自分の周りは馬鹿でできている
「……くそっ」
真人は一時限目が終わっても探し続けたがなかなか見つからない。
一応2組の教室も覗いてみたがやはりそこにはいなかった。
校舎内は全て探しつくしたので、残るは裏庭だ。
運動場などの可能性もあるが、先生に見つかりやすいので可能性は低い。
したがって、裏庭だろうと思ったのだが、真人には一つだけ心配なことがある。
早足で裏庭へ行く。
やはり数人の不良達がたまっていた。
何かを囲むように立っている。
それはあの時と同じ表情で怯えていた。
「あいつ……!!」
真人の声に不良の一人が気がつき、振り向く。
「……先輩!!」
その不良は野球部の一年生、沖澤 京。
野球部では真面目なほうなので、どの学年からも信頼されているはずだったのだが。
「何でお前がいる」
真人が聞くと、京は口を紡いで地面を見つめる。
その他の不良達は不思議そうに二人を交互に見る。
「教室にもどれ。
話しは部活が終わってからだ。
勿論お前は部活中、罰としてグラウンドを走っておく事」
真人が言うと、京は頭を下げてその場を立去ろうとするが、それを仲間の一人が止める。
「で、でもお前……。
茂先輩の言われた通りにしなかったら……」
「いや、俺が謝るから。
先輩、迷惑かけてすみませんでした……」
京はもう一度頭を下げて、仲間達に行こうと声をかける。
京の言葉を聞いて、仲間達はしぶしぶ教室へ帰って行った。
全員が立去って、二人だけが残された。
緊張が解け、女は真人の目も気にせずに泣きじゃくっている。
少し抵抗はあったが、真人は女をそっと優しく包み込んだ。
安心したのか、だんだんと落ち着いていき、真人に大丈夫ですと笑いかけた。
二人は、校舎の壁によりかかって並んで座った。
「すみません。
ありがとうございました」
「別に」
「……」
「……」
たった二回の会話で二人の会話は途切れた。
いつも喋っている様に見えるのは尋がいるからなだけであって、元々会話は得意なほうではないのだ。
「私といてもつまらないですよね……」
「別に」
「すみません……」
「別に」
「怒って……ますか?」
「別に」
別にとしか言わない真人に対し、だんだん女は不安そうな顔をする。
そして結局もう一度謝って、下を向いた。
「お前は楽」
突然の言葉に女はおどろいて顔をあげた。
「本当ですか……?」
「ああ。
空気と居るみたいだ」
「それって褒めてるんです……よね」
「ああ」
真人は自分が相手をけなしていることに気がついていない。
一応これでも真人なりのフォローなのだ。
「でも矢ケ部君は倉永君と斎藤君と仲がいいから、賑やかな方がお好きなのでは?」
「あいつらが勝手に騒いでいるだけだ」
「でも楽しそうで羨ましいです」
「そうか?
お前は楽しくないのか?」
女は真人が今日の事を聞いているのだと察した。
「……分かりません。
皆がどうしてあんな事をするのかも。
でも、いつかは友達になれたらなーって」
女はにこりと微笑んだ。
それを見て真人はなんとなくあの二人を思い出した。
「尋と馨に似ている気がする」
真人の言葉に女は首をかしげる。
「俺は教室にもどる。
お前はどうするんだ?」
「わ、私はもう少ししたら戻ります」
「そうか」
そういえば何をしに来たんだろうと思いながらも、真人は教室へともどっていった。
物陰からこの一部始終を見ていた怪しい人陰。
「黒崎、私は見て見ぬふりをするべきかしら?」
「は、はい!
少々調べてみます」