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祝宴

「がっはっは! しかしまぁ、公爵殿! 公爵殿は素晴らしい婿を迎え入れられましたなぁ!」

「あ、あはは……そ、そうだな。まさにシャルル君はカルリオン家にももったいないくらいの素晴らしい男だよ」

「がっはっは! 聞いたか兄ちゃん! あの武勇のカルリオンがもったいないくらいだってよ! この野郎!」

「あ、あはは……ゲイツ。傷が痛むからあまり叩かないでくれ」


 宴は、完全に混沌としていた。

 ブランダ城の大広間で行われたそれは、街の人や貴族、そして、傭兵達全員参加の大規模なものだった。

 主賓は「救国の英雄」こと、私。

 その隣にはカルリオン公爵が座り、ゲイツも先ほどから完全に酔っ払った状態で嬉しそうに私の背中をしきりに叩いていた。


「おい! カルリオン!」


 と、いきなり聞こえてきた甲高い声。


「あ……な、なんでしょうか。女王陛下」


 見ると、そこにたっていたのはミネットだった。

 無論、私が知っている容姿のミネットではない。

 豪華な純白のドレスを纏い、頭には金色の王冠を被っている。

 ブランダの女王、クローネ・ド・ブランダ16世の姿があった。

 ……ただし、ゲイツと同じように顔が少し赤らんでいるのが問題だったが。


「僕は……じゃなかった。私は! まだお前の娘とシャルルの結婚を認めていないぞ!」

「えぇ? 陛下、それは……」


 すると、ミネットは私の方にズンズン進んでやってくる。

 そして、私の前で立ち止まると睨むような目つきで私を見た。


「おい! シャルル!」

「は、はい……」

「お前! 私の面倒を見ると言ったじゃないか!」

「あ……はい。言いました」

「なのに! お前は直接助けに来てくれなかったじゃないか!」


 と、なぜかいきなり涙ぐむミネット。


「あ……す、すまない。ミネット……」

「許さん! 女王命令だ! 貴様を……私の夫とする!」


 その言葉を聞いて、瞬間、場内がシーンとなった。

 そして、次の瞬間「えぇ!?」と全員が驚いた。


「あ……み、ミネット。その……私にはアルドンサという将来を近い会った人が……」

「うるさい! 女王の命令だぞ! 聞けないのか!?」

「あ、いや……その……」

「困りますわ。女王陛下」


 と、そこへ響く凛とした声。

 私はそちらへ顔を向ける。

 黒いドレスをまとった、美しい女性がそこに立っていた。

 薄い紅を塗った唇は、たとえようがなく美しい。


「あ……アルドンサ……」


 無論、その人物がアルドンサであることはわかったが、この上なく美しかったのである。


「女王陛下。シャルル・フロベール……いいえ。シャルル・カルリオンはワタクシの夫となる男です。いくら国王陛下でも譲るわけにはいきません」


 アルドンサがそう言うと悔しそうにミネットはアルドンサを見た。

 しかし、その瞬間アルドンサは目線をいつものようにキリッとしたものに変えてミネットを見た。


「聞き分けろ! 貴様は、これからは一国を背負って行く国王だろうが!」


 凛とした声が響き渡ると、ミネットは硬直してしまった。

 そして、その後――


「……ひっく……ぐすっ……うわぁぁぁん……」

「ありゃりゃ……おい! イルマ!」

「え? 私!?」

「坊主を会場から連れ出して泣きやまして来い!」


 慌ててイルマが飛んできたかと思うと、そのままミネットを抱えて走って言ってしまった。


「まったく……だから、あのガキは好きになれん」


 憤然とした態度でアルドンサはゲイツを睨む。


「あ、あはは……じゃあ、俺もこれで……おい、兄ちゃん」

「え?」

「どうやら、大変な夫婦生活になりそうだな」


 そういって耳打ちすると、ゲイツもそのまま席を離れた。

 ゲイツが開けた席にアルドンサは腰を降ろす。


「アイツ、何か言ったのか?」

「え? あ、あはは……いや、何にも」


 私はアルドンサに曖昧に微笑んでから、公爵のほうに顔を向ける。

 公爵も私と顔をあわせると苦笑いしたのだった。

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