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荒くれ者共の街 3

「な……なんだここは?」


 扉を開けるとその先には長い階段があった。

 それは地下に向かってのびているようでその先は見ることができない。


「はぁ~、ホント、変なとこに住んでるよね~」


 イルマが溜息をつきながらそう言った。

 所々に火のともった松明が、暗い階段を照らしているので足元に困ることはなかったが、それでもやはり不気味であった。


「……ミネット」

「え? な、なんだ? シャルル?」

「……服を掴まないでくれ。歩きにくい」


 しかし、ミネットはさらにギュッと服を掴んだ。

 まぁ、怖い気持ちもわからないではなかったが。

 それから私達四人は階段を降り続ける。

 足音だけが暗い空間に木霊する。

 そして、いい加減足が疲れて来たころにようやく階段が終わった。

 その先に会ったのは、これまた一つの扉だった。


「やっと着いたよ。はぁ……お頭! 私です! イルマですよ~!」


 イルマはいきなりドアをドンドンと叩いた。

 しかし、返事も反応もない。


「仕方ないなぁ~……入りますよ~」


 そういって勝手にイルマは扉を開けた。

 私達もそれに続く。

 中に入ると思わず顔をしかめてしまった。

 汚らしい部屋だった。そこら中にゴミや酒瓶が転がっている。

 そして、部屋の奥から大きないびきが聞こえてくる。


「お頭~! イルマですけど~!」


 そう言うといびきが止まった。

 そして、向くりと部屋の奥で人影が起き上がった。


「……ったく。なんだ、イルマ。テメェ、また仕事クビになったのかぁ?」

「違いますよ。お頭に会いたいって人がいるから連れて来たんです」

「あ? 俺に会いたいだって?」


 現れたのは酷く人相の悪い男だった。

 一目で荒くれ者と言うことが分かる。

 カルリオン公爵とは違い、その荒々しさには一切品のようなものは感じなかった。

 背の高さも私と同じくらい。

 が、目をひいたのはその人相の悪さと共にその男の右手だった。

 何やら鋼鉄製の籠手をしているようなのだが……なぜか右手にしか籠手をしていないのだ。


「ん? テメェか。俺に用があるってのは?」

「え? あ、いや……」


 すると、男は右手を差し出してきた。


「俺の名はゲイツ。この街のクソ野郎共の頂点に立つ男だ。よろしくな」

「あ、ああ……私はシャルル。よろしく」


 と、私が握手しようとすると男は右手をひっこめた。


「おっとイケねェ。コイツは義手なんでな。握手できねぇんだった」


 男は下品に笑い、もう一度左手を差し出してきた。

 私も苦笑いしながらそれにそれに応えたのだった。

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