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傭兵イルマ 3

 そして、しばらく歩くと、確かにイルマの言ったとおり、小さな町が見えてきた。


「おお! 町だ!」


 ミネットは今までそんな元気をどこに隠していたのか、大喜びで走り出した。


「はぁ……まったく。アイツは……追われている身だという自覚がないのか……」


 思わず私は呆れてしまった。


「まぁまぁ。こんな辺鄙なところまでは誰も来ないって。とにかく、私も疲れたし、さっさとあの町で宿屋でも取ろうよ」


 暢気にそういうのはイルマである。

 私はついマリアンナを見る。何も言う気配はない。

 マリアンナも特にその意見に反対というわけではないようだった。


「……じゃあ、行くか」




 私とマリンナ、そして、イルマも先に走って言ってしまったミネットを追って町の方へと向かった。

 確かに、イルマの言う通り、やってきた町は辺鄙なという言葉にふさわしく、寂れた感じの場所だった。

 周りを見回してみると、一応小さな宿らしき家屋が存在しているのが見て取れた。

 私達はそのまま宿屋に入り、受付を済ます。

 今回は宿屋の主はマリアンナを見ても特に何も動じなかった。

 あまりにも辺鄙な所だから断罪人という存在も知らないのだろうか?


「なんとか宿屋が取れてよかったね」


 部屋についてからベッドに腰かけたイルマが私にそう言った。

 しかし、私は思わず渋い顔をしてしまった。

 案内された部屋は二人部屋だったのだ。

 つまり、私とイルマ、そして、マリアンナとミネットが二人ずつ部屋に案内されたのである。


「どうしたの? なんか渋い顔して?」

「え? あ、ああ……い、いやね……君は……平気なのか?」

「平気? 何が?」

「いや、その……わ、私と同じ部屋でいいのか、ってことなんだが」


 そういうとイルマはキョトンとした顔で私を見る。


「……ぷっ……あはははっ!」

「え? な、なんだ?」


 いきなりイルマは笑いだした。

 可笑しくて仕方ないという風に爆笑しているのである。


「あ、あはは……いやね。まさかそんなこと言われるとは思わなくてさ。私だって一応傭兵だよ? 泊まれる場所があるなら相部屋だって構わないさ。男と同じ部屋に泊まったことなんて初めてじゃないよ」

「あ、ああ……そ、そうなのか」

「ふふっ。いや、でも気遣ってくれたのは嬉しいよ。そういう男とはあんまり会ったことなかったから」


 そういってニッコリと健康的な笑顔で微笑むイルマ。

 私も、そう言われると悪い気はしないのだった。


「あ。そうだ。で、宿代は……そっちがもってくれるんだよね?」

「え? あ、ああ。まぁ、別にいいが……」

「よかった~。ちょうど私今一文無しでさぁ。あ、それって飯代も込みってことだよね?」

「ま、まぁ……」

「よし! じゃあ、飯食いに行こう、っと!」


 そういってイルマは立ちあがった。


「で、アンタも来る?」

「え? あ、ああ。そうだな。しかし、どこに食べに行くんだ?」

「まぁ、こんな寂しい町でも一応飯食うところくらいあると思うよ。あ、あの子達も連れて行った方がいいかな?」

「ま、まぁ、そうだな。では、行こうか」


 そうして、私とイルマは部屋を出たのだった。

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