クローネは燃えているか 3
「……で、何の用なわけ?」
ものすごく不機嫌そうな顔で黄金の椅子に踏ん反り返りながら、国王は私達に訊ねた。
私、アルドンサ、モニカは並んで国王の前に立っている。
「陛下、率直に申し上げます。革命軍がすぐにでも行動を起そうとしています」
「はぁ? 革命? なにそれ……ああ、言ってたね、そんなこと。はぁ……何? そんなことを言うために僕を叩き起こしてくれたの?」
「あ……そ、そうです。陛下、なんらかの対策を講じないと国内で混乱が起きます!」
しかし、私の熱意とは正反対に国王の視線は冷ややかだった。
「混乱ねぇ……ああ、ちょっと、そこのお前」
と、国王は近くにいた大臣風の男性を呼びつける。
「アイツ呼んできてよ。このことでしょ? アイツが言ってたのって」
国王の言葉を聞くと男性はそのまま謁見の間を出て行った。
「あー……で、なんだっけ? ああ。革命でしょ。知ってるよ。大丈夫だって。どうせ騎士団が出向けば半日くらいでそんな奴らたたきのめしちゃうんだからさ」
「し、しかし……陛下。相手は革命軍です。革命が起きるということは……この国のあり方に問題があるのではないでしょうか?」
私は、ついそう口走ってしまった。
アルドンサが目を丸くして私を見るのがわかった。
どうしてそんなことを言ったのかはわからなかったが、とにかく言ってしまった。
無論、常々そう思っていたからこそ、そう言ってしまったのであろうが。
「何? お前……それってつまり、僕が悪いって言いたいの?」
「そういうわけではありませんが……民衆が革命を起こすということはそれ相応の理由があると思うのです」
「はぁ? 何それ……知らないよ。僕はちゃんと王様の仕事をしているよ。革命を起こすのなんてそんなの国民の勝手じゃないか」
勝手……
国王を見ていると、なんだかかつての自分を見るようだ。
自分が悪くない。全て悪いのは周りの環境せい……
だからこそ、私はそんな国王を見ているとより一層憤りを覚えるのである。
「しかし、陛下――」
「そこらへんにしておきなよ、旦那さん」
そこへ、割って入ってくる声。
聞き覚えのある声に思わず私は顔を向ける。
「なっ……お、お前……!」
「やぁ、久しぶりだねぇ、旦那さん。おっと、奥さんもいたのか。なんだい? そんなに血相変えてさ。これから革命でも起こるっていわんばかりの顔じゃないか」
ヘラヘラと笑いながら、その男は私達の前にやってきた。
「で、陛下。何の御用でしょうか?」
「どうもこうも、お前が今言ったとおりだよ。革命が起きるんだってさ。お前の言ったとおり」
「ハハハッ! やっと来ましたか! 大丈夫、お任せ下さい、陛下。このエリック・シュナイダー、命にかけてこの王国を逆徒共から守ってご覧にいれましょう」
「当たり前だ。そのためにお前を騎士団指揮官にしたのだからな」
私とアルドンサはただ呆然としてしまった。
そんな私とアルドンサを見て、エリック・シュナイダーは満足そうに下卑た笑みを浮かべたのだった。




