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クローネは燃えているか 4

「おやおや~? どうしたね? そんなに驚くことじゃないだろう? 俺はあの革命軍に命をかけて潜入して王国のために働いたんだぜ? 騎士団の指揮官になることぐらいおかしな話じゃないだろう?」


 エリックは私達を馬鹿にしたようにそう言った。


「エリック、お前……潜入だと? お前は……」

「あー、なんとでも言ってくれよ、旦那さん。でも、俺はあくまで王国のために働いたんだ。あんな断罪人共や傭兵共に同情したことなんて一度もないね」


 ニヤリと笑いながらエリックは私を見る。

 誰が見てもエリックは革命都市の勢力を裏切って王国側に付いたのだ。

 それなのにそんな裏切りものが王国騎士団の指揮官だと?


「……陛下! なぜこんなヤツを指揮官にするのです!?」


 しかし、私が言うよりも早くアルドンサが国王に向かって怒鳴った。

 その声に国王は少し驚いていた。


「な、なんだよ……別にいいだろ。僕の勝手じゃないか」

「貴方は……それでも一国の王ですか!?」

「なっ……! お、おい! カルリオン! 言わせておけば……!」


 アルドンサと国王は睨みあった。


「アルドンサ。落ち着け。落ち着くんだ」


 すかさず私はアルドンサを宥める。


「陛下もぉ、あまり興奮なさらないでください。アルドンサさんはちょっと勘違いしているだけですよぉ」


 一方モニカもアルドンサを宥めた。

 そして、モニカは続けてエリックの方を見る。


「それに、エリックさんはぁ、ちゃ~んと、騎士団の指揮をして、革命軍をやっつけてくれるんですよねぇ?」

「え? あ、ああ。もちろんですとも。聖女様。私にかかればすぐにでも革命軍とやらを鎮圧してご覧にいれましょう」


 と、謁見の間に慌しく走りながら一人の兵士が入ってきた。


「も、申し上げます! 西方より武装した大軍が、王都に向かって進行している模様です!」


 謁見の間にざわめきが起こった。

 ついに革命軍がやってきたのだ。

 しかし、私はその知らせを聞いてある疑問が頭に浮んだ。

 それは今日、革命軍がやってきたということだった。

 クリスタの話では、明日に革命が敢行されるはずだ。

 私達が逃走したから、それを早めたのだろうか……?


「よし。おい、エリック。さっそくそいつ等をぶっ潰してきてくれるんだよな?」

「ええ。もちろんです。そのために私はこうしてここにいるのですから」


 エリックは国王に対し深く頷くと、私達に対してまた得意そうな笑みを浮かべる。


「じゃあ、そういうことだから、お二人さんは俺が革命軍をぶっ潰すところを大人しく見てなよ」


 そういってエリックは笑いが抑えられないのか、ニヤニヤとしながら謁見の間を出て行った。


「くそっ……なんであんなヤツに神聖な騎士団を指揮されなくてはならないのだ……!」


 アルドンサは心底イラ付いているようである。

 確かに私としてもあのエリックが王国の騎士団を指揮するなど……あまりにも納得いかない。

 エリックは断罪人達だけでなく、革命都市に集まった傭兵たちまでも自分の出世のために利用したのだ……

 そう考えると私の中にも自然と怒りがこみ上げてきた。


「ああ。じゃ、そういうことだから、お前達も下がれ」


 と、国王はぶっきら棒にそう言うと椅子から立ち上がった。


「あ。後、カルリオン。今度僕に失礼な口を聞いてみろよ。処刑してやるからな」


 フンッと鼻を鳴らして国王は私達の前から去っていった。


「……当たり前だ……こんなおかしな国……革命が起きて当たり前だ……!」


 屈辱のあまりアルドンサは唇を噛み締めて押し出すような声で言った。


「アルドンサ……大丈夫か?」

「……すまない。少し頭に血が上ってしまった。外で冷やしてくる」


 そう言ってアルドンサはフラフラと歩きながら謁見の間を出て行った。

 私もそれについていこうとした。


「あ、シャルルさぁ~ん」


 と、そこへモニカが私を呼ぶ声が聞こえた。


「え? あ……な、なんですか?」

「少しアナタとお話したいことがあるんですけどぉ、よろしいですかぁ?」


 私と話したいこと?

 そんなことを言われると勿論予想外のことだったので面食らってしまった。


「ダメ、ですかぁ?」


 私はアルドンサの方を見る。


「……私は大丈夫だ。モニカと話してくるといい」

「あ……ああ。わかった」


 アルドンサのことはもちろん心配だった。

 しかし、相変らずトロンとした目つきで柔らかい笑みを浮かべているシスターが、私に何の話があるのか気になってしまったのだった。


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