文芸部に行こう!
満をじして復活。他の作品は完全にエタるという状況。ほら、忙しいから。
部活動とは青春の中心であると見える。
運動と文化の両面をカバーする、だがそこに自由はあるか?
答えは否! だって先輩とか後輩とか言う前に、他人と関わる時点で自由ってなくなっちゃうし。
何より本当に自分の趣味に合うかどうか、したいことができるかどうかってのが問題なんだよ。
ショタコン部がありますか? オタク部とかアニメ部はあるんですか!? ないでしょうそうでしょう! だから行っかない♪ だって話が合わないんだもん。
と、なにゆえこんなことを考えたかというと、藤がこんなことを言ってきたからである。
「ねえ飯野くん、部活入ってる?」
「帰宅部だけど。なんで?」
帰宅部は入ってるとは言わないでしょ、なんて野暮なことを言わず藤はうむうむと老成したように言う。
「都合がいいですなぁ、実は文芸部の見学にでも付き合ってもらおうかと思いまして」
つ、付き合う!? そんなの良いに決まっているじゃないですか! と言って後の祭り。
興味もない文芸部の見学にいくことになってしまった。なんて直情的、純粋な心、自分が好きになるほど清いね。
さて、文芸部がどのような部活か。藤曰く、漫画書いたり小説書いたりする場所。
そのように考えると俺はなんにもできない。文章と言えば余計なことを書き足し、絵は小学二年生の頃から進歩がない。心のみならず絵までショタとかもう言うことないね。
一方、藤は絵も書くし小説も書くらしい。更に、腐った女子が他にいくらかいるだろうという考えまであるらしい。かなり捗っている。凄い意識高い。そんな覚えたてのよくわからん言葉を使いたくなるほど藤は凄い活動的。
いつも閉鎖的で誰とも会話しなかった藤が、友達すらつくろうなんて、凄い進歩。
お兄さんと仲直りしたとか、姉貴と会ったとかでなんかあったのだろう。全く羨ましい、俺はいまだに色々引きずっているのに。
でも藤が幸せになる分には構わない。その手伝いをして好感度を上げるのもまた俺の青春ではないか。
俺の青春は部活動にはない、藤にのみある。
崩れた家庭、伸びない成績、歪んだ性癖、そんな荒んだ高校生活でも俺が楽しいと感じるのは、藤がいるからだろう。
恋は盲目、あらゆる汚点が目に入らないほどに俺は藤しか見えてない。
もう面白いことも意味不明なことも言えないから、話進めまーす。
訪れたのはなんと生徒会室! ここが文芸部の活動場所らしい。
玄関? 昇降口? 言い方は分からないけど、まあ下駄箱の近くにあるここはまさしく生徒達の玄関みたいな場所で、結構よくに目に入る。誰も入ろうとはしないけど。なんか静かで気まずいんだよね。
しかし生徒会室っていうだけでなんか興奮するのは俺が日本の文化に毒されすぎたからだろうか。
生徒会、すなわち強い、すなわち教師より偉い、すなわち権力者、すなわち女ばっかり、なにそれ完全な敵じゃん、全員捕えるしかない。
大分生徒会に偏見があるようだが、上の意見は意外とまともな方である。
生徒会=能力者とか学園最強とかの作品まであり、挙句には生徒会長は基本的にエロイ目に会うとか、学校を運び出すとかだってあるし。
ところで最近、俺、気付き始めたんだ。ショタより女の子の方が好きなんじゃないかって。
だってほら、最近のキャラクターとかって男の子でも女の子くらい可愛く描かれてるし、声優も女性だし、だからまあ、作品中でいかに男だ男だと言われようと、股間にワイルドソウルがあろうと、ショタはもう女性なんじゃないかな?
ショタが女性となると、ショタコンが普通になる。つまり普通はショタコンなんだよ!
っていうか男が声優するショタキャラの少なさよ。っていうかパッと出ないレベル。主人公クラスはみんな女性。まあ男性もいくらかいるし、それがいけるかどうかって言うと……あれ? 案外いける? ……でも大人の男だからね、実際の少年との関係は色々あれだし、ショタコンとは言えないんじゃないかなぁ? ただのホモにならない?
ま、性別の壁なんて些細なものだ。このジェンダーなんとかの時代、男が主夫になり女が働いても何もおかしくないのだ。だから男が誰を好きになろうと関係ないよね、むしろ愛さえあれば関係ないよね!
