敗者の旅路 7
「すいません。ちょっといいですか?」
階下に下りると、広間で家の主である先ほどの巨体の村長が椅子に座っているのが見えた。
村長も私を認めると、その険しい目つきで私を見る。
「……なんだ?」
「あ……す、すいません。申し訳ないのですが、食料を分けていただけないかと思いまして……」
村長は眉間に皺を寄せて私を睨む。
「あ……金なら後で払います。少しでいいので……」
すると村長は立ち上がり、部屋の奥の方へ向かっていった。
そして、しばらくすると、その手に一斤のパンを手にして戻ってきた。
「……今は、これしかない」
「え? こ、これだけ?」
「……ああ。不満か?」
村長はまた険しい目つきで私を見る。
「そ、そんなことありません……ありがとうございます」
私はオズオズとそのパンを手に取った。
「……お前達、どこから来たんだ?」
「え? えっと……」
と、いきなりの質問に私は戸惑った。
あまり私達自身の素性が分かってしまうような答えを言うべきではないはずだ……
「あ……お、王都です」
「王都……どうしてこんな辺鄙な村まで?」
「ちょ、ちょっと……事情がありまして……」
なんというか……つくづく私は嘘が下手な人間だとこの時は思った。
村長は険しいままの顔つきで私を睨んでいる。
怪しまれただろうか……?
「……そうか」
それだけ言うと、村長はまた椅子に腰掛けた。
「あ……ありがとうございました」
村長は何も言わずに黙っていた。
なんだろう、あの村長……
何か怪しいような気がするが……私の杞憂だろうか?
「……とにかく、どうにかしてこのパン一斤だけで、あのわがまま陛下を納得させなければな」
私は頭を切り換えて階段を上って行った。




