↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/2

1「神来」~教室、テロリストの襲撃、戦え、ロストセイバー・イドル!

TV画面の中のヒーローが世界を救って、俺たちに光を示してから自殺した。

俺にとってのヒーローは神話だった。つまり・・・神は死んだのだ。

目を覚ますとAM7:00

窓から日が指している。

「朝か・・・」

・

・

・

・

・

・

教室、学生がいた。

何をするでもなく窓の外を見た。

最近、小説を描くのをやめた。

失ったものに対して少しだけ退屈が大きくなった。

何か事件が起きないかな。なんて不謹慎な妄想をしてしまう。

「おはよう黒田くん」

「おはよう。佐伯(さえき)くん、眼鏡変えた?」

「うん、この秋葉原行ったときに新調したんだ。それよりこれ見てよ。ビクトリー特撮チャンネルの4月号、開店と同時に買って来たんだ」

「お!」

「ふう、」と佐伯が息を吐きながら壁に寄りかかる

「やっぱり電子書籍より紙媒体のほうが持ってる感じがするよね。コレクション性のありがたみは旧時代の希少な産物、娯楽性が高いよ」

雑誌の中を一緒に見ていると、怪人の戦闘データが詳細につづられている。


野良ロスト

ヒゲイカ怪人

Lv1

パンチ0・2t

キック0・2t

ジャンプ力6m

特殊能力:ブラッドインク「強力な墨攻撃で敵を溶かす」


ロスト、平たく言えば怪人のことだ。人間が変化する自然由来の異形の生命体として怖れられている。風のささやきを聞いた者がロストへと変身する能力を得る。という設定だ。

特撮ものにしてはなかなか凝り性な設定だと思う。そこが好きだ。

ガラガラ、扉が開く音がした

お、担任が来た。

席につこうとしたときだった。

何かがおかしい。

担任のほうを見ると、担任の声ではあるが担任ではなかった。

血にまみれたヒゲイカ怪人だった!

「は…?」

静寂、誰もが教卓を見た。

白いイカフォルム、棒立ちしている。

「・・・・」

無言、わずかにぐるる、とのどを鳴らす音が響く

「い・・・いや!これっ・・・!」

指さした生徒が吹き飛び、壁に叩きつけられた。

ゴハッ!口から少な目に血を噴き出す

「きゃあああああああ!」

「逃げろ!逃げろぉぉぉ!」

「わあぁぁぁぁぁぁぁ!」

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」

みんな阿鼻叫喚で逃げ出す。

椅子が引きずる音、足がもつれる上履きの響き、恐れ、混沌

「ゲソオオオオオ!」

ヒゲイカ怪人から伸びた触手が右薙ぎ払い

生徒たちを叩きのめす

「わ!」

「ぎゃあああ!」

左薙ぎ払い

「ぎいいいいいいいいいいいい!」

「ぎゅん!」

金切り声が響き渡る。

異常な音、日常の崩壊。血は出ない。

俺は退屈していた。日常が壊れることをどこかで望んでいた。きっとこのクラスの誰もが似たようなことを思ったことがあるはずだ。

でもそれは、同級生たちがこんなふうに襲われるような、こんなことじゃない!

「ゲエエエエゾオオオオ!!」

ヒゲイカ怪人がうなり声をあげ

「きゃあああああああああああああ!」

女子が襲われそうになり、頭を手でおおい、うずくまる。

「っ!」

俺は瞬時に動いた。

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

床を踏みしめ、突っ込んでいく

触手が頭目掛けて振るわれる

すかさず身をかがみ、すぐ頭上を触手が通過、

ガシャーン!パリーン!

窓ガラスが吹き飛んだ。

「うあ!」

ドゴ!

わきばらに重いパンチが突き刺さる

ドゴ!ドゴ!ドゴ!

視界の端、佐伯(さえき)くんが震えているのが見えた。

「ゲソオ!」

ヒゲイカ怪人のパンチで吹っ飛ばされる

痛い!痛みに耐える。身体が転がり壁に激突、ゲホ!ゲホ!とせき込んだ。

「ゲソオオオオオ!」

腕をつかみあげられ、持ち上げられる

万力の握力

「ゲソオオオ・・・!」

怪人が凶暴性を発揮し

強力なパンチに

「ゲソオオオオオ!!!」

殴り飛ばされる。

ドゴォ!

「うああああああああああああああああああ!」

木製の分厚い壁を貫通し、体が浮遊感に呑まれる。落ちる!

誰かが俺の手をつかんだ!

「つかんだ!放さないで!」

佐伯くんだった。

窓から身を乗り出し、今にも一緒に落ちてしまいそうだ。

下が見えて、地面が、コンクリートで

このままでは二人とも落ちる!

