宴の後
「……はぁ」
宴が終わった後は、城は元のように静寂に包まれていた。
皆、適当な場所で眠っている。
私も今は廊下に腰を降ろしてただぼんやりとしていた。
本当ならばこんなことをしている場合ではないのだ。
一刻も早く、ミネットを助け出さなければならないというのに……
「シャルル」
と、アリシアの声がした。
私は声のした方に顔を向ける。
「あ、ああ……アリシア」
「大丈夫?」
そういってアリシアは私の隣に腰を降ろした。
「ああ……まぁ、ね」
「どうせ、あの小さな王様のこと、考えていたんでしょ?」
図星をつかれ、私は何も言えなくなってしまった。
「あらら。その通りみたいね」
「ああ……アリシア、ミネットは――」
私がそう聞こうとすると、アリシアは人差し指で私の口元を押さえた。
「ソレ、私に聞いてどうするの?」
「え……ああ。すまない」
「シャルルったら……まぁ、気持ちはわからないでもないわ」
そういってアリシアは小さく溜息をついた。
「モニカ……どうせ、アイツのことだわ。ロクなことは考えていないでしょうね。でも、おそらくだけど、あの小さな王様を殺したりはしていないと思うわ」
「そ、そうかな?」
「ええ。だから、アナタは明日、モニカに打ち勝つことだけを考えなさい」
そういってアリシアは立ち上がった。
「ああ。そうそう。もうお別れの挨拶はいらないわ。明日の朝一番でここを出て行ってね」
「え……あ、ああ」
「シャルル。私もね、アナタとはずっといたいけど、本当ならば私はアナタといてはいけないはずの存在なのよ。だから、これ以上アナタに付き合うことはできないの。ごめんなさい」
「いや。いいんだ。アリシア。君には今までこの上なく大きな借りがあるんだから」
そういうとアリシアは優しげに微笑んだ。
「そういってくれると嬉しいわ。シャルル。アナタ、ちゃんと覚えてる?」
「え? 何を?」
そういうとアリシアは意味ありげにウィンクする。
「アナタに私、祝福を上げたのよ。だから、それを忘れないでね」
アリシアはそれだけ言って背を向け、廊下の向こうに消えていった。
「終わったか」
「え? あ……マリアンナか」
振り向くと、いつの間にかそこにはマリアンナが立っていた。




