははっ! こりゃ失礼! ノロケさせちまったかな?」


 そういってエリックはぴしゃぴしゃと額を叩く。

 それにしても、コイツが革命軍のリーダーなのだろうか?

 閣下と呼ばれていた所をそう考えても良さそうだが……あまりにも人徳がないというか、小物に見えるのである。


「さて、俺達もコロッセオに入ろうか。無論、見物するだけだけどな」

「見物? 何を?」


 すると、いやらしい笑みを浮かべてエリックは私を見た。

 私は思わず背筋に嫌な感覚が走るのを感じた。


「そりゃあ、検査試験の様子をだよ」

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