自分の為ですから
下駄箱にて靴を履き替える。
真人は伸長が2m近くあるのに、自分の下駄箱は一番下。
これは毎朝の苦痛である。
どこからか盛り上がっている声が聞こえた。
盛り上がっているのは3年2組の教室だった。
真人は自分の教室へ行くついでに、2組の教室を覗いて見ることにした。
2組の前に着く。
盛り上がっていたのは女子達だった。
「何だ、女子か」
正直、真人は女子は苦手だ。
キャーキャー言っているのが可愛いとかいう男子もいるが、真人はうざいと思ってしまう。
兄弟に姉が2人、妹が1人と女子に囲まれているせいもある。
興味が失せたので、自分の教室へ向かおうとする。
すると突然、2組の教室から何かが倒れる音が聞こえた。
思わず真人は教室の扉を開く。
真人が目にしたのは信じられない光景だった。
一人の女子の机が倒れており、その机と机の側に、大量のアリが群っていた。
その席の女子らしき人物は突っ立ったまま顔を伏せている。
さすがに真人も心配をして声をかけようと教室に入ると、同時にその女子は真人の方へ向かってきた。
「大丈夫か」
女子は真人を無視して、教室を出ていった。
真人は追いかけようかと迷った。
しかし、もうその女子の姿はなかった。
一時限目のチャイムが鳴り響く。
生徒達は席について、近くの友達とのおしゃべりを楽しんでいる。
先生が入ってきてもそのおしゃべりの声は、やむことはなかった。
授業がはじまっても、真人は全然授業に集中できない。
さっきの光景が蘇ってくるからである。
真人はなんとなく見て見ぬふりをした気分。
まだそうと決まったわけではないが、多分虐めだと真人は思っている。
どうしてさっき何も言わなかったのかと後悔する。
もしかするとまだ教室にもどってないんじゃないか?
追いかけようと思うのはあの女子の為ではない。
自分の為だ。
気がつけば真人は校内を探し回っていた。