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別れと旅立ち 3

「アルドンサ!」


 城内をくまなく探してみたが、アルドンサの姿は見当たらなかった。

 仕方なく、私は城の外に出る。

 すると、門のところでアルドンサは立っていた。


「アルドンサ……ここにいたのか」

「あ……シャルル」


 アルドンサは私の姿を認めると、悲しそうに俯いた。


「どうしたんだ? あ、いや……まぁ、エリスの提案が原因というのはわかるが……」

「……シャルルは、私と一緒じゃなくて平気なのか?」

「へ?」


 思わず私は間抜けな声を出してしまった。

 アルドンサは潤んだ瞳で私を見てくる。


「……私は、お前が勝手にクローネに行っている間、私は生きた心地がしなかった……お前にもしものことが会ったらと思うと……うぅっ……」

「アルドンサ……」


 涙ぐむアルドンサ。

 今になって黙って出て行ってことに対し、罪悪感が押し寄せてくる。


「……だから、もう二度とお前と離れ離れになりたくないと思ったのだ……それなのに……」

「アルドンサ……」

「なぁ? シャルル。わかっているんだ……エリスの提案が悪い提案ではないということは……だが、私には……」

「……なぁ、アルドンサ」


 と、私のアルドンサの肩に手を置く。

 アルドンサは目を丸くして私を見る。


「なんだ?」

「その……なんだ。本当に、悪かった」

「え?」

「勝手に黙って出て行ったのは本当に申し訳なかった……だが、どうしても、知る必要があると思って……」

「だったら、私も連れて行ってくれればよかったのに……」

「……その……君を危険な目にあわせたくなかったんだ」


 私がそう言うとアルドンサは一瞬、何をいわれたのかわからないようだった。

 しかし、すぐに頬を紅くして顔を反らす。


「ば、馬鹿者……わ、私は騎士だぞ。そ、そんな危険など平気だ」

「し、しかしだな……」

「あー、もう! お前まで父上のようなことを言うようになってきたな! もういい! そんな風に思われているのは甚だ不愉快だ! 私はエリスと共に断罪人の協力を仰ぐために行動するからな!」

「え!? お、おい、アルドンサ。だって……」

「うるさい! もう決めたのだ!」


 そういってアルドンサは怒りながら、城の中へ戻っていってしまった。

 なんだか、変なことになってしまった。


「ふぅむ……おかしなことを言ったかな?」

「いいえ。間違ってないわよ」

「え? うわっ!? アリシア……」


 と、いつの間にか隣にはアリシアが立っていた。


「いつからそこのいたんだ……」

「まぁ、そんなことはどうでもいいわ。ふふっ。まぁ、ああ言われたちゃ、騎士様も断罪人さんと一緒に行かざるを得ないわよね」

「そ、そうなのか?」

「ええ。でも、あの子は怒ってないわよ。むしろ照れ隠しってヤツなのかしら……ふふっ。二人とも若いわね」


 そういって微笑むアリシアは、見た目的にはどう見ても私やアルドンサよりも年下なのであったが。


「で、シャルル。明日にはさっそく行こうと思っているんでしょ?」

「え? あ、ああ……すまない」

「いいのよ。どうせまた、戻ってくるんだから」

「へ? 戻ってくる?」

「ええ。だって、クローネに戦争を仕掛けることになるんだから、拠点が必要でしょ? 拠点なりうる場所といえば、ここぐらいよ」


 アリシアはそういって溜息をついた。


「はぁ……もう時の流れとは無縁の存在になったと思っていたんだけれどねぇ」

「す、すまない……」

「ふふっ。いいのよ。乗りかかった船だもの。でも、やるからには絶対成功させるのよ」


 アリシアのその言葉に、私は今一度やる気が出てきた。

 傭兵の街、ベルリヒンゲン。

 いよいよ以て、私は大きな「流れ」の中心部にいることが自覚できるようになってきたのだった。

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