余談が、過ぎた。(司馬風)
本当に余談が過ぎるにも程があるよ、無駄話だよ、救いようがないよ。
「失礼します」
藤が淑やかに体を少し前に傾け、両手をおへその前くらいに添え、入った。
俺は無言で中に入る。
机を六つくらい合わせて作った長方形の大机は前後に長くあり、席は左右に六つずつ、手前と奥に二つずつある。
左に一人、右に一人、手前に後姿だけ見える一人の三人に加えて、一番奥、俺達と正面きって一人、一際目を引く女性がいた。
藤と少なからず雰囲気が似ている、眼鏡で黒髪で美人なだけか。違いは、藤が柔らかな雰囲気を持っているのに対してあの人はかなり厳しそうな感じだということと、あっちの人は髪の毛が随分長く、束ねても背中の真ん中くらいまであるってことか。あ、あと藤の方が胸デカイ。
美人だけど藤には敵わないな。なんて考えているとその人がなにか言った。
「どうしました?」
藤が答える。
「文芸部の見学に来たんですけど……」
「おお! 新入部員か! ありがたいけれど、生憎活動は普段しないからなぁ……」
奥の人の最寄にいる、右側の男が興奮して立ち上がって言う。
「活動、してないんですか?」
「はい、すいません。でも説明なら今でもできるから」
とその男は少しこっちに寄ってきた。い、いや! 寄らないでください!
無論藤に寄って、そのまま右側の空いている席に誘導した。
「君は?」
「俺は付き添いなんで。待たせてもらっていいですか?」
了承されたので、左側の空いている席に座らせてもらった。
ふむ。
生徒会室であるが、別に漫画もなければ食べ物もない、冷蔵庫もだ!
やっぱり現実の生徒会ってこんなもんか。とは思うがゴミ箱みたいな箱におもちゃの刀がある。
学園祭の時に使う衣装とかも生徒会貸し出しだから結構そういう道具が置かれるのだろう。他にもバスケボゥ(ネイティブな発音)とか大縄の縄とかある。家の倉庫かよっ! 最近、面白いこと言えないや。
しかしあの男、藤に近づきすぎだろ。殺そうか、それとも半殺し、それとも無殺し、つまり何もしない。まあ無殺しだよね。
まあ、藤は美人だし、あの眼鏡野郎は出会いがなさそうだもんなぁ! くくっ、虚しい奴、精々女子と戯れることができる一瞬を味わうがいいさ!
……俺って家庭の事情がどうとか言う前に性格悪いな……。
「なあお前、あの飯野伊津男か?」
俺の席の右、つまり生徒会室入って左側の奴が話しかけてきた。
なかなかの爽やか系で背がほどほど低い、うーん、ちょっと可愛いな。
「あの、ってなんだよ? お前は誰だ?」
「俺、文芸部の野川黒雄っていうんだ! 噂は聞いてるぞ、ショタコンでクラスからハブにされてるって」
「あ、こらてめぇ何年だ?」
「同じ二年だよ、そんなに怒るなって。悪ぃ悪ぃ」
なにこの一般的な会話、凄く懐かしい。
「で、なんだ、俺にどうして欲しい?」
「どうしてって? ……あ、お前も文芸部入れよ。別に何もしなくていいんだぞ?」
ここで無駄知識、俺が部活に入らない理由その一、部費が取られるから。
バイトは禁止でできない。いや何度かトライしたけど一度発覚しちゃってもう二度と出来ないの。
だから親父の仕送りと姉貴が気まぐれでくれる金で生活するしかないと。
実はもともと、姉貴は金をせびってばかりだったが、最近は働いて家にお金をくれるようになった。藤さんが姉貴を改心させたおかげである。
昔は親父の仕送りを母さんが姉貴に貢ぐからマジで金に困る時があった。しかもコンビニ弁当を買う、そんな感じ。
「俺、金がないんだよ。だから部費とかマジ無理」
「部費なら別になくてもいいですよ? 部誌は毎期のテスト毎に発行しますが、別に作品も作らずただ駄弁るだけの人もいますから」
とさっき奥にいた可愛い人が。部長なの? 生徒会長なの? ここじゃ生徒会役員なのか部員なのかもわからない。
「おいクロ、この方は?」
