魔女の城 1
「あ! シャルル!」
と、クローネの中心部、王国の象徴たる城の入口の門まで後少しというば場所でのことだった。
「え……イルマ?」
そこにいたのは、傭兵のイルマだった。
「お前……どうしてここに?」
「あはは……いや、まぁ、どうせお城の方に来るだろうなぁ、って思ってさ。こっちで待ってたんだ」
「そ、そうなのか?」
「うん。ああ、で、門番いないみたいだよ」
イルマはそういって城の門のほうを指差した。
私達もその先を見てみると、確かに、門の前には断罪人はおろか、誰も立っていなかった。
「どうやら、シャルルの作戦、成功したみたいだね」
ニッコリと笑うイルマ。
「ああ。よし、私達はこのまま城の中へ向かう。イルマ、君はどうする?」
「私はここで誰か来ないように見張っておくよ。まぁ、たぶん、この分だと断罪人は全員、お頭達が起こしている騒ぎの方に向かっていっちゃたんだろうけどさ」
そういうとイルマはポンと、私の肩を叩いた。
「シャルル……その……ごめん」
「え? なぜ謝るんだ?」
「その……私のせいでミネットが……」
イルマは悲しそうに俯いた。
どうやら、イルマはずっとそのことを気にしていたようだった。
「イルマ。安心してくれ。ミネットを助け出すために、この無茶な作戦を決行したんだ。必ずミネットは助け出す」
「シャルル……うん! わかった。じゃあ、頑張って行ってきてよ!」
イルマの笑顔を背中にしながら、私達はそのまま誰もいない城門を通り、城の中へと侵入した。
「……シャルル」
「ん? なんだ? アルドンサ?」
と、隣のアルドンサがなぜかトーンの低い声で話しかけてきた。
「今のヤツは……誰だ?」
「え? ああ。イルマか。傭兵だよ。道端で会ってベルリヒンゲンまでを案内してくれたんだ。彼女がいなければこの作戦はできなかった。恩人だよ」
「ふーん……そうか」
「え……ど、どうしたんだ?」
するとアルドンサは頬を膨らませて私を見る。
「私はお前と会えなくて寂しい思いをしていたのに、お前は別に寂しくなかったみたいだな」
「え……お、おいおい、アルドンサ……」
「おい、お前達」
と、私達の前を行っていたマリアンナが足を止めた。
「どうした? マリアンナ」
「アホみたいな話は終わりにしろ。何か嫌な予感がするからな」
そして、マリアンナの言葉の通りだった。
私達は、いよいよ、モニカが巣食う城の中へと本格的に入ってしまったのだから。




