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傭兵イルマ 2

「……革命?」


 私の隣を歩くイルマは目を白黒させて私に聞き返してきた。


「ああ。知らなかったのか?」


 むしろ、そんな一大事を知らなかったイルマに対して私も驚く。


「いや、まぁ、王都には一度も行ったことないし……へぇ~、そんなことがあったのかぁ」


 大して驚いているようでもなく、のんびりとした口調でイルマはそう言った。


「そ、そうなのか……しかし、あの革命には傭兵も大きく関わっていたんだがな……」

「ああ。それはなんか聞いたことあるよ。傭兵仲間でも今度大きな仕事があるんだってはりきっている奴らがいたなぁ。私は、そういう大きい仕事とか面倒だから引き受けなかったけど、なるほどね~」


 どうやら、イルマにとっては革命ということについても仕事の一つであって、大して重要なことではないらしい。


「……ほら見ろ。傭兵にとって、この国なんてどうでもいいんだ」


 と、後ろで拗ねたようにそういったのは、ミネットだった。


「ミネット……今、問題なのは仕事をしてくれるかどうかだ。傭兵達が国のことを大切に思っているかどうかじゃない」

「フンッ。そんな奴らに協力なんて、僕はホントはしてほしくないね」


 そういってミネットは顔を反らした。


「……で、あれが王様って、ホント?」


 イルマはこちらに関しては興味ありげに私に訊ねた。


「ああ……まぁ、『元』だがな」

「へぇ~、あんなチビッ子が王様だったのかぁ」

「おい! 誰だ! 今チビって言ったのは!」


 ミネットが私とイルマに向かって怒鳴ったが、私達は二人は振り返らずそのままにしておいた。


「で、こっちが断罪人、と」

「え? 断罪人は知っているのか?」


 イルマは、私がマリアンナのことを紹介する前に、黒いシスターを見てそう言った。


「そりゃあ、傭兵も断罪人も似たようなもんだからねぇ。全然知らないってことはないよ」


 マリアンナの言う通り、傭兵にしても断罪人にしても、お互いに対する認識は「同業者」といった感じのようであった。


「それで……ベルリヒンゲンまでは後何日くらいで着くんだ?」


 私は今一度本題に戻った。

 それまではイルマに対し、私達自身のこと、これまでの旅の経緯、そして、革命のこと……それらを話していたので大分遠回りしてしまった。

 イルマは少し考え込むように指先を顎に当てる。


「そうだねぇ……まぁ、後三日は掛かるかな?」

「え? まだ三日掛かるのか?」


 イルマは頷いた。

 てっきり後半日も歩けばいいものだと思っていたが……大きな誤算であった。


「……シャルル?」


 と、後ろから声が聞こえてきた。

 振り返ると、ムスっとした顔のミネットがこちらを見ていた。


「なんだ? ミネット」

「もう無理だ! ベッドで寝たい! ちゃんとしたご飯が食べたい!」

「し、しかしだな……」

「ああ。もうすぐ歩いた所に街があるから、そこで休んで行く?」


 何も知らないイルマが横からポロっとそう言ってしまった。

 ミネットはニヤリと微笑んだ。


「……わかった。そこで休もう」

「やった! 傭兵! よくやった!」

「え? 私、何かした?」


 喜ぶミネットを視界の端にしながら、私はイルマを睨む。


「君ねぇ……あまり余計なことは言わないで欲しかったな」

「え? ああ。ごめんねぇ。こういう性質なんだよねぇ。あはは」


 悪びれる様子もなく笑うイルマ。

 どうやら、体躯と同じく、性格も大らかというか……大雑把な少女のようであった。

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