「ああ、文芸部部長にして生徒会会長、斉藤清さんだ。賢くて剣道の天才でそっちでも副部長をしている我らが誇りの生徒会長! いやぁ、俺もついさっきまでは憧れてたんだ……」
「ついさっきまで、とは?」
「あの子、可愛くね? お前が付き添ってきた……」
なんだこの男殺すぞ! あ、いや、当然無殺しですけどね。でも頭をグーで叩く。
「って、なにすんだよ」
俺が手加減したから、まあそんな反応。
話が聞こえたのか藤はこちらを見てにっこり笑った。
「私は生涯、飯野くん以外の人と付き合う気はないですよ?」
聞いたかお前ら! にっこり笑ってだ言ったぞ!? くぅー、俺達に言えないことを平然と言ってのける、そこにシビれ……もう以下略でいいよね。
藤さんはついて来い系のオラオラな人だから、これくらいの台詞じゃ俺は動じない。
「でも、飯野くんが他の人と仲良くするのはいいよ! いつくろ? それともくろいつ? あー、迸るゥ!」
ほ、ほとばしる? 何も迸らないんだけど。
腐じさんは突いてこい系の人だから、もう俺は動揺しかしない。
あらら、非モテ眼鏡もクロも部長様も、残りの本読んでる女子も流石に藤を見ていた。
流石にキャラ濃いしね。俺だって最初は開いた口が塞がらなかったものだ。
「藤はどうしようもない腐女子だけど、それでいいのか?」
皆、沈黙。沈黙の文芸部、まあ俺らが入る前から黙々と作業してたけど。
「別に他人の趣味をとやかく言うことはないです。ただあまり騒がしくされると困りますので」
斉藤清さんは視線を上げず、務めて冷静そうに言った。なんて呼べばいいかな……。しかし名前覚える必要あったかな?
「い……いいんだ! 別に腐ってようが同性愛者だろうが我々は博愛だ! どんな人でも受け入れて見せよう!」
この非モテは格好良いな、変な方向で一直線、むしろ清清しい。ドブの清流と名付けよう。でも長いからドブと呼称する。
と、クロが何か耳打ちしてきた。
「なあ、藤さんのあれって、素なのか?」
「と言うと?」
っていうか顔が近い。キスしちゃうだろうが。いや俺はホモじゃない。ただこいつの顔が妙に可愛らしいだけ。俺の相手は藤、こいつの相手はそこで本読んでる女で良いだろ。
「ああいうのってさ、結構自分を守るために言ったりするじゃん。男寄せ付けないとか。藤さんって本当はまともだけどわざとああいうこと言ってるとか……」
「それは知らんが、そうだとしてもお前に心を開かないことは確かだ」
「ひどっ!」
最近他人と喋ることなかったから思わなかったけど、こいつらうざいなぁ。真庭蝙蝠か。
ああ、こうやって一人アニメの話とか空想するとなんか落ち着く。俺って一人適正あったのな。寂しい男だ。
んで、俺は授業の予習を始め、他の奴らもそれぞれ作業を始めた。
藤だけはまだドブの話を聞いているが、あれでしょ? テスト期に部誌出すだけでしょ? 何をそんなに話しているのかなこのドブ野郎はよぉ!
「で、A4だと二段組の三十文字二十一行が一ページで、ペンネームとかは予め用紙に書いておいて欲しいんだ。原稿用紙に直接描いてくる場合は〆切りの三日前には提出して欲しいけど、最悪一日前でもなんとかするから。あとルビの振り方は……」
うわなんか凄く専門的な会話してた。こわ、ドブ怖い。でも藤に近寄んな。
もしかしてあれって常識の範疇? ああいう説明をするのが普通なのか? 俺には女子に飢えた変態にしか見えない。
まあ何でもいい。藤が俺から放れるという想像がつかない。もはや磁石の関係。無論藤がSで俺がN,そして俺は砂鉄であの人はU字磁石くらいある。圧倒的戦力差。
しかし暇だな。勉強は家でもできるし、藤がいるけどここにはドブとクロとキヨがいる。あ、あと読書の人も。
ドブは純粋になんかきもい、クロはうざったい、キヨはなんか一緒にいると俺が居た堪れない。あ、あと読書の人は……まあ何でもいいわ。
こういう時は、妄想に限る。




