荒くれ者共の街 7
それからしばらく街の中をぶらぶらした後で、私とミネット広場に戻ることにした。
夕時になっても特に街の様子は変わらない。相変らず男達はドンチャン騒ぎっぱなしである。
私達はうるさい大通りを避けて、裏通りを歩くこととした。
裏通りは夕時になると静かで、同じ街の中とは思えないほどであった。
「……なぁ、シャルル」
と、ミネットが私の服の袖を掴んだ。
「ん? どうした? ミネット」
「その……誰かに、見られてないか?」
「え? 誰か?」
その時だった。
目の前に現れたのは、複数の黒い修道服の人影だった。
「え……う、嘘だろ……」
その服装はどう見ても断罪人だった。
無論、ここで私達の前に姿を表すマリアンナとエリス以外の断罪人とは即ち、モニカの部下達である。
「あ……シャルル……」
「う、うぅ……」
私はミネットを下がらせた。
断罪人たちは少しずつ距離を詰めてくる。
にわかに私達は窮地に立たされてしまった。
未だ頭の整理が追いついていない。
このまま、殺されてしまうのか?
こんなところで?
「……に、逃げるしかないか」
「え? ど、どうやって?」
逃げるといっても、おそらく一歩でも動けばたちまち断罪人たちに取り囲まれてしまうだろう。
だとしたら、どうやって……
「……ミネット。逃げろ」
「え? し、しかし……」
「お前が死んだら王国は二度と取り戻すことが出来なくなる……私がなんとか時間を稼ぐからどうにか逃げるんだ」
「シャルル……い、嫌だ! そんな……」
「逃げろと言っているだろう! お前は王なんだぞ! ここで死んでどうするんだ!」
私が怒鳴ると、ミネットはビクッと身体をこわばらせた。
そして、そのまま私に背を向けて――
「……嫌だ」
「……え?」
ミネットははっきりとそう言った。
そして、なぜか私の前に躍り出る。
「来い! モニカの犬共! シャルルには……私の国民には、指一本触れさせないぞ!」
「お、お前……ミネット……」
そう言うミネットの小さな足は小刻みに震えていた。
そして、断罪人たちは懐からそれぞれ武器を取り出す。
「シャルル……ごめん」
ミネットは引きつった笑みを浮かべながらそう言った。
「でも……私はお前を……私の国民を見捨てて逃げるなんて、もう嫌なんだ……」
「ミネット……」
「よく言ったじゃねぇか、ガキ! ガキにしては上等じゃねぇか!」
と、その時だった。
野太く荒っぽい声が聞こえてきた。
「え……まさか……」
と、見ると、断罪人たちの背後にも、何人かの人影があった。
「あ……アンタ……」
「よぉ、兄ちゃん。どうやら、ピンチみてぇだな?」
断罪人たちの背後に現れたのは、右手の義手が目立つ、下品な笑いを浮かべた男……
背後に傭兵達を引き連れたゲイツだったのである。




