敗者の旅路 6
そして、私と国王だけになった部屋で、私は国王に、改めてこれまでの旅の経緯を話していた。
国王はまるでおとぎ話でも聞くかのように興味心身で私の話を聞いていた。
その子どもっぽい顔を見ていると、なんだか私も、まるで小さな子どもに話をする老人のような気持ちになってきてしまってなんだか妙な気分だった。
一通りの話が終わった頃には、既に窓の外は夕暮れになっていた。
「へぇ~……シャルルの話は面白いな」
国王は感心した様子でそう言った。
「あ、あはは……そうでしょうか?」
「ああ、そうだ。もっと聞きたいぞ。しかし……」
「しかし、なんですか?」
「……腹が、減ったな」
そう国王が言うと、ぐぅ~と、まさしく丁度国王自身の腹が鳴ったようだった。
国王は顔を紅くして私から顔を背ける。
「あはは。わかりました。家の主から何か貰って来ましょう」
「あ、ああ。ありがとう……」
「いいんですよ。気にしないで下さい」
そういって私は立ちあがる。
「あ……シャルル」
と、扉の取ってに手をかけると、国王が呼びとめて来た。
「はい? なんでしょうか。陛下」
「あ……ちゃんと、戻ってくるよな?」
不安そうな顔でそう訊ねてくる国王。
その顔は、小動物を思わせるような、どこか護ってあげたくなってしまうような表情だった。
「ふふっ。大丈夫ですよ。ちゃんと戻ってきます」
そういって私は扉の外に出た。
「随分と楽しそうだったじゃないか?」
「え? うわっ!?」
と、扉を開けた瞬間、目の前には、アルドンサが腕を組んで立っていた。
まさしくその表情は不機嫌そのもの……私は相当不味いと思った。
「あ……アルドンサ。分かっていると思うがこれは仕方ないことで……」
「ああ。そうだな。仕方ないよな。シャルルは、あの『元』国王のような小さい子どもが好きなんだろう?」
「な、なんだ、その引っかかるような言い方は……」
「別に? 私は自分が思ったことを言っただけだが?」
アルドンサは馬鹿にしたような顔で私を見る。
「……アルドンサ。どうしたんだ? さっきから君らしくもないぞ?」
「私らしくない? はっ! そうか? 私はいつもこうだぞ? そもそも、私はアイツが嫌いだったんだ。いつもいつもわがままばかりで……お前は知らないだろうが、アイツのわがままで私はかなり面倒な目にもあったんだぞ?」
アルドンサの物言いからするに、確かにそのようだった。
いや、まぁ、国王の振る舞いを見れば、アルドンサが苦労したのもわかるのだが……
「しかし、アルドンサ。今は陛下も苦しい状況なのだ。私達よりも年下なわけだし、ここは広い心で多少のわがままも多めに見てやらないと……」
「……アイツだけが、苦しい状況なわけじゃないだろう」
と、アルドンサは俯いてしまった。
なんだか余計なことを言ってしまったのだろうか? 私は不安になった。
「アルドンサ? 大丈夫か?」
「……さっさと下の階に行ったらどうだ? 家の主から食料を貰うんだろう?」
アルドンサは私に背中を向けてしまった。それは明確に、これ以上私と話すつもりはない、という合図だった。
「……ああ、わかった」
私は何も言うことが出来ずに、階段を降りていった。




