捕らわれた王 2
「イルマ!」
私は思わず声を出してしまった。
しかし、その瞬間、マリアンナは私の手を離す。
そして、いつの間にか斧を取り出していた。
「イルマ!」
私はもう一度イルマの元に駆け寄った。
「そんな……イルマ……」
「まぁ、おそらく断罪人だろうな」
マリアンナは落ち着いた様子でそう言う。
私はうつぶせになったままのイルマの顔を見てみた。
「……え?」
しかし、その顔を見て私は眼を丸くした。
「ん~……もう食べられない~……ムニャ~」
イルマは幸せそうに眠っていた。
おまけに幸せそうな寝言まで言って見せたのである。
「お……おい! イルマ!」
「……ん? あれ……どうしたの?」
私が肩を揺らすと、イルマは目を覚ました。
「どうしたじゃない……お前がどうしたんだ……」
「え? あれ……私……イテテ」
そういってイルマは頭を抑える。
「おい、イルマ」
「え? 何?」
「誰かに、殴られたのか?」
マリアンナが尋ねるとイルマは少し考え込んでいるようだった。
「う~ん……たぶん。いきなりだったからわかんないけど」
「そうか。それで、ミネットはどうした」
「え? あ……あれ?」
辺りを見回すイルマ。
ということは……
「そ、そんな……ミネット……」
「落ち着け、シャルル。ミネットは攫われただけだ」
「攫われただけって……そんな……早く助けないと!」
「だから、落ち着け。ミネットをこの状況で誘拐するのは、どう考えてもモニカの配下の断罪人だけだ。そして、ミネットを殺さずに誘拐したということから考えても、おそらく奴らはしばらくの間ミネットを殺さずに生かしておくだろう」
「そう……なのか? なんでそんなことが言える?」
すると、マリアンナは私の方を一瞥してから、小さく溜息を吐く。
「断罪人ならば基本的に殺して終わりだ。しかし、それをしなかったのは、おそらくモニカの配下の断罪人共がモニカからそういう命令を受けたということだろう。だから、モニカ自身もミネットをそう簡単に殺すことはない、と推測するんだ」
「そ、そうか……」
「無論、これは推測だ。モニカ自身が私の推測を超える行動をすればミネットは殺されるな」
そういうマリアンナの言葉に、私は思わず唾を飲み込んだ。
「おーい! どうした、兄ちゃん!」
と、茂みの向こうからゲイツの声が聞こえてきた。
「あ……お頭。ど、どうしよう……」
イルマは脅えた顔で私を見る。
無論、イルマに責任があるわけではない。
「……大丈夫だ。ゲイツには私から話す」
そうして私はゲイツの方に進んでいった。