他の生徒たちは逃げるので必死で教室に残ってない。誰もこっちを見てない。

「佐伯くん!!もういい!逃げるんだ!」

「くっ・・・!なにぃいってんだあ!」

「佐伯くん・・・ありがとう」

「黒田くん!や、やめろ!」

俺は握りしめられた自ら指を左手で引きはがす、そのまま校庭へと落ちて行った。

「黒田くーーん!!」

全部がスローモーションに見えるのは脳内物質の影響か、現世と別れるためのつかの間の時間を神がほどこしてくれているか。

なぜそんなことをしたのか自分でもわからなかった。

自己犠牲か、そんな高尚なことを考えたつもりはない。ただこのままじゃ彼も落ちて死んじゃうと思った。

友達を助けたかった。

ドシャ!

鈍い音が響いた。

がらんとした空間と奇妙な沈黙だけがその場に残る。

ヒゲイカ怪人がこちらを振り返る

「ゲソオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

両手を広げ、威嚇の声を上げていた。

・

・

・

・

・

・

俺は、暗黒の中にいた。

目を閉じ、体を横たえ、動くことはできない。

何も感じない。寒さだけがある。

「マサト、マサト・・・」

「なんだ。声が・・・。」

それは目の前にいた。巨人、赤い両目、首にマフラーを巻いた。異形の昆虫が人語を解し語り掛けて来る。

「お前は・・・」

「私はザ・クリエイター」

マサトは体の中にわずかな熱の広がりと不快感を感じた。

「マサト、マサト・・・他者を助け、友を尊ぶ慈悲深い若人(わこうど)に力を与えることにしました。守り育むのです。苛烈なる戦士、ロストセイバーとして、神来するのです。」

神が来る。

・・・・・・・・・・・「神来!」・・・・。

・

・

・

・

・

・

ヒゲイカ怪人が威嚇の声をあげた

「ゲソオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「きゃああああああああああああああああああああ!」

そのときだった!

ドカーン!

爆発音、ベランダが吹き飛び、破砕した。

静寂と空間の虚無が訪れ、粉塵の中に日の光を浴びた聖なる戦士が立つ。

身体から赤い放電が巻き起こる。

その姿はロストセイバー・イドル、苛烈なる戦士。

燃える太陽のような火色の体躯、きめ細やかなデザイン性の細マッチョボディをしていた。

「はあ!」

イドルが跳躍、ヒゲイカ怪人に強烈なパンチを打撃

「はあ!はあ!はあ!」

鋭い熊のような一撃がヒゲイカ怪人を切り捨てていく。

・

・

・

・

・

・

「ゲル~!」

ヒゲイカ怪人が殴り飛ばされ花壇へと転がる。

そのあとをロストセイバー・イドルがゆうゆうと歩いて追い詰める。

佐伯くんも他のクラスメイト達もイドルの後を追いその雄姿を目に焼き付けた

佐伯くんが特撮雑誌を握りしめ、手が震えているのが見える。彼が興奮気味にうわずった声で言った

「す、すごい・・・伝説の戦士、苛烈なる戦士ロストセイバー・イドル。雑誌は本当だったのか・・・」

イドルの華麗な体捌(たいさば)きがさく裂、足をハの字に開いた華麗な上段蹴りが、ヒゲイカ怪人のあごを吹き飛ばす、態勢を崩したヒゲイカ怪人がふらふらと立ち上がろうとしている。

決めるなら今だ!

どこからともなく謎の音楽が聞こえて来る気がする。まるで戦士の讃美歌。処刑の音だ。

イドルの右腕から突起パーツが飛び出す

イドルが両足を大きく開き、大地を踏みしめ、体幹(たいかん)をひねることで、力の流れを凝縮(ぎょうしゅく)させる。

小指からゆったりと拳を握りしめると、四肢(しし)の先端部(せんたんぶ)がオレンジ色に発光(はっこう)し、四肢(しし)の端(はし)から赤い電流がほとばしり、右拳に収束(しゅうそく)、放電が宿(やど)る。両目がオレンジ色に発光し、エネルギーの充填(じゅうてん)を完了させる。

イドルが踏み込んで跳躍(ちょうやく)、うなった。

「はああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

激情の雷パンチがヒゲイカ怪人を切り裂く。

「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

ドカーン!

赤黒い大爆発と赤い放電現象が巻き起こる。

燃え盛る浄化の炎がイドルを照らし出す。

それは伝説だった。

まぎれもない…伝説だったのだ。

・

・

・

・

・

・

学校の校庭にパトカー数台のサイレンと赤いランプが回る。

駆け付けた父母と生徒たちが生還を喜び合う。

友達を失った佐伯はどこか寂しげだ。

その背に声をかける

「佐伯くん」

佐伯が振り返ると

「黒田くん!・・・よかった。」

佐伯くんはおえつとともに涙を流し。

「よかった・・・よかったよお・・・」

不意に抱き着いた。

感情のコントロールができていないのだ。無理もない。

彼は自分の存命に安堵し、心の底から喜んでいた。

クラスに自分の死を悲しんでくれる人がいるのがうれしかった。胸の奥が熱くなる感じがした。

この日、俺たちは親友になれたんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。