どうでもいい話・ドクロクーガー再び
「いーいーのさん、ちょっといいかしらん?」
奇怪な藤に、俺はいつも通り明るく答える。
「いいですわよん」
「それは変だよ?」
無理せず、いつも通りの自分自身であるべきだと思いました。ならこんな事言っちゃう自分も自分自身だから、まあいいや。
「それで、どうしたの?」
「実はねぇ、書いてみた」
何々動画かな? 歌ったり踊ったりして今度は書くのか。
藤は『じゆうちょう』と書かれた傷んだノートを両手で持っていた。
「やく・いつ本」
「なに、みつると俺でカップリング作ったの?」
「みつる? この間見せたフィギュアあるでしょ? あれあれ」
と言われて思い出した、気だるげな可愛らしい少年のフィギュアの話である。
灰色の髪、失意の瞳、垂れた両手、緩やかな猫背、後ろにそびえる死神『災厄死霊ドクロクーガー』……。
少年の名前を聞いていないから何とも言えないのだが、ドクロクーガーの印象が強すぎて、何も言えない。
「て、ちょっと待って。あの少年と俺で? 絵?」
「絵」
見るべきかどうか悩む。俺は少年が好きであるのは間違いないが、実際の行為に及んでいるとしたら、引くことはないが何か歯止めが利かなくなる気がする。
「うーん、やめ……」
藤の笑顔が急に冷めていき、両腕は力なくじゆうちょうのみを握り締め瞳には鬱屈とした色が滲み始めている!
「やめられないとまらない!」
俺って悲しいくらいチョロイ男だ。何しても好感度あがるキャラレベル。今流行りのちょろインならぬ、チョーロー? それ爺だ。
で、彼女が嬉々として見せたそれは、なかなか背徳的な絵であった。
下に組みふされているのはデフォルメされた黒い髪の少年で、それを襲っているのは、やたらと鉄を纏った死神のような……。
そう、紛うことなく災厄死霊ドクロクーガー!
って黒い髪の少年は俺ですよね!?
いやぁ、改めて見るとドクロクーガーは格好いいな。絵的にはメタリックな昔懐かしのロボット風だけど、そこに悪役然とした頭蓋骨ってのが、意外なほどマッチする。
藤は男のみならず、こういう機械系のものも創れる優秀な人なのだろう。イラストレーターとか向いているんじゃない?
さてと、充分と考えを迂回させたので、そろそろ直進させますか、話を。
「なあ、やく・いつってどういうことだ?」
「災厄死霊だから、別にやくでもいいでしょ?」
げんなりとした表情の俺を、藤はにこにこと見ている。
きっと彼女は、妙に湿っぽくなったのも、敢えてやく×いつといったのも、俺のこんな表情が見たくてやったことなのだろう。
俺の沈んだ表情が嬉しいのだろうか、それで幸せなのだろうか。
わからないが、それが好意的なものならば、俺はそれでも構わない。
少し性質の悪いジョークだけど、それでも藤がいつもと少し毛色の違う笑みを浮かべている。
「あんま意地悪はしないでくれよ」
「ふふっ、ごめんごめん」
かぁーっ! 許せちゃうんだなこれが!
こんなに激甘なんだから、どうか見捨てないで下さい。俺、必死だな、本当に。




