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魔女の城 9

 その瞬間だった。

 マリアンナは姿勢を低くすると床に置かれた斧を一瞬にして手にする。


「あ」


 私の口から小さく声が漏れた。

 そして、次の瞬間には襲い掛かってきた断罪人達全員を見事に切り払った。

 断罪人達は床に倒れる。

 そして、マリアンナはそのままの勢いで玉座のモニカのほうへ向かう。


「ふふっ……なんだ、私と一緒じゃない」


 モニカがいやらしい笑みを浮かべた。


「違う」


 小さくマリアンナが返事するのが聞こえた。

 それと同時に、マリアンナはモニカに向かって斧をふるった。

 それと同時にモニカの頭部が宙へと放り出される。

 マリアンナはモニカを……断罪した。


「あ……マリアンナ」


 そのまま床に倒れるモニカの胴体。


「マリアンナ!」


 私はマリアンナの下へと向かう。

 血しぶきを上げたマリアンナは呆然と立ち尽くしていた。

 いつもとは様子が違う。

 一体、どうしたというのか。


「マリアンナ! 大丈夫か?」


 私がそう言うとマリアンナは顔を上げる。


「シャルル。これで、よかったんだよな」

「え……?」


 そういうとマリアンナは床に倒れている断罪人達を見る。

 その瞳は悲しそうだった。

 いや、悲しそうではない。

 悲しみに溢れていた。

 心底、マリアンナは自身の行った行為を反省している。

 断罪を、後悔している顔だった。


「マリアンナ……仕方なかったんだ」

「しかし、シャルル。これでは――」


 私はマリアンナのことを見る。

 マリアンナも蒼い瞳で私のことを見ていた。


「お前は、断罪をした。しかし、今回だけは……お前は、あの子達のことを思って断罪をしたんだ。もちろん、それがいいこととはいえないが……お前はただ単に報酬のために断罪をしたんじゃない。お前がそうせざるを得ないと思ったから、そして、本当は心底それをしたくなかったのにそれをした……それは、私は理解しているつもりだ」

「シャルル。お前……」

「だから……万事解決というわけではないが、これでよかったと思うよ」


 私はマリアンナに微笑みかける。

 マリアンナは無表情だったが、安心したようだった。


「……よかったわけねぇだろ」


 と、瞬間、私は見た。

 マリアンナの背後に、怒りに満ちた表情を。

 その人影は、手に持った鈍く光る細長い刃物をマリアンナに目掛けて振り下ろさんとしていた。


「マリアンナ!」


 私は思わずマリアンナを突き飛ばす。


「死ねぇぇぇ!」


 そして、クリスタの怒声とともに、次の瞬間には、その銀色の刃物は、確実に私の背中を大きく切り裂いた。

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