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旧作1-3  作者: 智枝 理子
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Ⅳ.flyby

「レイリス。何、歌ってるんだ?」

「あんまり夜更かしばっかりするなよ」

「子供じゃないんだから」

「子供だろ」

「うるさいな」

 あぁ。

 これはリリーに似てるって言われても仕方ないな。

「エレが良く歌ってた歌だよ」

「エレって…」

「お前の母親だ」

 こんなに長い時を生きているのに。

 忘れられない記憶として色濃く残るのは、愛という感情と共に記憶してるからなんだろうか。

 エレと出会ってからの記憶はすべて、思い出せる。

 エルと過ごした時間も。

「エルの目を見てると思い出すよ。本当に同じ瞳の色だ。宝石のように綺麗だった」

「…宝石」

「もう少し、エレに似れば良かったのに。…いや、童顔なのは似てるかな」

「なんだよ、それ」

「雰囲気はエレに似てるよ。女みたいって言われないか」

「最悪だ」

 不機嫌になったってことは。

「言われたことあるんだな」

「笑うなよ」

 そのふてくされた顔。

 変わらないな。

「砂漠は本当に人が途切れないな」

「クロライーナもそうだっただろ」

「夜の街なんて知らないよ」

「エルは規則正しい生活してたからな」

「させてた、の間違いだろ」

「この辺、エレと歩いたよ。マーメイドの涙っていう真珠を探してたんだ」

 エレはいつも楽しそうで。

 何かを見つけてはすぐに走って行ってしまうから、いつも慌てて追いかけていたっけ。

「マーメイドの涙って、これだろ?」

 エルが、真珠を二つ出す。

「なんで、二つ揃ってるんだ」

 真珠を二つ手に取る。

 一つは、俺がエレと見つけたものだ。

 エレが死んだ後に、誰かに渡してしまったけれど。

「一つは俺がセルメアで見つけて、もう一つはリリーが砂漠で見つけたんだ」

 それが、巡り巡って、エルとリリーの元へ…?

「リリーと一緒に探そうと思ってたのに。リリーがもう見つけてたんだよ」

 何が不満なんだ。

「お前、やっぱりエレの血を引いてるんだな」

 エレみたいだ。

「…何が?」

「子供って不思議だな」

「何の話しだよ。わかるように話せ」

「お前さ、俺の力を引き継いでるなら、精霊玉を作れるんじゃないか」

「精霊玉?エイダが契約の時に渡した?」

「あれは、精霊の想いの結晶だ。契約なんてしなくても作れる」

「…俺は人間だ」

「魔法と一緒だ。リリーの為なら作れるかもしれない」

 エルの手を、エルの胸に押し当てる。

「ほら。願いと想いを込めて」

 俺が、エレに贈ることができたように。

 エルもきっと。

「…あ」

 黄金に輝く光が、エルの手に収まる。

「できただろ」

「できた」

 あぁ、その笑顔。

 変わってない。

 昔から同じ。

 エレと同じ。

「リリーに渡してやれ。首輪になる」

「首輪?」

「迷子になっても、自分の力を追えばすぐ見つけられる」

「…そんなもの、渡して良いのか」

「どうせ離れるつもりがないなら、持っていても持っていなくても一緒だ」

 きっと、喜んで受け取るだろう。

「ほら、もう帰れ。明日にはニームに到着する」

「一つ、聞きたいことがある」

「なんだ?」

「リリーは…。俺の子供を生んでも平気なのか?」

 エレのようにならないか、心配なのか。

「心配要らない。人間同士の子供なんだから」

「本当に?」

「あぁ。お前は人間だ」

 だから、人間として短い一生を終える。

 俺より先に死んでしまう。

「なら、良いんだけど」

「子供が出来たのか?」

「できてないよ。…たぶん」

 人間は、子供を産める。

 そして、精霊より長い時を、世代交代しながら生きられる。

 あぁ。エレ。

 そういうことか。

「子供が生まれたら教えてくれよ。会いに行く」

 人間は素晴らしい。

 エレと俺の愛が、絆が。

 遠く繋がっていく。

「砂漠、離れていいのかよ」

「孫の顔を見に行って何が悪いんだ」

「…馬鹿」

 楽しみが増えたな。

「おやすみ、エル」

「おやすみ、レイリス」

 去って行くエルを見送る。

 エレ。

 エルを生んでくれてありがとう。

 愛を教えてくれてありがとう。


END.


読んで頂き、ありがとうございました。


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