表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/227

愚者の帰還

 それから半日程歩くと、ようやく城が見えて来た。

 アリシアと私は顔を見合わせ、思わず笑顔になった。


「ね? 無事に帰ってこられたでしょ?」

「ああ、そうだな……まぁ、この後が問題なんだがな」


 私は思わず暗い顔でそう言った。

 アリシアは不思議そうに私を見てくる。

 黙って出てきてしまったのだ……どう考えたって、少なくともアルドンサは怒っている。

 「どうして私に黙って勝手に行ったんだ!」といわれ、その後、軽く一時間程度説教されるのは眼に見えている。


「……まぁ、仕方ないか」

「ふふっ。シャルル。アナタ、あんなにも恐ろしい目にあって帰ってきたのに、それよりも怖いものがあるっていうの?」


 アリシアが面白くて仕方ないという風にそう言った。


「そ、それは……怖いの意味が違うというものだ」

「ふふっ。そう。でも、アナタが思っているほど、あの騎士様は怖い女の子ではないと思うけれど」


 茶目っ気を含んだ調子でそういったアリシアは、私をおいて先に城の方へと歩き出した。

 私もその後に続いた。




「ただいま、みなさん」


 城に戻り、広間へと向かうと、やはり皆、広間に集まっていた。

 マリアンナ、エリス、ミネット、そして、アルドンサ。

 私とアリシアが広間に入ってきた途端に、それぞれ椅子に座っていた面々は、コチラに視線を向けてきた。


「シャルル……」


 そう呟いてアルドンサは立ち上がる。


「あ、あはは……す、すまなかった! アルドンサ」


 私はすかさず頭を下げた。

 そして、アルドンサの足音が聞こえてくる。

 頬を引っぱたかれる。それくらいのことは勘弁していた。


「……ばか」

「え?」


 しかし、聞こえてきた言葉に思わず私は顔を上げる。

 アルドンサは、泣いていた。

 両目から大粒の涙を流して。


「馬鹿者……心配、したんだぞ……」

「え、あ……す、すまない」

「わ、私は……いよいよ、シャルルに……見捨てられたかと思って……ぐすっ……ひぐっ……」


 すると、アルドンサはそれまで抑えていた感情を一気に爆発させるように泣き出した。


「あ、ああ……アルドンサ。馬鹿だなぁ、私が君を見捨てるわけないだろう?」

「ぐすっ……ほ、ホントか?」

「ああ、本当だ」


 すると、アルドンサは安心したようで、ニッコリと微笑んだ。


「私は怒っているがな」


 と、そこへ入ってきた抑揚のない声。

 見るとマリアンナが相変らずの冷たい目つきで私を見ていた。


「お前は私の所有物だったはずだがな。勝手な行動を認めた覚えはないぞ」

「あ、ああ。すまない、マリアンナ」


 私が謝るとマリアンナは少し顔をしかめて私を見た。


「謝らなくていい。で、どうだったんだ? クローネは」

「え? な、なんでクローネに行ったとわかるんだ?」

「お前のことだ。どうせそんな馬鹿なことをしたんだろうと思っていた。それにこのガキも知りたがっていたしな」


 そういってマリアンナがミネットを見る。

 ミネットは機嫌悪そうに顔を険しくし、その後、私を見た。


「おい、シャルル。僕だって心配だったぞ。お前が僕の面倒を見るのを放棄したんじゃないか、って」

「あ、あはは……すまない、ミネット」

「で、僕のクローネはどうだったわけ?」


 私は一旦間を置いてから面々を見て、口を開く。

 そして、クローネで起きたことを淡々を話し始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