荒くれ者共の街 2
「こ、ここが……ベルリヒンゲン……」
程なくして私達は街へと入ることが出来た。
傭兵の街だというのに、街の入口には門番らしきものはいなかったのですんなりと入れたのだ。
しかし、入ってすぐに、私は面食らってしまった。
「ああ、そうだよ」
「イルマ……その……これは、日常的な光景なのか?」
「え? 日常? まぁ、普段通りだけど?」
イルマは不思議そうに私を見る。
何故私がそんなことを聞いたのか?
周りを見渡せば、ならず者といった感じの男共が、そこら中の店の中で酒を飲んでいるのだ。
今は日も出ている真昼間。
そんな昼間からまるで宴会のように男達は馬鹿騒ぎしているのである。
「ああ、何? 朝から酒飲んでるのが珍しかった?」
「え? あ、ああ……ま、まぁ……」
「あはは。朝も夜も関係ないよ。みーんなここにいる奴等はいつ戦争に行って死ぬかわかんないだからさ。生きている間はとりあえずどんちゃん騒ぎできる限りを尽くしているってわけ」
イルマの説明を聞いてなんとなく理解はできたが、それにしてもあまりにもこの光景は異様だった。
これが傭兵の街……
「あ、で……ゲイツのお頭に会いにいくんだっけ?」
「え? あ、ああ。そうだ。そのゲイツはどこにいるんだ?」
急に元気をなくしたイルマがため息をつく。
「えっとね……まぁ、付いて来てよ」
そういうとイルマは歩き出した。
最初はイルマは広い通りを歩いていたが、ふいに狭い路地の中へと入る。
路地裏では酔いつぶれた男達が何人も道端に寝転んでいる。
「ああ。踏まないように気をつけてね」
といわれても中々踏まないように歩くのは至難の業だった。
そして、狭い路地を何度か通ると、さらに狭い路地に入った。
道幅は人一人入れるぐらいの広さ。
「イルマ……ホントにこっちなのか?」
「うん。もうちょっと」
狭すぎる路地をしばらく通っていると、イルマが急に立ち止まる。
「ど、どうした?」
「ここ」
そういってイルマが指差す先には扉があった。
「え? ここ?」
「うん。変なところに住んでいるよね~」
困った顔でそういいながらイルマは扉を開けて中に入っていった。
私は思わず後ろを振り返る。
ミネットが不安そうな顔で、マリアンナは無表情で私を見ていた。
「……よし。入るぞ」
そう言って私とマリアンナ、ミネットもその扉の向こうに入ったのだった。




