荒くれ者共の街 1
「よーし、見てきてたよ~」
私達は今小高い丘を登りきらんとしていた。
町を出てから約半日。
歩き通しでそろそろミネットが駄々をこね出した辺りで、先を進んでいたイルマがそう言った。
「ほ、本当か!?」
ミネットが嬉しそうな顔でそう聞き返す。
「うん。ほら、見てみなよ」
そう言われてミネットは一気に走り出した。
「あ、お、おい! ミネット!」
私の制止も聞かずにそのまま先頭まで一気に走り出す。
その時、私の背後を歩いていたマリアンナと目が合う。
どことなく気まずくて、私は思わず目を反らしてしまった。
あの町での一件以来、どうにもマリアンナとは微妙な距離感が出てきてしまったような気がする。
無論、そんなのは私の単なる思い過ごしでしかないのだろうが……
「おい! シャルル! 来い!」
と、先頭からミネットの元気な声が聞こえてきた。
私は仕方なくそちらの方に歩いていった。
丘のてっぺんまで歩ききると一気に視界が開ける。
「……こ、これは……」
思わず言葉を失ってしまった。
その向こうに広がっていたのは確かに街だった。
しかし、かつてのクローネのように豪華ではなばなしい感じではなかった。
どちらかというと野暮ったい感じだ。
街のあちこちにから何かを燃やしているのか白い煙が上がっている。
そして、かなり離れた距離にあるというのにやかましい喧騒が遠くから聞こえてくるのだ。
「あれが、私達の街、ベルリヒンゲンだよ」
イルマは得意そうにそう言った。
今まで見てきたどの街とも違う印象に私は思わず言葉を返しそびれてしまった。
「とにかく! さっさと街に行くぞ!」
街に行けば休めると思っているのか、ミネットは足早にそのまま丘を下りだした。
イルマもその後に続く。
「ほぉ。あれがベルリヒンゲンか」
後からやってきたマリアンナがボソッと呟いた。
「あ、ああ。どうやらそうらしい」
「ふぅん。なんだかうるさそうな街だな」
と、その言葉を聞いて私は思わず目を丸くしてマリアンナを見てしまう。
「なんだ? どうかしたか?」
「え? あ、あはは……いや。そうだよな。そう思うよな?」
マリアンナはよくわからないという風に首をかしげた。
私は苦笑いしながらミネットとイルマの後を追ったのだった。




