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神の護る都 6

 私とアリシアは、ソフィアに別れを告げ、カルリオン邸を出た。

 大通りを歩いても、先程の人の群れが嘘のように誰一人として歩いていない。


「……それにしても、モニカは一体何をしようとしているんだ?」

「え?」


 思わず呟いた私に、アリシアが訊ね返してきた。


「だって、そうだろう? こんなことをして、一体何になる? 市民の反感を買うだけだろう?」


 せっかく革命を起こしたのに、先の国王より酷い仕打ちをしていればいずれ国民からの不満はさらに増大することだろう。

 それとも、恐怖でそれを抑えつけられると思っているのだろうか……


「シャルル。あまり深く考えない方がいいわよ」

「え? どういうことだ?」

「アイツにそんな国をどうにかするなんて考えはないわ。もっと邪悪で、どうしようもない考えの元動いているのよ」

「邪悪……?」

「そうよ。そうね……例えば、皆も自分と同じような苦しみを味わえばいい、とか」


 それを聞いて思い出したのはジェラルドのことだった。

 ヤツも、自分が味わった苦しみを他人にも味わわせたいがために断罪人を作ったと言っていた。

 そうなると、やはりモニカもそうなのだろうか……?


「で、どうするつもりなのよ?」

「え?」


 アリシアが鋭い目つきで私を見てきた。


「あの子にあんなことを言った以上、アナタにも何か考えはあるのよね?」

「そ、それは……」


 言ってしまったものの、私には何も考えなどなかった。

 私に協力してくれる人……マリアンナ、アルドンサ、エリス、ミネット。

 そして、目の前にいるアリシア。

 たったこれだけの人数で一体何ができるというのか?


「はぁ……仕方ないわね、アナタ」


 と、アリシアに本心を見抜かれてしまったようである。


「す、すまない……」

「ま、何も考えていなくても、相手のことを思いやっての発言だってことはわかるけどね」


 そういってアリシアはニッコリと微笑む。


「まぁ、そんなアナタに300年生きている私なら、多少の助言を与えてあげることが出来るわ」

「え? 助言?」

「ええ。その話はお城に戻ってからね」


 そうして、私とアリシアは大通りを通って門を抜け、クローネの外に出た。

 今は何もできない……だが、逃げるわけではない。

 必ずここに戻ってくる。

 私は今一度巨大な都市を振り返り、硬くそう誓った。


「シャルル」


 と、アリシアが私を呼んだ。


「早く来なさい」

「あ、ああ。わかっている」

「お城までまだ長い距離が――」


 アリシアがそういい終わらない、その瞬間だった。

 アリシアの頭部がいきなり空中を舞った。

 そして、残った首から血しぶきが飛び出す。


「……え?」


 見ると、アリシアの背後には剣を持った修道服の人影があった。

 断罪人だ。

 断罪人にアリシアの首が刎ねられたのだ。

 そのことに気付き、私はようやく事態を理解した。


「あ……アリシアぁぁぁぁぁ!!!」


 そして、大声で絶叫した。

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