クローネは燃えているか 6
城門を抜けると、馬車とその側にアルドンサが立っていた。
アルドンサも私を見つけたようで、こちらに向かってくる。
「シャルル! 大丈夫だったか?」
鎧姿のアルドンサは私の方にガシャガシャと音を立てながらやってくる。
「ああ、アルドンサ。心配かけたな」
「……モニカに何か言われたのか?」
「いや、まぁ……ところで、マリアンナとエリスは?」
すると、アルドンサは気まずそうに私から顔を反らす。
「あ、いや、その……ニコラスとサンチョはちゃんと見ていたというのだが……」
「え? どうしたんだ?」
「……いなくなった」
私はその言葉を聞くと、慌てて馬車の方に駆け寄って行く。
「あぁ! シャルル様!」
「お、俺達ちゃんと見てたんですよぉ! そ、それなのに、アイツらいつのまにかいなくなりやがって……」
慌てた様子でニコラスとサンチョは言う。
馬車の扉を開けてみると、確かに二人の断罪人は姿を消していた。
「……いや、いいんだ。お前達のせいじゃない」
「あ、ああ……すいません。シャルル様……」
二人は顔を見合わせホッと胸を撫で下ろした。
「しかし……なぜアイツ等はいなくなったんだ?」
アルドンサがわからない様子でそう言った。
「さぁな……まぁ、勝手な奴らだからな」
「そうか……それにしても、早く屋敷に帰って父上にこれは一体どういうことか訊ねなければな」
「父上? カルリオン公爵に何か話すことがあるのか?」
すると、アルドンサはムッとした表情で私に詰め寄ってきた。
「当たり前だ! 王国騎士団の指揮官はカルリオン将軍だぞ! それなのに、いつからあんなどこの馬の骨とも知れないヤツが指揮を執るようになったのだ!」
「あ……そ、そうか」
アルドンサの剣幕に圧され私は思わず身体を反らしてしまう。
「はぁ……なぜ父上はこのことを話してくれなかったのだ……」
「それは、君が心配すると思ったからじゃないか?」
私がそういうとアルドンサは悔しそうに俯く。
「……私はあの人の娘なのだから、そういうことはキチンと話してほしかった」
「アルドンサ……」
「……とにかく、屋敷に戻るぞ。ニコラス、サンチョ! 馬車を出せ!」
そういわれて慌てて二人の従者は馬車の運転席に飛び移る。
「アルドンサ……公爵にも理由があったのだと思うから、あまり責めない方がいいと思うぞ」
「わかっている。さぁ、シャルル。我が家に戻ろう」
私とアルドンサが乗り込むと、馬車は大きく揺れて動き出した。




